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── 1章 アルト編 ──
035.ホーリーバリアの間違った使い方
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休憩が終わり、アルトたちはダンジョンの6階層を進んでいた。
6階層からのダンジョンの風景は5階層までの洞窟とは異なっていた。空が青く澄み渡り太陽が照りつけ、時折白い雲が流れている。道程の脇には岩肌の渓谷と山岳が広がり、ときおり枯れて折れ曲がった木々が行手を阻むように立ち塞がる。
「止まる」<魔物がくるよ。止まって>
ノーアがアルトのゆく手を片手で拒む。〈気配察知〉で魔物の気配を察知したようだ。
「2体。上空」<魔物は2体だね。上空を飛んでる>
「上空ですか。少し厄介ですね」
アルトが手を頭にかざして上空を見上げた。確かに黒い影が2体、こちらに向かってくるのが見える。
────────────────────
種族:スカイライトワイバーン
大きな翼としなやかな体つきを持つ亜竜型魔物。Cランク。空を自由に舞い、高速で機敏に動く。巨大な口からは風属性を帯びたブレスを放ち、その強さはCランクでも上位に位置する。巨大な翼が弱点。
────────────────────
『スカイライトワイバーンだって。風のブレスに注意だね。弱点は翼』
『わかりました。でも攻撃が届くかが問題ですね』
『だね』
「ノーアさんはあれに攻撃届きますか?」
「届くけど多分効かない」<魔法なら届くけどダメージが入らないと思う>
「ぼくもホーリーレイなら届きそうですけど……一応試してみますか」
「りょ」<了解>
アルトとノーアが魔力を貯める。その間2秒ほど。ノーアは元々精神集中する時間が短かったけど、アルトも前よりまた早くなってるね。
「ウィンドカッター!」
「ホーリーレイ!」
風の刃と一条の光がワイバーンの翼に向けて向かっていく。しかし2体は素早く旋回してそのどちらもをかわしていた。やっぱり速い。多分遠距離からでは当たらないかな?
お返しにとばかりにワイバーンも風のブレスを放つ。螺旋状に放たれた高速の風の渦がアルトに迫るが、アルトはホーリーバリアを展開してそれを防ぐ。
ワイバーンは攻撃を躱せる絶妙な高度を保ってさらにブレスを放ってきた。それをノーアはギリギリのところで飛び退いて躱す。
「やっぱり飛ばれると厄介です」
「跳ぶ」<ワイバーンのとこまで跳んでいこう>
「跳んでもあそこまでは届きませんよ?」
「バリア」<あのバリアを使えばいける>
「なるほど」
「まずは〈付与〉」<まずは剣に〈付与〉して>
「了解です」
アルトはノーアの剣にホーリーレイを付与した。付与されたことを見計らってノーアがワイバーンたちに向かって駆け出してジャンプする。
ノーアがワイバーンに迫っていく。さすがの脚力だ。建物3階分くらいは飛んでいるのではないだろうか? しかしその速度は徐々に失速して逆に落ちていき……。
「ホーリーバリア!」
光の足場を踏み台にしてさらに上空に飛び上がった。ホーリーバリア踏み台作戦だ。そのうえノーアは足元に魔法を仕込んで加速力を爆発的に上げている。
余裕を見せていたワイバーンたちも虚をつかれて慌てて上空へ飛びあがろうとした。
「ホーリーバリア!」
さらにできた光の台を踏んでノーアがワイバーンに肉薄する。ノーアは2体の翼に光の剣を一振りずつお見舞いした。片翼を奪われた2体は浮力を失い大きな音を立てて地面に墜落した。
「とどめ!」<これでとどめ!>
降りてきたノーアが二体の胸部に剣を突き立てワイバーンを絶命させる。ワイバーンは黒い霧となって魔石とドロップアイテムの爪を残して消えていった。
6階層からのダンジョンの風景は5階層までの洞窟とは異なっていた。空が青く澄み渡り太陽が照りつけ、時折白い雲が流れている。道程の脇には岩肌の渓谷と山岳が広がり、ときおり枯れて折れ曲がった木々が行手を阻むように立ち塞がる。
「止まる」<魔物がくるよ。止まって>
ノーアがアルトのゆく手を片手で拒む。〈気配察知〉で魔物の気配を察知したようだ。
「2体。上空」<魔物は2体だね。上空を飛んでる>
「上空ですか。少し厄介ですね」
アルトが手を頭にかざして上空を見上げた。確かに黒い影が2体、こちらに向かってくるのが見える。
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『スカイライトワイバーンだって。風のブレスに注意だね。弱点は翼』
『わかりました。でも攻撃が届くかが問題ですね』
『だね』
「ノーアさんはあれに攻撃届きますか?」
「届くけど多分効かない」<魔法なら届くけどダメージが入らないと思う>
「ぼくもホーリーレイなら届きそうですけど……一応試してみますか」
「りょ」<了解>
アルトとノーアが魔力を貯める。その間2秒ほど。ノーアは元々精神集中する時間が短かったけど、アルトも前よりまた早くなってるね。
「ウィンドカッター!」
「ホーリーレイ!」
風の刃と一条の光がワイバーンの翼に向けて向かっていく。しかし2体は素早く旋回してそのどちらもをかわしていた。やっぱり速い。多分遠距離からでは当たらないかな?
お返しにとばかりにワイバーンも風のブレスを放つ。螺旋状に放たれた高速の風の渦がアルトに迫るが、アルトはホーリーバリアを展開してそれを防ぐ。
ワイバーンは攻撃を躱せる絶妙な高度を保ってさらにブレスを放ってきた。それをノーアはギリギリのところで飛び退いて躱す。
「やっぱり飛ばれると厄介です」
「跳ぶ」<ワイバーンのとこまで跳んでいこう>
「跳んでもあそこまでは届きませんよ?」
「バリア」<あのバリアを使えばいける>
「なるほど」
「まずは〈付与〉」<まずは剣に〈付与〉して>
「了解です」
アルトはノーアの剣にホーリーレイを付与した。付与されたことを見計らってノーアがワイバーンたちに向かって駆け出してジャンプする。
ノーアがワイバーンに迫っていく。さすがの脚力だ。建物3階分くらいは飛んでいるのではないだろうか? しかしその速度は徐々に失速して逆に落ちていき……。
「ホーリーバリア!」
光の足場を踏み台にしてさらに上空に飛び上がった。ホーリーバリア踏み台作戦だ。そのうえノーアは足元に魔法を仕込んで加速力を爆発的に上げている。
余裕を見せていたワイバーンたちも虚をつかれて慌てて上空へ飛びあがろうとした。
「ホーリーバリア!」
さらにできた光の台を踏んでノーアがワイバーンに肉薄する。ノーアは2体の翼に光の剣を一振りずつお見舞いした。片翼を奪われた2体は浮力を失い大きな音を立てて地面に墜落した。
「とどめ!」<これでとどめ!>
降りてきたノーアが二体の胸部に剣を突き立てワイバーンを絶命させる。ワイバーンは黒い霧となって魔石とドロップアイテムの爪を残して消えていった。
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