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── 1章 アルト編 ──
034.〈天眼〉さんの抗議?
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アルトが聖女と間違えられた。
アルトを聖女と崇め奉る目の前のリーダーみたいな男はグレゴリオといい、やはりパーティーのリーダーを務めているらしい。パーティー名は〈天空の光輪〉でAランク。かなり高位の冒険者たちだったみたいだね。
ではどうしてそのパーティーが呪いを受け大怪我をするまでに至ってしまったのか。やっぱりアーサーの言っていたイレギュラーが関係しているのかな?
「イレギュラーではあるんですが、普通のイレギュラーではないかもしれません」
グレゴリオは今までとはうって変わった丁寧な言葉で肯定とも否定とも取れる言葉を発した。
詳しく話を聞いてみると、6階層で出るはずのない人型の魔物にであったのだという。顔にドラゴンを模した仮面を被った少女の姿をした魔物だ。
それだけならイレギュラーが出たのだろうと思うだろう。実際グレゴリオたちもそう思った。でもその強さが異常だった。油断していたのもあったが怪我をした女性、レイラは何もできずに手刀によって右足と腹の一部を失った。
その強さはAランク上位、もしかするとSランクにも届くのではないかということだ。6階層に出る魔物はCランクなのでへたをすると3段階も強い魔物が出現したことになる。イレギュラーにしてはあまりに魔物の強さが段違いに上がり過ぎている。それが普通のイレギュラーじゃないかもしれないと言った理由だそうだ。
ちなみにレイラが戦闘不能になってからは必死に逃げたが魔物は追いかけてはこなかったらしい。それだけは不幸中の幸いだった。
レイラにかかっていた呪い。そこには〈冥府を纏うドラゴンの眷属〉によってかけられた呪い、と書いてあった。〈天空の光輪〉を襲ったのはこの〈冥府を纏うドラゴンの眷属〉に違いない。見てみないと実際のところはわからないけどSランクの魔物だと仮定するとアルトたちでも戦うのは厳しいかもしれない。
それでもアルトは先に進むらしい。むしろ前より意欲が上がっている気がする。
案の定アルトたちが先へ進むというとグレゴリオたちは猛烈に反対した。ついでにわたしも反対した。しかしアルトの意志は揺るがないようだ。
「どうしても行かれるのですか?」
「はい。心配してくださっているのにすみません」
結局、アルトはグレゴリオたちの説得に応じなかった。
「レイラを送ったらわたしたちも後を追います! 無理はしないでください」
そう言い残してグレゴリオたちは帰っていった。
『そういえばなんでホーリーヒールが使えたんだろう?』
改めて考える。今までずっと練習してできなかった魔法がなぜ急に使えるようになったのかな? 本物の怪我人が目の前にいるという現実感が力となってーとかそういう都合のいい感じのアレなのかな?
『咄嗟にセイさんのことを思い浮かべたら祈りの言葉が頭に浮かんでそれで使えました』
『でもホーリーヒールは「神への祈りをイメージする」ことで発動するんだよね?』
『セイさんが聖霊で神様と言うことですね』
……アルトの言うことは一旦無視しよう。
さてどういうことかな? 〈天眼〉さん。
────────────────────
魔法名:ホーリーヒール
聖なるエネルギーで人族の怪我や病気などを治す。神への祈りをイメージすることで魔法を習得することが可能。祈りの対象は信仰する神である必要がある。信仰する神がいない場合、対象が神格化した存在をイメージすることでも使えることがある。
────────────────────
なんか後半の情報が増えてるね。信仰する神がいない場合、対象が神格化した存在をイメージすることでも使えることがある、か。情報を後出ししないで欲しいんだけど。たまに思うけど〈天眼〉さんはポンコツになる時があるよね……。
────────────────────
魔法名:ホーリーヒール
聖なるエネルギーで人族の怪我や病気などを治す。どんなに深い傷や重症でも治すことができ、不治の難病も癒すことができる。精神疾患にも効果があり、傷付いたも者の心を安らかにする力を持つ。また呪いを解く効果もありどんな高度な呪いでも解くことができる。また、体をきれいにする効果もあり服や体を浄化し汚れが取り除かれる。
ホーリーヒールが発動するとき神聖なる白い光が周囲を満たし、患者の傷や病気を包み込むように発動される。その光は温かみと清浄さを伴っており、その光に触れると魔法を受けた者はもちろん、魔法の発動者の痛みや不快感を癒す。
ホーリーヒールによって治せる怪我や病気の範囲は多岐に渡り、脳死からの記憶再生のようなものから、逆に微細な痒みや不快感くらいの小さい違和感まで全てを治し、心身を完全に健康にすることができる。
神への祈りをイメージすることで魔法を習得することが可能だが祈りの対象は信仰する神である必要がある。信仰する神がいない場合、対象が神格化した存在をイメージすることでも使えることがある。
またホーリーヒールは死者を払う効果も高く、アンデットへの特効はホーリーライトを上回る。ホーリーヒールを使われたアンデットはその魂を浄化され調和神の御許へいくとされる。
聖魔法に共通する項目として聖魔法は純人族のみ害をなさず無効化され、またはプラスの付加的効果を発揮する。ホーリーヒールの場合純人族に癒しの効果を与えるが、純人族以外の種族、魔人、獣人、亜人などには癒しの効果を発揮しない。
ホーリーヒールは神聖なる調和神のエネルギーを手にした聖女や勇者の善意を搾取して行使され、その実態は調和神に選別された純人の──
────────────────────
なんか長い文章出てきた!! 全部読む気が起きない!!
……これは〈天眼〉さんの遠回しの抗議ですか? 情報を絞らないとこういうことになるよっていう?
情報はコンパクトにお願いします! いつも通りで大丈夫です! 色々文句を言ってすみませんでした!
アルトを聖女と崇め奉る目の前のリーダーみたいな男はグレゴリオといい、やはりパーティーのリーダーを務めているらしい。パーティー名は〈天空の光輪〉でAランク。かなり高位の冒険者たちだったみたいだね。
ではどうしてそのパーティーが呪いを受け大怪我をするまでに至ってしまったのか。やっぱりアーサーの言っていたイレギュラーが関係しているのかな?
「イレギュラーではあるんですが、普通のイレギュラーではないかもしれません」
グレゴリオは今までとはうって変わった丁寧な言葉で肯定とも否定とも取れる言葉を発した。
詳しく話を聞いてみると、6階層で出るはずのない人型の魔物にであったのだという。顔にドラゴンを模した仮面を被った少女の姿をした魔物だ。
それだけならイレギュラーが出たのだろうと思うだろう。実際グレゴリオたちもそう思った。でもその強さが異常だった。油断していたのもあったが怪我をした女性、レイラは何もできずに手刀によって右足と腹の一部を失った。
その強さはAランク上位、もしかするとSランクにも届くのではないかということだ。6階層に出る魔物はCランクなのでへたをすると3段階も強い魔物が出現したことになる。イレギュラーにしてはあまりに魔物の強さが段違いに上がり過ぎている。それが普通のイレギュラーじゃないかもしれないと言った理由だそうだ。
ちなみにレイラが戦闘不能になってからは必死に逃げたが魔物は追いかけてはこなかったらしい。それだけは不幸中の幸いだった。
レイラにかかっていた呪い。そこには〈冥府を纏うドラゴンの眷属〉によってかけられた呪い、と書いてあった。〈天空の光輪〉を襲ったのはこの〈冥府を纏うドラゴンの眷属〉に違いない。見てみないと実際のところはわからないけどSランクの魔物だと仮定するとアルトたちでも戦うのは厳しいかもしれない。
それでもアルトは先に進むらしい。むしろ前より意欲が上がっている気がする。
案の定アルトたちが先へ進むというとグレゴリオたちは猛烈に反対した。ついでにわたしも反対した。しかしアルトの意志は揺るがないようだ。
「どうしても行かれるのですか?」
「はい。心配してくださっているのにすみません」
結局、アルトはグレゴリオたちの説得に応じなかった。
「レイラを送ったらわたしたちも後を追います! 無理はしないでください」
そう言い残してグレゴリオたちは帰っていった。
『そういえばなんでホーリーヒールが使えたんだろう?』
改めて考える。今までずっと練習してできなかった魔法がなぜ急に使えるようになったのかな? 本物の怪我人が目の前にいるという現実感が力となってーとかそういう都合のいい感じのアレなのかな?
『咄嗟にセイさんのことを思い浮かべたら祈りの言葉が頭に浮かんでそれで使えました』
『でもホーリーヒールは「神への祈りをイメージする」ことで発動するんだよね?』
『セイさんが聖霊で神様と言うことですね』
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魔法名:ホーリーヒール
聖なるエネルギーで人族の怪我や病気などを治す。神への祈りをイメージすることで魔法を習得することが可能。祈りの対象は信仰する神である必要がある。信仰する神がいない場合、対象が神格化した存在をイメージすることでも使えることがある。
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なんか後半の情報が増えてるね。信仰する神がいない場合、対象が神格化した存在をイメージすることでも使えることがある、か。情報を後出ししないで欲しいんだけど。たまに思うけど〈天眼〉さんはポンコツになる時があるよね……。
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魔法名:ホーリーヒール
聖なるエネルギーで人族の怪我や病気などを治す。どんなに深い傷や重症でも治すことができ、不治の難病も癒すことができる。精神疾患にも効果があり、傷付いたも者の心を安らかにする力を持つ。また呪いを解く効果もありどんな高度な呪いでも解くことができる。また、体をきれいにする効果もあり服や体を浄化し汚れが取り除かれる。
ホーリーヒールが発動するとき神聖なる白い光が周囲を満たし、患者の傷や病気を包み込むように発動される。その光は温かみと清浄さを伴っており、その光に触れると魔法を受けた者はもちろん、魔法の発動者の痛みや不快感を癒す。
ホーリーヒールによって治せる怪我や病気の範囲は多岐に渡り、脳死からの記憶再生のようなものから、逆に微細な痒みや不快感くらいの小さい違和感まで全てを治し、心身を完全に健康にすることができる。
神への祈りをイメージすることで魔法を習得することが可能だが祈りの対象は信仰する神である必要がある。信仰する神がいない場合、対象が神格化した存在をイメージすることでも使えることがある。
またホーリーヒールは死者を払う効果も高く、アンデットへの特効はホーリーライトを上回る。ホーリーヒールを使われたアンデットはその魂を浄化され調和神の御許へいくとされる。
聖魔法に共通する項目として聖魔法は純人族のみ害をなさず無効化され、またはプラスの付加的効果を発揮する。ホーリーヒールの場合純人族に癒しの効果を与えるが、純人族以外の種族、魔人、獣人、亜人などには癒しの効果を発揮しない。
ホーリーヒールは神聖なる調和神のエネルギーを手にした聖女や勇者の善意を搾取して行使され、その実態は調和神に選別された純人の──
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