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── 1章 アルト編 ──
030.休憩下手
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アルトたちは2階層へ向かう前にセーフティーエリアで休憩をすることにした。
……したんだけど、その休憩中に予定外の困難が発覚した。
「ノーアさん? なぜ食糧が生肉ばかりなんですか?」
「美味しい」<だって焼きたての方が美味しいんだもん>
「保存性最悪じゃないですか!!」
「なんとかなる」〈なんとかなるって! 大丈夫!大丈夫!〉
「それに水も少ないんですが!?」
そう。食糧と水が足りない問題である。ノーアさんがやらかしました。
食糧は生肉ばかりで常温ではもう腐り始めていてもおかしくない時間が経っている。そして無駄に多い。逆に水の量は頑張って一週間持つかどうかの量しかない。
もしかすると〈竜の巣〉に住む魔物以上の困難かもしれない。冗談抜きで。
どことなくノーア語を翻訳する〈天啓〉さんにも悪意を感じるのは気のせいではないだろう。だもんじゃないよ。だもんじゃ。
終始アルトは怒り気味だ。だがそれも然もありなん。
「そもそも、火が無いから焼けないんですけど!?」
「アリア……あ」<アリアがいるから……あ>
「……火魔法はありませんよ?」
「……」
ノーアは悲嘆の顔をしていた。アリアの火魔法をあてにしてたのね。
……もしかするとノーアって実はおっちょこちょい? いやどちらかというと生活能力がない感じなのかな? 今までもアリアを頼ってたのかもしれない。アリアに奢ってもらってることもあったし。ちょっと前のアルトのコスチューム事件のこともあるし。
「まあぼくも確認しなかったのは悪かったですけど……」
「ごめん」<ごめんなさい>
アルトは半分呆れ、半分後悔の顔だった。
アルトのせいじゃないと思うよ。これは流石に予測できないって。
「こうなったら」<こうなったら>
「こうなったら?」
ノーアはおもむろにドラゴンパピーの卵を取り出す。
「卵飲む」<ドラゴンパピーの卵を飲む>
「えっ?」
『えっ?』
それ飲むの? 大丈夫なやつ?
────────────────────
名前:ドラゴンパピーの卵
ドラゴンパピーからドロップする卵。食用化。ただし生食は不可。細菌により食中毒になる。不味い。
────────────────────
〈天眼〉さん! ナイスアシスト! 説明文を変えてくれてるところもポイント高い!
『アルト! 止めて!』
「ダメです!」
ノーアは卵の尖った方に円形の穴を開け、今まさに卵を飲みこもうとしていた。
それを間一髪のところでアルトが取り上げる。
「なぜ?」<なんで止めるの?>
アルトは〈天眼〉のウィンドウを見ながらノーアに説明する。ウィンドウはわたしが見せた。
「細菌で食中毒になりますよ」
「大丈夫」<大丈夫。ぼくは細菌に負けないからね>
「それに不味いみたいです」
「それは嫌……」<それは嫌だね……>
食中毒よりも味の方が気になるんだ……?
「それにしてもどうしましょう。このお肉たち……」
「生食?」<生で食べる?>
「生で食べるところから離れてください!」
わたしは哀れな肉塊たちを〈天眼〉で確認した。
────────────────────
名称:ミートドラコリスの生肉
状態:熟成(腐りかけ)
ヴァーディアンのダンジョン3階層に住むミートドラコリスからドロップした生肉。焼くと美味。生食は食中毒になるため非推奨。
────────────────────
あーこのダンジョンで取れる肉なんだね。それでやっぱり生食はダメみたい。
でも、これで食料がダンジョンで手に入ることはわかったから後は焼く方法を考えるだけだね。
焼く。焼くかー。うーん何か忘れている気がする。
「せめて火があれば今食べる分は問題ないんですけど」
火かー。火ね。……あっそれならなんとかなるじゃん!
わたしは早速〈天与〉を発動。
<供与する技能、魔法または聖遺物を選択してください>
火付石を選択。
<天声ポイント1ptの消費を確認しました。〈天与〉を開始します……完了しました>
アルトの手元に火付石が出現した。
あ、〈天与〉使うのアルトに確認するの忘れてた……。まあいいか。
『……なんですか? これ?』
『それを持ったまま、火よ出ろって念じてみて?』
『はい?』
アルトは意味わからないながらも言う通りにしてくれる。そんな素直なアルトがいつか騙されないかとわたしは心配になるよ。
それはともかく念じているとアルトの前に炎が出現した。火の光がアルトを神々しく照らしている。いやむしろアルトが神だ!
「かみ」<アルトは神だった!>
「神じゃありません!」
ノーアもそう思うよね?
ともあれ、食糧問題はひとまず解決した。
あとは水をどうするかなんだけど、どうにかならないかな?
……したんだけど、その休憩中に予定外の困難が発覚した。
「ノーアさん? なぜ食糧が生肉ばかりなんですか?」
「美味しい」<だって焼きたての方が美味しいんだもん>
「保存性最悪じゃないですか!!」
「なんとかなる」〈なんとかなるって! 大丈夫!大丈夫!〉
「それに水も少ないんですが!?」
そう。食糧と水が足りない問題である。ノーアさんがやらかしました。
食糧は生肉ばかりで常温ではもう腐り始めていてもおかしくない時間が経っている。そして無駄に多い。逆に水の量は頑張って一週間持つかどうかの量しかない。
もしかすると〈竜の巣〉に住む魔物以上の困難かもしれない。冗談抜きで。
どことなくノーア語を翻訳する〈天啓〉さんにも悪意を感じるのは気のせいではないだろう。だもんじゃないよ。だもんじゃ。
終始アルトは怒り気味だ。だがそれも然もありなん。
「そもそも、火が無いから焼けないんですけど!?」
「アリア……あ」<アリアがいるから……あ>
「……火魔法はありませんよ?」
「……」
ノーアは悲嘆の顔をしていた。アリアの火魔法をあてにしてたのね。
……もしかするとノーアって実はおっちょこちょい? いやどちらかというと生活能力がない感じなのかな? 今までもアリアを頼ってたのかもしれない。アリアに奢ってもらってることもあったし。ちょっと前のアルトのコスチューム事件のこともあるし。
「まあぼくも確認しなかったのは悪かったですけど……」
「ごめん」<ごめんなさい>
アルトは半分呆れ、半分後悔の顔だった。
アルトのせいじゃないと思うよ。これは流石に予測できないって。
「こうなったら」<こうなったら>
「こうなったら?」
ノーアはおもむろにドラゴンパピーの卵を取り出す。
「卵飲む」<ドラゴンパピーの卵を飲む>
「えっ?」
『えっ?』
それ飲むの? 大丈夫なやつ?
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名前:ドラゴンパピーの卵
ドラゴンパピーからドロップする卵。食用化。ただし生食は不可。細菌により食中毒になる。不味い。
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〈天眼〉さん! ナイスアシスト! 説明文を変えてくれてるところもポイント高い!
『アルト! 止めて!』
「ダメです!」
ノーアは卵の尖った方に円形の穴を開け、今まさに卵を飲みこもうとしていた。
それを間一髪のところでアルトが取り上げる。
「なぜ?」<なんで止めるの?>
アルトは〈天眼〉のウィンドウを見ながらノーアに説明する。ウィンドウはわたしが見せた。
「細菌で食中毒になりますよ」
「大丈夫」<大丈夫。ぼくは細菌に負けないからね>
「それに不味いみたいです」
「それは嫌……」<それは嫌だね……>
食中毒よりも味の方が気になるんだ……?
「それにしてもどうしましょう。このお肉たち……」
「生食?」<生で食べる?>
「生で食べるところから離れてください!」
わたしは哀れな肉塊たちを〈天眼〉で確認した。
────────────────────
名称:ミートドラコリスの生肉
状態:熟成(腐りかけ)
ヴァーディアンのダンジョン3階層に住むミートドラコリスからドロップした生肉。焼くと美味。生食は食中毒になるため非推奨。
────────────────────
あーこのダンジョンで取れる肉なんだね。それでやっぱり生食はダメみたい。
でも、これで食料がダンジョンで手に入ることはわかったから後は焼く方法を考えるだけだね。
焼く。焼くかー。うーん何か忘れている気がする。
「せめて火があれば今食べる分は問題ないんですけど」
火かー。火ね。……あっそれならなんとかなるじゃん!
わたしは早速〈天与〉を発動。
<供与する技能、魔法または聖遺物を選択してください>
火付石を選択。
<天声ポイント1ptの消費を確認しました。〈天与〉を開始します……完了しました>
アルトの手元に火付石が出現した。
あ、〈天与〉使うのアルトに確認するの忘れてた……。まあいいか。
『……なんですか? これ?』
『それを持ったまま、火よ出ろって念じてみて?』
『はい?』
アルトは意味わからないながらも言う通りにしてくれる。そんな素直なアルトがいつか騙されないかとわたしは心配になるよ。
それはともかく念じているとアルトの前に炎が出現した。火の光がアルトを神々しく照らしている。いやむしろアルトが神だ!
「かみ」<アルトは神だった!>
「神じゃありません!」
ノーアもそう思うよね?
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