転生?いいえ。天声です!

Ryoha

文字の大きさ
上 下
3 / 96
── 1章 アルト編 ──

002.聖霊に間違えられた?

しおりを挟む
「もしかしてあなたは聖霊様ですか?」

 えっ。多分違うよね?

 いや、そもそも聖霊ってなんだろう?

『聖霊って何かな?』
「えーっと。聖霊は聖属性を司る神様の使い、だと言われているんですけど。すみません。ぼくもそこまで詳しくは知らなくて」

 思わぬところでアルトがぼくっ子であることが判明した。
 それにしても聖霊かー。
 うーん、多分違うと思うけど……確証はないんだよね。ここは正直に言おう。

『多分違うと思うよ』
「そう、ですか」

 え、なに? その悲しそうな目? すごい罪悪感なんですけど。

『いや、自分でもちょっとまだわかってないというかー。いや、もしかすると聖霊かもしれない可能性も微レ存というか』
「そうですか! やっぱり聖霊様なんですね!」
『いや、可能性だよ。可能性』
「はい! 可能性ですね!」

 絶対わかってないな。いやまあ、罪悪感に負けてそう誘導してしまったわたしも悪いんだけど。
 でも、わたしに対するアルトの好感度はそんなに悪くないみたい? わたしの話術が火を吹いたか! えっ、聖霊と間違われてるから? ですよね。

 まあでも、好感度が良いことは良いことだ? 
 この際アルトのことをいろいろ調べさせてもらおうかな? 多分わたしに関係あるし。……ケイも流石にヒントくらいは残してるよね?

『アルトのことを教えてもらってもいい?』
「もちろん、いいですよ。あ、でも移動しながらでもいいですか? 流石に魔物の死体の近くでぼーっと立ってるのは危険なので」
『それもそうだね。あっ、魔物の死体を放置してもいいのかな?』
「ここは結構深いところなので放置しても大丈夫だと思います」

 さっきも言ったとおりここは森の中。
 きっと、人が住んでるようなところじゃないから死体が荒らされたりしても問題ないということなんだろう。

『そっか。じゃあ行こうか』
「はい!」

 そこからは歩きながらアルトの話を聞くことにした。

 アルトはここから一番近い街エーテルウッドでパーティーを組んで冒険者として活動しているそうだ。パーティー名は〈アークライト〉。槍術士のセイソン、剣士のノーア、魔法使いのアリア、そしてアルト。4人組のパーティーらしい。

 やっぱり冒険者とかあるんだなーと思いながらアルトの話を聞いていく。

 アルトはパーティに入ってまだ1ヶ月弱しか経っていないらしい。そのちょっと前くらいに教会で〈祝福〉を受け、〈アークライト〉に拾われてパーティーに入ったそうだ。
 祝福とは〈技能スキル〉と〈魔法〉を神様から授かる儀式みたいなものみたい。12歳になると全員が祝福を受け、技能と魔法を授かるそうだ。

 あれ? そうするとアルトはまだ12歳ってこと? それにしては大人びてるなぁ。

 今日はパーティとしての活動は休みの日で、アルトは訓練のために一人で探索をしていたみたいだ。
 なお、今は帰る途中で森を抜けた街道を目指しているらしい。私に会う少し前に、ここら辺んではあまりみない大きめの魔物に遭遇して逃げてきたそうだ。

 えっ、それって大丈夫なの?と思ったけど足の早くない魔物だったのと、アルトも逃げるくらいの能力は持ってるから大丈夫だったみたい。というよりも短剣だとトドメをさせないから仕方なく逃げてきたとか。
 キラーラビットの時もそうだけどちょっとアルトって戦意高めなのかな?

 そして今は、魔物の報告とパーティーメンバーとの相談のために街へ戻っているところらしい。

「他に聞きたいことはありますか?」
『うーん。特にないかなー』

 強いていえば、大きめの魔物がどんな感じだったのかは気にはなったけど、今の自分を知ることには関係ない。それよりやってみたいことがあるんだよね。

『それより、アルトのことを調べてみてもいい?』
「調べる、ですか?」

 アルトは手を少し上げて自分の腕を右、左へと眺めはじめた。
 うん。可愛いけど違うからね。そんな身体検査みたいなことはしませんとも。

『そうじゃなくて、何だろう。説明するのが難しいんだけど、わたし、「調べたい」って思って見たものを調べることができるみたいなんだよね。それをアルトにしたいんだけど、いいかな?』

 こういうのは許可をとらなきゃね。個人情報保護だよ。えっもう見てるだろって? それは意図したものじゃないからノーカンってことにしてもろて。

「なるほど。聖霊様は〈鑑定〉が使えるんですね。すごいです」
『〈鑑定〉?』
「ぼくのステータスを見るってことですよね?」
『多分そうなのかな?』
「それが〈鑑定〉です。技能スキルの一つですね」

 へー。あれって〈鑑定〉っていうのか。普通に知られてるのね。

 ちなみに、冒険者ギルドには支部に一人くらい〈鑑定〉持ちがいるとアルトに教えてもらった。冒険者ギルドもやっぱりあるんだーって、ちょっと思ったけど、あんまりあれこれ聞きすぎると怪しまれるかもしれないから聞きすぎないことにする。もう遅い気もするけど。というかあの窓、チートスキルじゃないんかい! ケイよ。チートスキルを早くください。

 ともあれ、アルトから許可はもらったので〈鑑定〉を使ってみることにする。

────────────────────
 名前:アルト
 種族:人族
────────────────────

 うん。それは知ってる。もうちょい詳しく。

────────────────────
 名前:アルト
 種族:人族(?)
 技能:全剣技
    天の声
 魔法:冥
    聖
 恩恵:自由神の勇者の種
────────────────────

 そうそう。欲しかったのは多分そういうの。
 調べるのにちょうどいいくらいの分量だ。

 ……なんというかいろいろツッコミどころがあるね。種族に(?)がついてるし。技能スキルの〈全剣技〉てなに? 全ての剣術ができるってか? チートじゃない? あと〈恩恵〉は何だかわからないけど〈自由神の勇者の種〉って絶対やばいやつだと思う。

 まあいろいろあったけど一番気になったことが、アルトのもう一つの技能スキルだ。すごく嫌な予感がする。

 突然に思うかもしれないが、ケイにも暴露されたようにわたしの前世の名前は天野アマノセイだ。で、わたしが中学生の時に「存在感がなくて声だけみたい」、と陰で言われていた時のあだ名がある。そう。天の声だ。もちろん、、とをかけている。嫌な陰口である。そしてアルトの技能スキルのなかに〈天の声〉というスキルがある。
 もう一度言おう。嫌な予感がする。

「どうかしましたか?」
『聞きたいんだけど』
「はい」
『〈天の声〉っていう技能に聞き覚えは?』
「ないですね。初めて聞きました」
『ちなみにアルトが覚えてる技能スキルは〈全剣技〉?』
「やっぱりわかるんですね。はい。わたしの技能スキルは〈全剣技〉です」
『それだけ?』
「見てもらった通りそれだけです」

 はい。わたしのあだ名と被ってることと、アルトが「知らない、持ってない」発言でツーストライク。もう一つでアウトなんだけど、〈天の声〉って調べられないかな?

────────────────────
 技能:天の声てんのこえ(アマノセイ)
 副技:天啓
    天眼
    天授
    ??
 天声ポイント:101pt
 天命 ★★★
────────────────────

 あー調べられるのね。〈鑑定〉で調べた文字をさらに調べることができるってことかな?

 そしてかっこ書きでわたしの名前が書いてあります。スリーストライクです。どうもありがとうございました。

……転生したら天声でしたってか? 面白くないわ! わたしの黒歴史をほじくりかえしやがって!

 ケイめ。今度会ったら覚えておけよ!

しおりを挟む
ツギクルバナーカクヨムバナー
感想 1

あなたにおすすめの小説

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。 魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。 でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。 その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。 ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。 え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。 平凡で普通の生活がしたいの。 私を巻き込まないで下さい! 恋愛要素は、中盤以降から出てきます 9月28日 本編完結 10月4日 番外編完結 長い間、お付き合い頂きありがとうございました。

やさしい魔法と君のための物語。

雨色銀水
ファンタジー
これは森の魔法使いと子供の出会いから始まる、出会いと別れと再会の長い物語――。 ※第一部「君と過ごしたなもなき季節に」編あらすじ※ かつて罪を犯し、森に幽閉されていた魔法使いはある日、ひとりの子供を拾う。 ぼろぼろで小さな子供は、名前さえも持たず、ずっと長い間孤独に生きてきた。 孤独な魔法使いと幼い子供。二人は不器用ながらも少しずつ心の距離を縮めながら、絆を深めていく。 失ったものを埋めあうように、二人はいつしか家族のようなものになっていき――。 「ただ、抱きしめる。それだけのことができなかったんだ」 雪が溶けて、春が来たら。 また、出会えると信じている。 ※第二部「あなたに贈るシフソフィラ」編あらすじ※ 王国に仕える『魔法使い』は、ある日、宰相から一つの依頼を受ける。 魔法石の盗難事件――その事件の解決に向け、調査を始める魔法使いと騎士と弟子たち。 調査を続けていた魔法使いは、一つの結末にたどり着くのだが――。 「あなたが大好きですよ、誰よりもね」 結末の先に訪れる破滅と失われた絆。魔法使いはすべてを失い、物語はゼロに戻る。 ※第三部「魔法使いの掟とソフィラの願い」編あらすじ※ 魔法使いであった少年は罪を犯し、大切な人たちから離れて一つの村へとたどり着いていた。 そこで根を下ろし、時を過ごした少年は青年となり、ひとりの子供と出会う。 獣の耳としっぽを持つ、人ならざる姿の少女――幼い彼女を救うため、青年はかつての師と罪に向き合い、立ち向かっていく。 青年は自分の罪を乗り越え、先の未来をつかみ取れるのか――? 「生きる限り、忘れることなんかできない」 最後に訪れた再会は、奇跡のように涙を降らせる。 第四部「さよならを告げる風の彼方に」編 ヴィルヘルムと魔法使い、そしてかつての英雄『ギルベルト』に捧ぐ物語。 ※他サイトにも同時投稿しています。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

孤高の英雄は温もりを求め転生する

モモンガ
ファンタジー
 『温もりが欲しい』  それが死ぬ間際に自然とこぼれ落ちた願いだった…。  そんな願いが通じたのか、彼は転生する。  意識が覚醒すると体中がポカポカと毛布のような物に包まれ…時々顔をザラザラとした物に撫でられる。  周りを確認しようと酷く重い目蓋を上げると、目の前には大きな猫がいた。  俺はどうやら猫に転生したみたいだ…。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

処理中です...