一話完結ミステリー

切っても切れない縁の報復

「私が殺しました……」
　通報を受け、一軒家の前に警察車両が到着した。

　警部が家の中に入るとそこには、右手が赤くなり、倒れた男性を見ている男の人がいた。
　警部は男性に事情聴取を始めた。
「お名前をお聞かせいただけますか？」
「はい、私は高橋学といいます、私が父を殺したんです」

　すると刑事が警部に話しかけた。
「亡くなったのは、高橋拓也さん、高橋学さんの元父だと確認が取れました。死因は、頭部を殴られたことによる、出血死だそうです」
　警部は、学が履いているスリッパに黒い染みがついているのを見つけた。
「すみません、そちらのスリッパ、鑑識にまわしていただきます」
　警部が学にそう言うと、学はスリッパを脱いで、刑事に渡した。
「私が父を殺したんです……言い合いになって、押し倒したとき、父が頭打って動かなくなって……」
「高橋学さんが履いてたスリッパから高橋拓也さんの血痕と高橋学さんの血痕が検出されました」
　鑑識が警部に伝えた。

「どうしてお父さんを殺したんですか？」
　警部は学に近づいて聞いた。
「私は昔、父と暮らしていました……でも、子供のころ、父から暴行を受けて、縁を切り、別居していました……私もトラウマはあったのですが、母は特にひどくて、鬱になっていました……そして先日、母は自殺しました……そして、大事な母を死に追いやった父が許せなくなって今住んでいる場所を調べて、家に入って、なぜ昔、こんなことをしたのか問い詰めているうちに、もみ合いになり、押し倒したとき、そこの机の角で頭を打って、亡くなったということです……」
　こうして高橋学は逮捕された。

　表面上は縁を切ることができても、内面で完全に切ることは不可能なのだろう、警部はふとそう思った。