異世界探検記

みかん

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ユンセルの過去 ~記憶と決意~

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 これは幼稚園生だった頃の話だ。
 僕にはよく遊んでいたカナという女の子の友達がいた。
「ユンセル君、今日は何して遊ぶ?」
 そんな声が今でも脳内へ鮮明に聞こえてくる。
「またあいつ、こぼしてるぜ」
 昼のお弁当の時、そんな声がユンセルの耳に入ってきた。
 その声の主が向いている方向を見る。
 カナだ。
 カナに対して陰口を言っていることはすぐわかった。
 カナは魔法の実力はかなりあったが、少しドジなところがあった。
 妬みのようなもので陰口を言われていたのだろう。
(助けてあげたい)
 僕は心の中でそう思った。
 でも……動けなかった……
 動かなかった。
 自分がいじめの標的にされるのが怖かった。
 自分は、自分を守り、カナを守ることはできなかった。
 そんな時、カナが幼稚園に来なくなった。
 後日、幼稚園の先生からカナちゃんは引っ越したと皆に伝えられた。
 僕が……僕が、くだらないことばかり考え行動しなかったから、カナは…………
 おい……
 おい……
 ……セル
「ユンセル!」
 ユンセルは我に返った。
 ヒロトだ。
「ボーっとして……大丈夫か?」
 ヒロトはユンセルを心配し、話しかける。
「ユンセル君、ちょっといい?」
 カナがユンセルを呼んだ。
「あのね、私が引っ越したのはね、親の仕事の関係で引っ越したの」
 カナは一呼吸おいて話し続ける。
「幼稚園の時、ユンセル君私を心配してくれてたのわかってた……でもね、理由も言えず引っ越したから……今更だよね」
 ユンセルは心のどこかに安堵の感情が溢れたのが分かった。
 そしてユンセルは心に決めた。
 これからは絶対に、僕がカナを守る。
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