ゾンビ世界侵略

みかん

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十四話 拠点 過去

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「ここでの最初の任務にしてはよくやったな」
 隊長は五人に言った。
 五人は表情がどこか喜んでいる。
「これからもよろしく頼むぞ」
 隊長は言った。そして一呼吸置いた。
「次の任務だ」
 隊長は真面目な顔で言った。
 五人はあまりもの次の任務の早さに驚いた。
 すると隊長の表情が緩んだ。
「あいつについていくんだ」
 隊長がさした指の先には一人の隊員がいた。
 五人は隊員の後ろをついていく。
 すると一つの部屋の扉の前に着いた。
「ここは……?」
 正樹は言った。
「お前たちの部屋だ」
 隊員はそう言って扉を開けた。
 そこには五つのベッドと五人が暮らすには十分な広さの部屋が広がっていた。
「おぉ」
 五人は思わず声を上げた。
 五人の新たな拠点ができた。
 それから夕食を食べ、夜、部屋に戻り、五人だけの状態になった。
 五人はベッドの上に座り、話している。
「俺にも両親がいたんだ」
 司は言った。
「ゾンビが発生した時、ゾンビは僕たち家族のもとに襲ってきたんだ……」

 司とその父、母は三人で食事をしていた。
 その時だった。
 窓の外から物音がした。
 窓の外は司の家の庭であった。
 母は、気になり、席を立って窓のほうに立ち、窓を開けた。
 外を確認した。
 何もない。
 そう思い閉めようとした。
 その時だった。
 ゾンビが司の母に襲い掛かった。
 司の父はそれがゾンビとは確認できなかったものの、母を助けるため、母のもとに駆け寄った。
 母は、ゾンビに襲われた時頭を打ち、その場に倒れこんでいる。
 父は司に向け、何か言っている。
 警察を呼べと言っていた。
 だが、現状に混乱している司には聞こえていなかった。
 そして父はゾンビにかみつかれた。
 父は首をかみつかれ、首から血が噴き出し、倒れた。
 司はゾンビと目が合った。
「ひっ」
 俺もやられる。
 司はそう思った。
 その時だった。
 軍隊の人が司の部屋に入ってきて、司と母は助け出された。
 母は、その後病院まで連れていかれた。
 だが、その病院は、先日ゾンビに襲われ、司の母は……

 司が話した後、少し静かな間が流れる。
「俺には父と兄がいた」
 すると正樹が言った。

 正樹は父と兄の三人で暮らしていた。
 正樹の母は、正樹が幼いころ、病気で亡くなった。
 ゾンビが発生し、家までゾンビが入ってきたとき、父は仕事でいなかった。
 正樹の兄は正樹に早く逃げるよう言った。
 正樹はもつれる足を前へと進ませ、転げそうに何度もなりながら家を出た。
 兄が避難所まで来ることはなかった。
 父の安否も分かっていない。

 正樹が話し、黙った。
「俺は父と二人暮らしだった」
 春人は言った。

 春人の母も春人が幼いころ、病気で亡くなった。
 春人の父はとてもやさしい人だった。
 ゾンビが発生した時も、一緒に避難所まで逃げていた。
 その途中茫然と立っている、一人の男の子が目に入った。
 春人の父がその男の子を置いていかないことは春人にはうすうすわかっていた。
 春人の父は春人に先に避難しておくように言った。
 それから春人は無事、避難所まで着いた。
 だが、父は避難所に来ることはなかった。

「でも、別にその子供を恨んでたりはしていない」
 春人は言った。
「子供は何も悪いことはしていない。父は助からなかったのかもしれないけど、その子供が生きていてくれたらうれしい」
 春人は小さな声で言った。
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