3 / 93
第一章 出会いは突然に
2
しおりを挟む
葬儀が一段落したあと、継母に今後の相談をした。
奨学金を借りて大学に通いたいと必死に頼み込んだものの、
『お父さんの呉服店はどうするの?アンタの代で潰すの?』
と詰め寄ってきた。
継母が私の為に高額な大学費用を出してくれるはずがなかった。
父の曾祖母の時代から代々続く呉服屋。
幼い頃、父と母が働いていたこの呉服屋で私は幸せな時間を過ごした。
お客様と笑顔で言葉を交わす母と、それを温かく見つめる父。
受付カウンターの椅子に座って足をパタパタさせながらお絵描きをする私。
今も私の心の中でその当時の出来事は、色濃く記憶されている。
私は、亡き両親の為に店を守る決意を固めた。
大学進学を諦めて、授業が終わるとすぐに呉服店に行き店を手伝った。
そして、高校を卒業するとすぐにここで働き始めたのだった。
その当時は、数人のベテラン従業員がいた。右も左も分からぬ私は、彼らに頭を下げて店の経営やノウハウを一通り学んだ。
父の死後も、従業員やお得意様が支えてくれたお陰でなんとか店を維持できていた。
けれど、昨年従業員が一斉に退職した。
理由は継母からの度重なるパワハラが原因だった。
精神的に追い詰められ、やむなく決断したと涙ながらに打ち明けられたとき、申し訳なさに胸が張り裂けそうだった。
「あ、そうそう。秋穂。あなた暇ならコンビニでタバコ買ってきてちょうだいよ」
「えっと……タバコですか。買い方を教えてもらえますか?」
秋穂ちゃんが困ったように言う。
すると、継母は「信じられない!」と大げさに叫んだ。
「あなた、二十五にもなってタバコの買い方も知らないの!?今まで一体どうやって生きてきたのよ。もう若くもないくせに、そんなことすら知らなくてどうするの!」
嘲笑うような口調の継母の姿に嫌悪感が募る。
「あなたって、ほんっと何の役にも立たない使えない子ね!親の顔が見てみたいわ」
「……すみません」
秋穂ちゃんは申し訳なさそうに頭を下げる。
継母は知らないけれど、彼女は名家のお嬢様で相当な箱入り娘のようだ。
今まで家族に猛反対されて仕事をすることを認めてもらえなかったらしい。
身なりもきちんとしているし、清潔感もある。
知らないことは多いけど、教えた仕事はすぐに覚えて完璧にこなしてくれる優秀な人材だ。
継母に小言を言われて嫌になって辞められてしまうのだけは絶対に阻止せねば。
奨学金を借りて大学に通いたいと必死に頼み込んだものの、
『お父さんの呉服店はどうするの?アンタの代で潰すの?』
と詰め寄ってきた。
継母が私の為に高額な大学費用を出してくれるはずがなかった。
父の曾祖母の時代から代々続く呉服屋。
幼い頃、父と母が働いていたこの呉服屋で私は幸せな時間を過ごした。
お客様と笑顔で言葉を交わす母と、それを温かく見つめる父。
受付カウンターの椅子に座って足をパタパタさせながらお絵描きをする私。
今も私の心の中でその当時の出来事は、色濃く記憶されている。
私は、亡き両親の為に店を守る決意を固めた。
大学進学を諦めて、授業が終わるとすぐに呉服店に行き店を手伝った。
そして、高校を卒業するとすぐにここで働き始めたのだった。
その当時は、数人のベテラン従業員がいた。右も左も分からぬ私は、彼らに頭を下げて店の経営やノウハウを一通り学んだ。
父の死後も、従業員やお得意様が支えてくれたお陰でなんとか店を維持できていた。
けれど、昨年従業員が一斉に退職した。
理由は継母からの度重なるパワハラが原因だった。
精神的に追い詰められ、やむなく決断したと涙ながらに打ち明けられたとき、申し訳なさに胸が張り裂けそうだった。
「あ、そうそう。秋穂。あなた暇ならコンビニでタバコ買ってきてちょうだいよ」
「えっと……タバコですか。買い方を教えてもらえますか?」
秋穂ちゃんが困ったように言う。
すると、継母は「信じられない!」と大げさに叫んだ。
「あなた、二十五にもなってタバコの買い方も知らないの!?今まで一体どうやって生きてきたのよ。もう若くもないくせに、そんなことすら知らなくてどうするの!」
嘲笑うような口調の継母の姿に嫌悪感が募る。
「あなたって、ほんっと何の役にも立たない使えない子ね!親の顔が見てみたいわ」
「……すみません」
秋穂ちゃんは申し訳なさそうに頭を下げる。
継母は知らないけれど、彼女は名家のお嬢様で相当な箱入り娘のようだ。
今まで家族に猛反対されて仕事をすることを認めてもらえなかったらしい。
身なりもきちんとしているし、清潔感もある。
知らないことは多いけど、教えた仕事はすぐに覚えて完璧にこなしてくれる優秀な人材だ。
継母に小言を言われて嫌になって辞められてしまうのだけは絶対に阻止せねば。
37
お気に入りに追加
915
あなたにおすすめの小説
ヤクザと私と。~養子じゃなく嫁でした
瀬名。
恋愛
大学1年生の冬。母子家庭の私は、母に逃げられました。
家も取り押さえられ、帰る場所もない。
まず、借金返済をしてないから、私も逃げないとやばい。
…そんな時、借金取りにきた私を買ってくれたのは。
ヤクザの若頭でした。
*この話はフィクションです
現実ではあり得ませんが、物語の過程としてむちゃくちゃしてます
ツッコミたくてイラつく人はお帰りください
またこの話を鵜呑みにする読者がいたとしても私は一切の責任を負いませんのでご了承ください*
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
羽村美海
恋愛
古式ゆかしき華道の家元のお嬢様である美桜は、ある事情から、家をもりたてる駒となれるよう厳しく育てられてきた。
とうとうその日を迎え、見合いのため格式高い高級料亭の一室に赴いていた美桜は貞操の危機に見舞われる。
そこに現れた男により救われた美桜だったが、それがきっかけで思いがけない展開にーー
住む世界が違い、交わることのなかったはずの尊の不器用な優しさに触れ惹かれていく美桜の行き着く先は……?
✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦
✧天澤美桜•20歳✧
古式ゆかしき華道の家元の世間知らずな鳥籠のお嬢様
✧九條 尊•30歳✧
誰もが知るIT企業の経営者だが、実は裏社会の皇帝として畏れられている日本最大の極道組織泣く子も黙る極心会の若頭
✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦
*西雲ササメ様より素敵な表紙をご提供頂きました✨
※TL小説です。設定上強引な展開もあるので閲覧にはご注意ください。
※設定や登場する人物、団体、グループの名称等全てフィクションです。
※随時概要含め本文の改稿や修正等をしています。
✧
✧連載期間22.4.29〜22.7.7 ✧
✧22.3.14 エブリスタ様にて先行公開✧
【第15回らぶドロップス恋愛小説コンテスト一次選考通過作品です。コンテストの結果が出たので再公開しました。※エブリスタ様限定でヤス視点のSS公開中】
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる