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第一章 出会いは突然に

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葬儀が一段落したあと、継母に今後の相談をした。
奨学金を借りて大学に通いたいと必死に頼み込んだものの、

『お父さんの呉服店はどうするの?アンタの代で潰すの?』

と詰め寄ってきた。
継母が私の為に高額な大学費用を出してくれるはずがなかった。
父の曾祖母の時代から代々続く呉服屋。
幼い頃、父と母が働いていたこの呉服屋で私は幸せな時間を過ごした。
お客様と笑顔で言葉を交わす母と、それを温かく見つめる父。
受付カウンターの椅子に座って足をパタパタさせながらお絵描きをする私。

今も私の心の中でその当時の出来事は、色濃く記憶されている。

私は、亡き両親の為に店を守る決意を固めた。
大学進学を諦めて、授業が終わるとすぐに呉服店に行き店を手伝った。
そして、高校を卒業するとすぐにここで働き始めたのだった。

その当時は、数人のベテラン従業員がいた。右も左も分からぬ私は、彼らに頭を下げて店の経営やノウハウを一通り学んだ。
父の死後も、従業員やお得意様が支えてくれたお陰でなんとか店を維持できていた。

けれど、昨年従業員が一斉に退職した。
理由は継母からの度重なるパワハラが原因だった。
精神的に追い詰められ、やむなく決断したと涙ながらに打ち明けられたとき、申し訳なさに胸が張り裂けそうだった。

「あ、そうそう。秋穂あきほ。あなた暇ならコンビニでタバコ買ってきてちょうだいよ」
「えっと……タバコですか。買い方を教えてもらえますか?」

秋穂ちゃんが困ったように言う。

すると、継母は「信じられない!」と大げさに叫んだ。

「あなた、二十五にもなってタバコの買い方も知らないの!?今まで一体どうやって生きてきたのよ。もう若くもないくせに、そんなことすら知らなくてどうするの!」

嘲笑うような口調の継母の姿に嫌悪感が募る。

「あなたって、ほんっと何の役にも立たない使えない子ね!親の顔が見てみたいわ」
「……すみません」

秋穂ちゃんは申し訳なさそうに頭を下げる。
継母は知らないけれど、彼女は名家のお嬢様で相当な箱入り娘のようだ。
今まで家族に猛反対されて仕事をすることを認めてもらえなかったらしい。
身なりもきちんとしているし、清潔感もある。
知らないことは多いけど、教えた仕事はすぐに覚えて完璧にこなしてくれる優秀な人材だ。
継母に小言を言われて嫌になって辞められてしまうのだけは絶対に阻止せねば。
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