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第六章
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しおりを挟む「今日は本当にありがとう」
父が帰宅した後、私はリビングのソファに座る陽介くんの隣に腰かけてお礼を言った。
父に知り合いの精神科医を紹介し、さらに何かあった時はいつでも連絡をして欲しいと自身の連絡先まで伝えた。
彼にはいくら感謝してもし足りないぐらいだ。
「俺は何もしてないよ。お父さんとちゃんと向き合えた?」
「うん、陽介くんが隣にいてくれたお陰でいいたいことは言えたよ。それに、私がうまく伝えられなかった部分を陽介くんがお父さんに伝えてくれたから」
昨晩、陽介くんと私は今日のことを事前に話し合った。
父との完全なる決別を望んではいなかったものの、モラハラをやめさせるのは非常に難しい。
もしも話し合いの場で、父が過去を悔い改める態度を見せなければ今日を最後に二度と父とは会わないと決意していた。
けれど、意外なことに父は自身の非を認めて謝罪した。
その父の姿に私は心を動かされ、関係を再構築する道を選んだ。
「時間はかかるかもしれないけど、お父さんとの関係がさらに良くなればいいね」
彼の優しさに熱い感情が込み上げてくる。
「……ありがとう。陽介くんがいてくれてよかった。ほんと、大好き」
私は彼の腰に腕を回して、甘えるように抱き着いた。
彼の胸に頬を押し付ける。トクントクンッと一定のリズムを刻む心臓の音が心地よく鼓膜を揺らす。
「実はここ最近、結乃がお父さんのことで悩んでる姿を見てたから、そっとしておいてあげようって色々我慢してたんだよね」
「うん」
愛し気に私の髪を撫でつける彼の指が心地よくて、うっとりと目を細める。
「結乃不足で今にも爆発しそうなときにそんな可愛いこと言われたら、さすがに抑え利かなくなるよ?」
私は顔を持ち上げて彼を見つめた。
「ごめんね。でも、もう抑えなくていいよ。私も陽介くんと愛し合いたい」
彼は伏し目がちに私を見つめて、親指で私の唇に触れた。
そのまま優しくなぞられて、彼と肌を合わせた感覚が蘇り、身体の芯に灯りがともる。
「結乃ってさ、ホント俺を煽るのうまいよね。可愛すぎて死にそうなんだけど」
彼はやれやれという笑みを浮かべ、私をソファに押し倒した。
早急に唇を強く押し付けられて、口内に舌を差し込まれる。
ねっとりとした彼の舌の動きに理性をあっという間に奪われる。
「んんっ……ふぅ」
腰がゾクゾクと震えて、視界がじんわりと滲む。
彼を求めるように私は首に腕を回す。
彼のキスはどうしてこんなに甘くて気持ちがいいんだろう。
痺れるような気持ちの良さに陶酔してしまう。
私は今までにないぐらい積極的に舌を差し出す。彼はそれを喜ぶように舌を絡めて、私の舌を掬い取る。
一度唇が離れる。私はさらなるキスをねだるように自ら唇を重ね合わせた。
それに応えるように陽介くんは私の首の後ろを手のひらで支えて、貪るように私の唇を蹂躙する。
互いの息遣いが荒くなり、本能のまま情熱的な口づけを交わす。
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