【完結】ハイスぺ副社長になった初恋相手と再会したら、一途な愛を心と身体に刻み込まれました

中山紡希

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第四章

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「クリスマスの日、結乃と八乙女茜が接触したと聞いて嫌な予感はしていたんだ。あのとき、結乃に八乙女茜のことを話しておけばよかったと今になって後悔してる。ただ、これだけは信じて欲しい。やましい気持ちがあったわけじゃない。結乃に余計な心配をかけたくなかったんだ」

陽介くんはハッキリと言い切った。嘘や偽りがないと信じられるぐらい確かな口調だった。

「結乃、本当のことを教えてくれ」

彼は全てを確信したように尋ねる。
彼は頭が切れる。私が知り得ない何らかの根拠を持っている可能性が高い。
だとしたら、私が彼を欺くのは到底不可能だ。観念した私は、小さく頷いた。

「茜さんと早瀬専務に陽介くんから手を引くように言われたの……」

私はあの日、彼らに言われたことを正直に話した。
眉間に皺を寄せて固い表情を浮かべていた陽介くんは、全部聞き終えると「ごめん」と申し訳なさそうに謝った。

「俺のせいで結乃を傷付けた。俺がもっと早く伝えておけば……」
「違うの。陽介くんのせいじゃない。それにね、私……茜さんに陽介くんに渡せるものがあるのかって聞かれて……答えられなかったの」

茜さんには八乙女商事の令嬢という地位も、財産もある。けれど、一般家庭に生まれて、平凡な人生を送ってきた私には、彼にあげられるものがなにもなかった。

「私は陽介くんからたくさんのものをもらってるのに、私はなにもあげられない。それが申し訳なくて……」
「それは思い違いだ。俺は結乃からたくさんのものをもらってる。今の俺には結乃が傍にいてくれることが何よりの力になるんだ」
「でも、私と関係を続けたら陽介くんが……」
「分かってる。でも、俺は誰になんて言われても、結乃を手放すつもりはないから」

揺るぎない力強い言葉に、乾いた私の心があっという間に満たされていく。
彼は私との問題をすべてひとりで背負って、早瀬専務と闘うつもりだ。
彼がそれを望むのならば、私もそれに応えたい。彼を隣で支えたい。

「大丈夫だ、俺が必ず結乃を守る」

その姿にじわりと涙が滲んだ。
いつも陽介くんは私を優先して、大切にしてくれる。
でも、それがもどかしかった。彼が私を大切に思ってくれるとの同じぐらい、私も彼が大切なのだ。

「ちゃんと策は講じた。それに、俺たちの関係はなにも恥じることはないだろ?」

涙がポロリと零れて頬を濡らす。それを合図に感情がせり上がってくる。

「でも、私と陽介くんじゃ釣り合わないよ……。茜さんが私たちの関係をマスコミにリークしたら、相手が私みたいな一般人だって知られて、きっと陽介くんまで笑われる。せっかく努力して上り詰めた副社長という地位も奪われるかもしれない。私の存在が陽介くんの足枷になる……。だから、一度は身を引こうとしたの。でも、本当は陽介くんとずっと一緒にいたい。離れたくないの……。私は陽介くんを愛してるから……。私……どうしたらいいの……」
「だったらここにいてくれ。もう俺から離れるなんて言わないで」

引き寄せられて力強く抱きしめられる。そして、彼は耳元で囁いた。

「そばにいてほしい。俺には結乃が必要なんだ」
「……っ、うぅ……」

彼の愛情が痛いほど伝わり、私は彼の背中に腕を回して声を殺して泣いた。
これから先もずっと彼と共に生きていきたい。
少し身を引いた陽介くんは私の頬の涙を拭い取り、至近距離で私を見つめた。
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