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第三章

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クリスマスの後は、目も回るような忙しさだった。
それでも頑張れたのは、年末年始に陽介くんと過ごす予定があったからだ。
彼の部屋でまったりとテレビを見ながらそばを食べて年を越し、元旦は神社へ初詣に行った。
揃っておみくじを引くと彼は大吉で私は凶だった。

不吉な予感に内心落ち込む。それを見透かされて「大丈夫。俺が幸せを分けてあげるから」と言われ、単純な私はあっという間に元気になった。
出店で焼きそばやらじゃがバターやらを買い込んで、境内に置かれた椅子とベンチでお腹を満たす。
色々な種類が食べたいという意見が一致して、半分こずつ食べて味比べをする。
こうやって一緒にいると彼が早瀬商事の副社長だということを忘れてしまいそうになる。

神社で私は神様に『これからも彼と何気ない小さな幸せを積み重ねていけますように』とお願いした。
彼は私よりも長く両手を合わせて拝んでいた。
何をお願いしたのか尋ねると『叶わなくなったら嫌だから秘密』と頑なに教えてくれなかった。

その翌日の二日は母の月命日で、お墓参りに行くことにした。
霊園の中にある母のお墓には、少し前まで誰かがいた気配があった。
線香が焚かれ、ゆらゆらと白い煙が上がっていた。墓石は綺麗に掃除され、色とりどりの綺麗な花が手向けられている。さらに、生前母の好きだった銘柄のコーヒーもお供えされていた。

「一体誰なんだろう……」

辺りを見渡してもそれらしき人の姿はない。
母が亡くなってから、月命日には必ず誰かがこうやって花を手向けにやってくる。
母が入院している間もお花だけでなく、母の好きなお菓子や飲み物を差し入れてくれる人がいた。
母に聞いたら『お母さんの大切な人』とだけ言って教えてくれなかった。

もしかしたら、母の古くからの友人かもしれない。それか、母の恋人……?
そこまで考えて、首を横に振る。
父と離婚後、母に男性の影はなかった。となると、やはり友人だろう。
母が亡くなった後も律儀に会いにきてくれているところから、相当慈悲深い人であると推測できた。

私は線香に火をつけ、墓石の前に腰を下ろして両手を合わせた。
陽介くんとのことを母に長々と報告する。

「お母さん、天国で見守っててね」

まるで私の言葉にこたえるように、風が吹き、塔婆がカタカタと音を立てて揺れた。
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