【完結】ハイスぺ副社長になった初恋相手と再会したら、一途な愛を心と身体に刻み込まれました

中山紡希

文字の大きさ
上 下
46 / 92
第三章

しおりを挟む

「ああ、これ?今日の為に買ったから。結乃と過ごす初めてのクリスマスデートだしね」

私と過ごすこの日を楽しみにしてくれていたのが伝わってきて胸が熱くなると同時に、なんだか申し訳ない気持ちになる。

「ごめんね……。陽介くんは色々準備してくれたのに」

彼からクリスマスデートに誘われた時、どこへ行ってなにをするのか尋ねた。
場所によっては服装などTPOにも気を配らないといけないからだ。
どこへ行くか大体の場所が分かっていれば事前に準備ができる。
けれど、彼は一切教えてくれなかった。ならば一度家に帰って自分なりに精一杯おしゃれをして出かけようとしたものの、「仕事が終わったらそのまま出かけたいから、普段通りの服装でいいよ」とやんわり断られてしまった。

「ごめん、秘密にしてて。でも、こうでもしないと結乃は遠慮するだろ?」
「だって申し訳なさすぎるよ。こんな高価な物……」

このドレスだってピンヒールだってハンドバッグだって。私には絶対に手の出せない値段だった。

「今の俺が頑張っていられるのは結乃のお陰だから。プライベートはもちろん、仕事でも俺を支えてくれてるだろ。そのお礼」

これ以上ぐずぐず言えば、彼に失礼になる。

「ありがとう。……本当はすごく嬉しい」
「それならよかった」

素直な気持ちを口にする私にそっと微笑み、陽介くんは車のハンドルを握った。

向かった先は、海外の雑誌にも取り上げられるくらい有名な超高級レストランだった。
高層ビルの最上階にある豪華絢爛な店内に足を踏み入れる。
ウエイトレスに案内されたのは、一番奥の予約席だった。
席の周りには他の客はおらず、まるでプライベート空間のようだ。
席は夜景を楽しみながら食事をとれるように、窓の方を向いて設置されている。
ゆったりとしたソファに隣同士に座る。

丸テーブルには真っ白なシルクのテーブルクロスが掛けられている。
オレンジ色の暖色で彩られたテーブルの中央にはミニチュアのクリスマスツリーが飾られている。
クリスマスという特別感のある演出に自然と胸が弾む。私は夜空に広がる宝石のような街の明かりをうっとりと眺めた。

「すごい綺麗……。なんか夢みたい……」
「夢?」
「そう。私、こんな風に彼氏と過ごすクリスマスって初めてなの。毎年、仕事帰りにコンビニのケーキとチキンを買ってクリぼっちだったから」
「それを言うなら、俺もだ。毎年この時期は仕事も立て込んでて忙しいし、クリスマスを楽しむ余裕はなかった」

確かに彼の言う通りだ。十二月は年末があるせいで、特に忙しい。
今年も同じ状況になるはずだったにも関わらず、定時後に入っていた予定をすべて別日に変更するよう指示を出された。
みっちり詰まっているスケジュールの合間にその予定を無理やりねじ込んだせいで、今週の彼の業務は目の回るような忙しさだった。それでも疲れた顔を一切見せず、こんな素敵なレストランまで押さえてくれているなんて……。
彼の気持ちがなにより嬉しかった。

陽介くんがセレクトしてくれた食前酒のシャンパンが運ばれてきた。
私はシャンパングラスを手に取る。

「じゃあ、クリぼっち卒業に乾杯する?」
「ふふっ、そうだね」

乾杯した後、シャンパンを口に含む。
喉越しが良く、鼻に抜ける爽やかな香りのするシャンパンを二人で堪能する。
クリスマス限定のアニバーサリーコースはどの料理も絶品だった。前菜のフランス産のフォアグラのテリーヌから始まり、キャビアを添えたオマールエビのスープも絶品だった。
特に、特選和牛のフィレ肉は口の中で溶けてしまうほどに柔らかくて美味だった。
食事に舌鼓を打つ私を満足げに見つめた後、彼は口を開いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたはカエルの御曹司様

さくらぎしょう
恋愛
大手商社に勤める三十路手前の綾子は、思い描いた人生を歩むべく努力を惜しまず、一流企業に就職して充実した人生を送っていた。三十歳目前にハイスペックの広報課エースを捕まえたが、実は女遊びの激しい男であることが発覚し、あえなく破局。そんな時に社長の息子がアメリカの大学院を修了して入社することになり、綾子が教育担当に選ばれた。噂で聞く限り、かなりのイケメンハイスぺ男性。元カレよりもいい男と結婚しようと意気込む綾子は、社長の息子に期待して待っていたが、現れたのはマッシュルーム頭のぽっちゃりした、ふてぶてしい男だった。  「あの……美人が苦手で。顔に出ちゃってたらすいません」  「まずその口の利き方と、態度から教育しなおします」 ※R15。キスシーン有り〼苦手な方はご注意ください。他サイトでも投稿。 約6万6千字

あまやかしても、いいですか?

藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。 「俺ね、ダメなんだ」 「あーもう、キスしたい」 「それこそだめです」  甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の 契約結婚生活とはこれいかに。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

空から落ちてきた皇帝を助けたら近衛騎士&偽装恋人に任命されました~元辺境伯令嬢の男装騎士ですが、女嫌いの獣人皇帝から無自覚に迫られ大変です~

甘酒
恋愛
元辺境伯令嬢のビリー・グレイはわけあって性別を偽り、双子の兄の「ウィリアム」として帝国騎士団に籍を置いている。 ある日、ビリーが城内を巡視していると、自国の獣人皇帝のアズールが空から落下してくるところに遭遇してしまう。 負傷しつつビリーが皇帝の命を救うと、その功績を見込まれ(?)、落下事件の調査と、女避けのために恋人の振りをすることを命じられる。 半ば押し切られる形でビリーが引き受けると、何故かアズールは突然キスをしてきて……!? 破天荒な俺様系?犬獣人皇帝×恋愛経験皆無のツンデレ?男装騎士の恋愛ファンタジー 執筆済みのため、完結まで毎日更新! ※なんちゃってファンタジーのため、地球由来の物が節操なく出てきます ※本作は「空から落ちてきた皇帝を助けたら、偽装恋人&近衛騎士に任命されました-風使いの男装騎士が女嫌いの獣人皇帝に溺愛されるまで-」を大幅に改稿したものです。

おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件

実川えむ
恋愛
子供のころチビでおデブちゃんだったあの子が、王子様みたいなイケメン俳優になって現れました。 ちょっと、聞いてないんですけど。 ※以前、エブリスタで別名義で書いていたお話です(現在非公開)。 ※不定期更新 ※カクヨム・ベリーズカフェでも掲載中

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

処理中です...