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第三章
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しおりを挟む「なんて言ってる私も、昔は結婚に対して後ろ向きだったのよ。毎日のように喧嘩する両親を見て育てばしかたないのかもしれないけどね」
まさか関さんも私と同じ境遇だなんて考えてもいなかった。
「でもね、今の主人に出会ったときに、この人となら上手くいくかもしれないっていう直感があったのよ。ビビビッときたの。それで、出会って三か月でスピード結婚して、あれから十五年経つけど今もラブラブよ。そういえば、秋月さんって今二十八なのよね?私もその年で結婚したのよ」
おどけた表情の関さんにつられて微笑む。
「私もいつか関さんみたいになれますかね?」
「なれるわよ~!それに、秋月さんと私って似てるじゃない?」
「私と関さんがですか?」
目をしばたく。明るく陽気な関さんと、面白いことの一つも言えない私が似ている?
「そうそう、仕事人間なところが」
そう言って関さんはデスクの上の電話を指差した。
思い返せばお昼休みの時、関さんはいつも自席で食事をとる。
言いたいことが手に取るように分かり、自然と笑みが漏れる。
「関さんもだったんですね」
「秘書課に来てからはずっとね。でも好きでやってることだから、秋月さんは気にせずみんなとランチに行ってきてもいいんだからね?あなたは真面目で優秀な分、人より頑張る癖がついちゃってるから。たまには肩の力を抜いていいのよ」
思いがけない関さんの言葉に目頭がジンッと熱くなる。
「ありがとうございます。そんな風に言ってもらえて……なんか嬉しくて……」
唇をキュッと噛みしめて感情を押し殺す。
「あらっ、ちょっとやだぁ~、なんで泣きそうなのよぉ。私がイジメたみたいじゃない~!」
関さんはデスクの上のティッシュを数枚引き抜いて、大慌てで私に手渡す。
お礼を言って受け取った時、目が合った。
ふふっと互いに笑みを漏らす。心が近付いたような不思議な感覚がした。
お弁当箱を片付けて歯磨きを済ませた頃には、社食に行っていたメンバーが続々と秘書課へ戻ってきた。
秘書課で働く人たちは白洲室長や関さんをはじめ、みんな親切で優しい。
仕事をする上で重要な人間関係が良好なお陰で仕事にも集中することができる。
私はタブレット端末を操作して午後の陽介くんの予定を再度確認する。
最初は不安しかなかったものの、この仕事はやりがいがある。
さらには頑張りを認めてくれる先輩秘書もいる。
仕事への情熱が沸々と湧き上がり、午後も精力的に仕事に取り組んだ。
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