【完結】ハイスぺ副社長になった初恋相手と再会したら、一途な愛を心と身体に刻み込まれました

中山紡希

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第二章

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「先程も言いましたが、パワハラの事案が確認されています。轟部長、それについてはどうお考えですか」
「パ、パワハラ?」

陽介くんの言葉に轟部長の目が泳ぐ。

「ある女性社員の話では、業務時間内にも関わらず。わざわざ別室に呼び出されてパワハラを受けたと」
「なっ。そんなことを言っているのは、誰なんです?」

轟部長は目の前にいる私を憎々し気に睨み付けた。
彼の言葉で私が密告したのだと確信を持ったようだ。

「守秘義務があるので、それにはお答えできません。ですが、私は公平を期すために双方の話を聞いてから総合的に判断したいと考えています」

陽介くんの言葉に轟部長が嘲笑うように私を見つめた。
まるで勝ったと言わんばかりの表情に不安が胸に込み上げる。

「この女……、今目の前にいる秋月から話を聞いたんでしょう?確かに俺は何度か彼女を呼び出して注意しましたよ。でも、それがパワハラに当たるとは考えていません」

陽介くんが小さく息を吐く。

「この女はねぇ、女で弱い立場にあることを利用して、叱られた腹いせに俺を逆恨みしてるんですよ」

私がなにも言わないのをいいことに、好き勝手言ってのける轟部長。
すると、黙って話を聞いていた陽介くんが口を開いた。

「自身のパワハラをカミングアウトして頂き、ありがとうございます」

背の高い彼は冷ややかな目で轟部長を見下ろした。その瞳には確かな怒りがこもっている。

「なっ、カミングアウトってどういう意味です……?だって、さっき言ってたじゃないですか。女性社員がパワハラを受けたって!」
「ええ。ですが、私はただの事例を上げただけで、轟部長がパワハラを行ったとは言ってはいません。もちろん、秋月さんからもそのような報告は一切受けていません」
「なんだって!?」

轟部長の声が裏返る。

「コンプライアンス遵守をお願いした私の前で、よくもこんな酷いパワハラ発言ができましたね。私がいてもあれなら、普段彼女にどれほど酷い言葉を浴びせているのやら」
「いや、あれは……」

言い訳しようとする轟部長に被せるように陽介くんが言葉を続ける。

「先程も言いましたが、私はこの問題を見過ごすつもりは一切ありません。この問題は北本社長にも一任されています。私はあなたをパワハラの当事者と判断し、厳正に処分しますのであしからず」
「ま、待ってください!秋月、お前からも言ってくれ。俺はお前にパワハラなどしていない。そうだろう?」

すると、轟部長が私に縋るような目を向けた。
パワハラなどされていないと言えと、必死に目で訴えかけてくる。

私はどうしたらいいのか分からずうつむく。
ここで轟部長からパワハラを受けているなどと答えたら、次はどんな目にあうか分からない。
これから先もこの会社で働くためには、余計な波風は立てないほうがいい。
けれど、ここで見過ごせば轟部長はこれから先もパワハラを繰り返すだろう。

「秋月さん、あなたの正直な意見を聞かせてくれませんか?悪いようにはしません。どうか私を信じてください」

彼の漆黒の双眸が私を捕らえる。
陽介くんは轟部長に気付かれぬようにほんのわずかに頷いて見せた。
大丈夫だというようにに力強い眼差しに背中を押される。
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