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第二章
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しおりを挟む翌日。目を覚ますと、隣には陽介くんがいた。
「おはよう。体、大丈夫?」
下半身にわずかな違和感を感じて、彼に抱かれたのが夢ではないと実感する。
「おはよう。うん、大丈夫」
寝顔を見られたのが恥ずかしくて顔を布団で隠す私を見た陽介くんは「寝顔も可愛かったよ」と私を抱きしめて、頬にキスを落とした。
こんな風に誰かと共に朝を迎えるのなんて初めてだ。隣に愛する人がいてくれる喜びを噛みしめる。
互いにお腹がペコペコだった。特に、陽介くんは昨日居酒屋にやってきてからほとんど飲み食いしていない。
ホテルのルームサービスを頼もうと提案され、私は二つ返事で頷いた。
「和食と洋食を選べるど、どっちがいい?」
「私はどちらでも大丈夫だから、陽介くんの好きな方でいいよ」
「俺と一緒にいるときは気を遣わなくていいよ。結乃が決めて」と言われて、私は洋食を選んだ。
普段の朝食も、忙しい朝に調理せずに手軽に食べられるパンが多かった。
運ばれてきたのは数種類の焼き立てパンと半熟でふわふわのオムレツやカリカリに焼かれたベーコン、それに新鮮な野菜たっぷりのサラダだった。
用意されているジャムは種類も豊富で目移りしてしまう。
デザートのヨーグルトは自家製でこれまたものすごく美味しかった。
朝食を済ませた後、陽介くんは私を車で自宅まで送り届けてくれた。
まだ一緒にいたいけれど、やり残した仕事があると残念がる彼を「頑張ってね」と笑顔で見送る。
「結乃にそう言ってもらえると、頑張る気になれる。俺って単純だね」
ふっと笑う陽介くんの笑みに胸が高鳴り、胸が温かくなる。
「また連絡するから」
「うん。気を付けてね」
小さなクラクションを鳴らして去っていく車を見送った後、二階建てのアパートの階段を上り玄関の扉を開ける。
築二十年の一DK。カーディガンを脱いでダイニングテーブルに座り、スマホの電源をオンにする。
そのタイミングでスマホが震えた。
もしかしたら、また轟部長かもしれない。
心臓がドクンッと不快な音を立てて鳴る。けれど、相手は奈々だった。
陽介くんと店を出て行った後、連絡がつかなかった私を奈々は心配してくれていたようだ。
親友の奈々には陽介くんとのことを一番に伝えようと思っていたから、ちょうどいい。
私は昨日の出来事をかい摘まんで奈々に話した。
奈々は自分のことのように喜んでくれた。
もしかしたら、ほんのちょっと泣いていたかもしれない。
奈々は意外と涙もろい。こうなったのは、奈々がクラス会に私を誘ってくれたお陰だとお礼を言うと逆に『結乃が勇気を出して参加したからじゃん!ああいう場苦手なのに、偉いよ、アンタは!』とまくしたてるように言われた。
テンションの高い奈々。まだ酔っぱらっているんじゃないかとちょっぴり心配になってしまうけれど、祝福されて本当に嬉しかった。
奈々とまた会おうと約束を取り付け、私は清々しい気持ちで電話を切った。
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