【完結】ハイスぺ副社長になった初恋相手と再会したら、一途な愛を心と身体に刻み込まれました

中山紡希

文字の大きさ
上 下
12 / 92
第一章

11

しおりを挟む

「乗って」

居酒屋の近くのパーキングに停められていたのは誰しもが知る海外製の白い高級車だった。
彼は回り込んでピカピカに磨き上げられた車の助手席のドアを開けて座るように促す。

「靴は脱がなくても大丈夫?」
「もちろん、そのまま乗って。秋月の車は土足禁止なの?」

陽介くんはおもしろそうに尋ねる。

「まさか!私は車を持ってないから。ただ、こんな高そうな車に乗るのは初めてで……」
「ああ、そういうことか。気にしないでいいよ」

彼は軽く言うものの、そういうわけにはいかない。
どこも傷付けたり汚したりしないように、慎重に助手席に座る。
運転席に乗り込んでエンジンをかけた彼は、私のことを不思議そうに見つめた。

「落ち着かないな、どうした?」
「こんな素敵な車に傷でもつけたりしたら大変だなって」

私の言葉に目を丸くした後、彼はふはっと笑顔を見せた。
高校時代と変わらぬ笑みに心臓がトクンッと音を立てる。

「俺の車に乗ったのを後悔してるのかと思った」
「えっ?ち、違うよ!」

居酒屋の時よりも砕けた口調の陽介くん。まるで昔に戻ったみたいに錯覚する。

「冗談だって。で、今日この後予定ある?」
「特にないけど……」

大画面のカーナビの時計は二十時十五分と表示されている。

「明日は仕事?」
「ううん、休み」
「そっか。なら、少しドライブしよう」

彼はグッと私の方へ体を近付けた。
ふわりと彼から香る甘いムスクの匂いに息が止まりそうになる。
彼は自然な動きでシートベルトを締めてくれた。私の心臓はどうにかなりそうなほど大暴れする。

「じゃあ、行こう」

彼はなんてことなく言い、行き先を告げぬままなだらかに車を発進させた。
車は首都高へ進む。社用車で何度か走ったことはあるものの、分岐や出入り口が複雑で常に緊張を強いられるため大の苦手だ。
彼は慣れているのか危なげなくスムーズに車を走らせる。
高級車かつ完璧な運転技術のお陰で乗り心地は抜群だった。

「陽介くんはすごいね」
「なにが?」
「なんでもスマートにこなせるから。運転だって上手だし、女性の扱いだって。シートベルトを締めてくれる人なんて初めてだよ」
「そう?」

彼は肯定も否定もしない。それでいて驕らず、謙遜もしない。常に冷静で余裕が感じられる。
だから、昔から彼を嫌う人はいない。

「それを言うなら秋月こそスマートでしょ。みんなが大騒ぎしててもテーブルの上片付けたり、酔っ払いにお茶配ったり。そういう気配りができるところ変わってなくて嬉しい」
「気配りっていうか……場の空気を読んで人に気を遣うのは、癖みたいなものだから。本当はやめたいの」

そう、これは癖だ。
周りを見て先回りして行動するのは物心ついたときから始まった。
父の機嫌を損ねないようにするための防衛策。両親が離婚して父と離れたあとも、その癖が抜けきらない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

義兄の執愛

真木
恋愛
陽花は姉の結婚と引き換えに、義兄に囲われることになる。 教え込むように執拗に抱き、甘く愛をささやく義兄に、陽花の心は砕けていき……。 悪の華のような義兄×中性的な義妹の歪んだ愛。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない

若松だんご
恋愛
 ――俺には、将来を誓った相手がいるんです。  お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。  ――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。  ほげええっ!?  ちょっ、ちょっと待ってください、課長!  あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?  課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。  ――俺のところに来い。  オオカミ課長に、強引に同居させられた。  ――この方が、恋人らしいだろ。  うん。そうなんだけど。そうなんですけど。  気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。  イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。  (仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???  すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。 でも、社内で有名な津田部長。 ハンサム&クールな出で立ちが、 女子社員のハートを鷲掴みにしている。 接点なんて、何もない。 社内の廊下で、2、3度すれ違った位。 だから、 私が津田部長のヒミツを知ったのは、 偶然。 社内の誰も気が付いていないヒミツを 私は知ってしまった。 「どどど、どうしよう……!!」 私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

お酒の席でナンパした相手がまさかの婚約者でした 〜政略結婚のはずだけど、めちゃくちゃ溺愛されてます〜

Adria
恋愛
イタリアに留学し、そのまま就職して楽しい生活を送っていた私は、父からの婚約者を紹介するから帰国しろという言葉を無視し、友人と楽しくお酒を飲んでいた。けれど、そのお酒の場で出会った人はその婚約者で――しかも私を初恋だと言う。 結婚する気のない私と、私を好きすぎて追いかけてきたストーカー気味な彼。 ひょんなことから一緒にイタリアの各地を巡りながら、彼は私が幼少期から抱えていたものを解決してくれた。 気がついた時にはかけがえのない人になっていて―― 表紙絵/灰田様 《エブリスタとムーンにも投稿しています》

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

処理中です...