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第一章
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しおりを挟むそれから数日後の土曜日。
クラス会で着て行く服を一緒に買いに行こうと奈々に誘われ、私は開店と同時にお洒落な洋品店に足を踏み入れた。普段は仕事と家の往復。
元々インドアな性格で、誰かと出かけることは奈々以外ほとんどない。
もちろん彼氏もいない。奈々の誘いは渡りに船だった。
「これなんていいんじゃない?」
店に入るなり、奈々はささっと私に似合いそうな服をいくつかピックアップしてくれた。
「お洒落でいいね。ただ、身体にフィットしそうだよね。私なんかが着こなせるかな……?」
派手色の背中のがっつり開いたタイトなワンピースを見て私は目を白黒させる。
アパレルメーカー勤務の奈々はファッションに精通している。
肩まである黒髪のワンレンボブ。キリッとした奥二重の目元と泣きぼくろが色っぽい。
体にフィットしたボルドー色の長袖のロングワンピースを着こなし、黒いブーツを履いている。
アクセサリーはすべてゴールドで統一されている。
百七十センチという長身もあり、モデルのような出で立ちだ。
「結乃、昔から自己評価低すぎでしょ。アンタみたいに細身なのに巨乳って、なかなかいない逸材よ!顔だってこんなに可愛いのに、主張しないなんてもったいないわ」
「奈々ってば、褒めすぎだよ」
「言っとくけどあたし、忖度とかお世辞言ったりしないタイプだからね」
「ふふっ、ありがとう」
奈々はいつだってこうやって私を褒めてくれる。
奈々の言う通り、私はどちらかというと人よりも自己評価も自己肯定感も低い。
原因は、子供の頃に父から受けたモラルハラスメントだ。高校入学前、両親が離婚するその日まで自己否定され続けた結果が、今の私だ。
父から解放された後も、私は自信のなさを努力で補おうとしてしまう癖がついた。それがいまだに続いている。
その後、私は奈々と相談して黒いシンプルなIラインのロングワンピースと、その上に羽織るベージュのカーディガンを購入した。
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