【完結】ハイスぺ副社長になった初恋相手と再会したら、一途な愛を心と身体に刻み込まれました

中山紡希

文字の大きさ
上 下
2 / 92
第一章

しおりを挟む

都心から電車で十五分の場所に私の働く北本貿易株式会社のビルはある。
五階のフロアの一角で、パソコン画面に向き合い、一心不乱にキーボードを叩く。

大学卒業後、北本貿易で働き始めてから早六年。私は輸出部門の事務員として働いている。
商品の配送注文はもちろん輸送や通関の手続きから代金の回収、さらにはクレーム処理などその業務は多岐に渡る。
申告や送金など請求すべてに数字が関わり、荷物を一桁間違えただけで通関を通らず許可が下りないなど仕事には正確さが要求される。
一つのミスが起これば大きな損害に繋がる仕事だ。
その為、書類は必ず人を変えて三重チェックをかける。
上がってきた書類チェックでミスを見つけた私は、その修正に追われていた。

「秋月!」

張り詰めた低い声で名前を呼ばれて、反射的にビクッと体を震わせてキーボードから手を離す。
振り返るよりも早くやってきた轟部長は、私のデスクを力いっぱい叩いた。

「お前、まだ修正終わってないのか?通関手配今日までだって言ったよなぁ?」
「も、申し訳ありません。あと少しで終わります」
「チンタラすんなよ。若くてちょっと可愛いからって許されるほどこの仕事は生易しくないぞ。それができなきゃ、この会社では勤まらねぇぞ~?」
「すみません……。大至急修正します」

頭を下げて謝罪する私に気を良くしたのか、轟部長は「急げよ」とだけ残して自席へ戻っていく。
私は部長の背中を目で追った。

五十代バツイチ。皺だらけの白いYシャツの襟元の折目は黄ばんでいる。
整理整頓が苦手なのか、デスク回りには書類の束が積み重なり、いつ雪崩が起きてもおかしくない。
そんな部長が作成した書類に複数の不備が見つかったのは、ほんの数時間前だった。

物を輸出するためには、出荷から代金回収はもちろんのことさまざまな関連書類が付随する。
輸出した貨物が相手国の輸入通関を通らなければすべて没収される可能性もある。
数量を一つ間違えるだけで命取りになる。

「まったく。自分のミスを棚に上げて何様のつもり?あの人、あなたを口説き落とせなかったのをまだ根に持ってるのよ。あんなの気にしちゃダメよ」

先程の会話を聞いていた隣の席の小田さんがすかさずフォローしてくれる。
私よりも三歳年上の先輩は、私が新卒の頃の教育係だった。
黒髪のショートボブに目鼻立ちのハッキリした美人だ。仕事ぶりは完璧で、さらに面倒見も良い。
パワハラまがいのことをされても頑張っていられるのは、小田さんがいてくれるお陰だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたはカエルの御曹司様

さくらぎしょう
恋愛
大手商社に勤める三十路手前の綾子は、思い描いた人生を歩むべく努力を惜しまず、一流企業に就職して充実した人生を送っていた。三十歳目前にハイスペックの広報課エースを捕まえたが、実は女遊びの激しい男であることが発覚し、あえなく破局。そんな時に社長の息子がアメリカの大学院を修了して入社することになり、綾子が教育担当に選ばれた。噂で聞く限り、かなりのイケメンハイスぺ男性。元カレよりもいい男と結婚しようと意気込む綾子は、社長の息子に期待して待っていたが、現れたのはマッシュルーム頭のぽっちゃりした、ふてぶてしい男だった。  「あの……美人が苦手で。顔に出ちゃってたらすいません」  「まずその口の利き方と、態度から教育しなおします」 ※R15。キスシーン有り〼苦手な方はご注意ください。他サイトでも投稿。 約6万6千字

あまやかしても、いいですか?

藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。 「俺ね、ダメなんだ」 「あーもう、キスしたい」 「それこそだめです」  甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の 契約結婚生活とはこれいかに。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

空から落ちてきた皇帝を助けたら近衛騎士&偽装恋人に任命されました~元辺境伯令嬢の男装騎士ですが、女嫌いの獣人皇帝から無自覚に迫られ大変です~

甘酒
恋愛
元辺境伯令嬢のビリー・グレイはわけあって性別を偽り、双子の兄の「ウィリアム」として帝国騎士団に籍を置いている。 ある日、ビリーが城内を巡視していると、自国の獣人皇帝のアズールが空から落下してくるところに遭遇してしまう。 負傷しつつビリーが皇帝の命を救うと、その功績を見込まれ(?)、落下事件の調査と、女避けのために恋人の振りをすることを命じられる。 半ば押し切られる形でビリーが引き受けると、何故かアズールは突然キスをしてきて……!? 破天荒な俺様系?犬獣人皇帝×恋愛経験皆無のツンデレ?男装騎士の恋愛ファンタジー 執筆済みのため、完結まで毎日更新! ※なんちゃってファンタジーのため、地球由来の物が節操なく出てきます ※本作は「空から落ちてきた皇帝を助けたら、偽装恋人&近衛騎士に任命されました-風使いの男装騎士が女嫌いの獣人皇帝に溺愛されるまで-」を大幅に改稿したものです。

おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件

実川えむ
恋愛
子供のころチビでおデブちゃんだったあの子が、王子様みたいなイケメン俳優になって現れました。 ちょっと、聞いてないんですけど。 ※以前、エブリスタで別名義で書いていたお話です(現在非公開)。 ※不定期更新 ※カクヨム・ベリーズカフェでも掲載中

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

処理中です...