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エピローグ

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「あっ、だけど実は他人には良い顔するけど、家の中ではモラハラ全開の男もいるし……。もしかして、そういうんじゃ……」
「ないない。いつもあんな感じだよ」
「えぇ~!ありえない。あたしがやってるゲームの中のキャラにも負けない超スパダリじゃない!」

奈々子の言葉に冬野くんが反応する。

「奈々子さんは伍代さんみたいな男性がタイプなんですか?」
「そりゃ女だったら誰でもそうでしょ。結婚してからもあんな風に愛してほしいもの」

冬野くんはいまだ奈々子に自分の想いを伝えられていない。
さすがの奈々子だって冬野くんの気持ちにはとっくに気付いているだろう。
三人は家族ぐるみの交流を深めているけど、冬野くんが一歩を踏み出せずにいた。

『春ちゃんの気持ちを考えるとなかなか気持ちを伝えられないです。大好きなママに彼氏ができるのって……嫌だと思うんですよ』

今どきの若い子なのに、冬野くんの考えは至極まっとうだ。
自分の気持ちを優先せず、奈々子や娘の春ちゃんのことを一番に考えてあげていた。

「ママは理想が高すぎるよ」

すると、春ちゃんが呆れた口調で言った。
四歳になり幼稚園に通うようになってすっかりお姉さんになった春ちゃん。
最近、クラスに好きな男の子ができたと奈々子が教えてくれた。

「はじめくんじゃダメなの?」
「えっ!?」

春ちゃんの言葉に、奈々子と冬野くんの声が重なり合う。

「ママとはじめくんが結婚したら、春は嬉しい。だって、春ははじめくんが大好きだから」
「そっか……。春の気持ちはよく分かったよ。ありがとう」

奈々子は隣に座る春ちゃんの頭を優しく撫でる。
それを見ていた冬野くんと奈々子は目を見合わせた。
照れくさそうに微笑みあう二人を見ていると、私まで幸せな気分になる。

きっと二人が結ばれる日も近いはずだ。

「白鳥さ~ん!ヘルプです!心音ちゃんが泣きだしちゃいました!!」
「抱っこしてくれてありがとう」

黒川さんの元へ歩み寄り、心音を抱っこする。すると、心音は私の顔を見ると、ピタリと泣き止んだ。

「赤ちゃんってこんなに小さくても、ママのことはよくわかってるんですよね」
「そうですね」

斎藤さんの言葉に自然と頬が緩む。
目尻に涙を溜めながら私を見上げるその純粋な瞳に愛おしさがこみ上げてくる。

「白鳥さん、なんか顔つき優しくなりましたよね。前はこーんな怖い顔してたのに」

黒川さんが目尻を指で持ち上げる。

「失礼ね。そんなにきつい顔してなかったでしょ」
「いや~、してましたよ。だから、みんな白鳥さんのこと悪女って呼んでたんじゃないですか」
「ちょっと、黒川さん」

斎藤さんが慌てて黒川さんを諫める。すると、彼女は肩を竦めてふふっと笑った。

「でも、今は優しくて穏やかな良いママの顔してますよ。まるで聖母みたいな?」

黒川さんの言葉に「それは言いすぎでしょ~?悪女から聖母じゃキャラ真逆じゃない」と奈々子がケラケラ笑う。

「ちょっと、アンタたちホント失礼ね!」

私が不満げに文句を言うと、片付けを終えた智哉さんが私と心音の元へ歩み寄った。

「みなさん、うちの可愛い妻をイジメないでもらえますか?」

そう言って私の肩を優しくを抱く智哉さん。

「ヤバッ!伍代さん、それはダメ……。キュン死する……」
「ああ、尊い。スパダリ最高!」

黒川さんが胸を押さえ、奈々子が頬に手を当ててうっとりと智哉さんを見つめる。
きっとこれから先もずっと、私はこうやって娘の心音ともども彼に甘やかされるに違いない。
私が誰かに悪女だと言われようと、智哉さんならありのままの私を丸ごと受け入れてくれると確信を持てる。

そっと見上げると、智哉さんと目が合った。優しい微笑みに胸が鳴る。
前世では結ばれなかった私たちは今、娘の心音とともに家族になった。
智哉さんから一途な愛を刻み込まれ、私は幸せを噛みめながら溢れんばかりの笑顔を浮かべたのだった。


【END】
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