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第六章 芽生えた感情
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しおりを挟む目的地の猫カフェは智哉さんのマンションから車で十分ほどの距離にあった。
天然素材に囲まれたお洒落な店内に入ると、たくさんの猫たちが一斉に私たちをお出迎えしてくれた。
広々として清潔に保たれている店内はカップルや家族連れがそれぞれお目当ての猫に触れたり、餌をあげたり自由に楽しんでいる。
「か、可愛すぎる……!」
おやつを手にしているせいか、猫たちの食いつきが半端じゃない。
床に正座する私の膝の上にやってきた猫たちが争うように「ニャー!」と鳴いておやつを催促する。
「待っててね。一人ずつね」
動物は基本なんでも好きだ。だけど、猫は特に大好きだった。
手のひらにおやつのカリカリと乗せると、猫たちは上手に舌を使っておやつを口に運ぶ。
言葉通り猫っ可愛がりする私の隣で智哉さんも同じように猫に囲まれて目尻を下げている。
その優しく穏やかな横顔に目を奪われる。
こんなにも魅力の塊のような人が私の彼氏だなんて、正直今も信じられない。
「癒される。ずっとここにいたい」
「ですね」
けれど、猫たちに取り囲まれる幸せな時間はあっという間だ。
おやつがなくなったことがわかると、猫たちはすぐに塩対応になる。
撫でようとすると、するりと通り過ぎていく。
でも、それを含めて猫らしくて可愛い。
猫じゃらしで一緒に遊んだり、体を撫でたり、写真を撮ったり。
猫たちと存分に戯れた後、私たちは同じ敷地内にあるカフェで遅めの昼食をとった。
猫型のプレートに盛り付けられたスパゲッティの写真をスマホで撮影する。
「今、猫ってすごい人気ですよね。猫をコンセプトにした広告依頼も増えていますし」
「まあそうだね」
「このまえに依頼を受けたクライアントの商品の宣伝も猫を――」
「実咲」
すると、智哉さんが私の言葉を遮った。
「今はデート中でしょ。しかも、付き合ってから初めてのデートだし。仕事熱心なのはいいことだけど、たまには仕事から離れて息抜きしよう」
「……はい」
確かに彼の言う通りだ。
私はスマホをバッグの中に押し込んでスパゲティを口に含んだ。
「うん!美味しい!」
料理に舌鼓を打つ私を智哉さんは穏やかな表情で見つめた。
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