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第六章 芽生えた感情
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「お兄ちゃん、フミちゃんを亡くしてからずっと後悔ばかりの日々を送っていたの……。女遊びも一切辞めて、結婚もせず、毎日フミちゃんのお墓に会いに行ってた」
「そんなことが……」
正直、話を聞いてもまだその事実を受け入れることはできない。
だけど、もし仮にその話が本当だったとしたら、今までの伍代さんの不思議な言動にも全て説明がつく。
「お兄ちゃん、ずっとフミちゃんのことを探してたの。いつか絶対また巡り合えるって信じて。だから、イギリスで仕事してる時にたまたま東光エージェンシーの広告に載ってるフミちゃん、じゃなくて実咲ちゃんを見つけてお兄ちゃんホントに嬉しそうだった」
「やめろ、幸子。余計なことは言わないでいい」
照れくさそうな伍代さんなんてお構いなしに幸子ちゃんが続ける。
「会社で初めて実咲ちゃんと会った日なんて、興奮して電話までかけてきたんだよ。あれは間違いなくフミだったって。俺のことは忘れてるけど、しゃべり方も、佇まいも全部フミと一緒だって物凄い喜びかただったんだから」
「幸子、それ以上言うな」
伍代さんは、たまらないとばかりに表情を顰めてうな垂れる。
「でもね、あたしもずっとフミちゃんに会いたかったの。だから、会えてよかった」
「ま、待って。私とそのフミちゃんが同一人物だっていう保証はないのよ?ただ顔が似ているだけで別人の可能性だってあるし」
「ううん、実咲ちゃんは絶対にフミちゃんの生まれ変わりだよ。話し方とか雰囲気とか、時代は違ってもそういうのって変わらないし」
幸子ちゃんが確信を持ったように言う。
「全部、本当なんですか?」
伍代さんに視線を向けると、彼は深く頷いた。
「ずっと後悔してたんだ。フミが他の男の嫁になると知って自暴自棄になって女遊びをしてフミを悲しませてしまったことも、フミに自分の気持ちを伝えなかったことも……。なにより、一人で逝かせてしまったことをずっと悔やんでた。だから、もしまた会えたら今度こそ絶対に幸せにするって決めてた」
「なんか……複雑です。伍代さんが好きになったのはフミちゃんなわけで……」
だけど、二人の話の信憑性は高い。
初めて彼を見たとき、確かに既視感を覚えたのだ。
どこかで会っているような、懐かしいような、そんな感情が体の奥底から湧き上がってきた。
「信じてもらえないかもしれないけど、俺は実咲が好きだ」
妹の幸子ちゃんの前にも関わらず、伍代さんは真っすぐ私の目を見て気持ちを口にする。
それを見ていた幸子ちゃんは口に両手を当て、驚いたように目を見開く。
「なんかお邪魔みたいだし、あたし帰るね。実咲ちゃん、これからもよろしくね」
「あ……、はい」
「やだなぁ、実咲ちゃん。敬語なんて使わないでいいよ」
慌ただしく帰る支度を済ませて、にこやかに立ち上がる幸子ちゃん。
「そうそう。お兄ちゃんの車にピアス落ちてなかった?あれ、彼氏からもらった大切なものなの」
「お前、それをわざわざ取りに来たのか?」
「そうだよ。夕方何度も車の中を探してってメッセージ送ったのに、『今忙しいから無理』ばっかりなんだもん。だから、直接取りに来たってわけ」
伍代さんはリビングの奥から持ってきたピアスを幸子ちゃんに差し出した。
それは、以前私が拾ってコンソールに入れたゴールドのループ型のピアスだった。
「あー、よかった!ありがと」
玄関まで見送ると、幸子ちゃんは無邪気な笑顔を浮かべて去っていく。
その場に残された私の手に伍代さんがそっと触れる。
「ちゃんと二人っきりで話がしたい。いい?」
大きくて温かい手のひらの熱に、心臓がトクンッと震える。
彼と目が合い、私はこくりと深く頷いた。
「そんなことが……」
正直、話を聞いてもまだその事実を受け入れることはできない。
だけど、もし仮にその話が本当だったとしたら、今までの伍代さんの不思議な言動にも全て説明がつく。
「お兄ちゃん、ずっとフミちゃんのことを探してたの。いつか絶対また巡り合えるって信じて。だから、イギリスで仕事してる時にたまたま東光エージェンシーの広告に載ってるフミちゃん、じゃなくて実咲ちゃんを見つけてお兄ちゃんホントに嬉しそうだった」
「やめろ、幸子。余計なことは言わないでいい」
照れくさそうな伍代さんなんてお構いなしに幸子ちゃんが続ける。
「会社で初めて実咲ちゃんと会った日なんて、興奮して電話までかけてきたんだよ。あれは間違いなくフミだったって。俺のことは忘れてるけど、しゃべり方も、佇まいも全部フミと一緒だって物凄い喜びかただったんだから」
「幸子、それ以上言うな」
伍代さんは、たまらないとばかりに表情を顰めてうな垂れる。
「でもね、あたしもずっとフミちゃんに会いたかったの。だから、会えてよかった」
「ま、待って。私とそのフミちゃんが同一人物だっていう保証はないのよ?ただ顔が似ているだけで別人の可能性だってあるし」
「ううん、実咲ちゃんは絶対にフミちゃんの生まれ変わりだよ。話し方とか雰囲気とか、時代は違ってもそういうのって変わらないし」
幸子ちゃんが確信を持ったように言う。
「全部、本当なんですか?」
伍代さんに視線を向けると、彼は深く頷いた。
「ずっと後悔してたんだ。フミが他の男の嫁になると知って自暴自棄になって女遊びをしてフミを悲しませてしまったことも、フミに自分の気持ちを伝えなかったことも……。なにより、一人で逝かせてしまったことをずっと悔やんでた。だから、もしまた会えたら今度こそ絶対に幸せにするって決めてた」
「なんか……複雑です。伍代さんが好きになったのはフミちゃんなわけで……」
だけど、二人の話の信憑性は高い。
初めて彼を見たとき、確かに既視感を覚えたのだ。
どこかで会っているような、懐かしいような、そんな感情が体の奥底から湧き上がってきた。
「信じてもらえないかもしれないけど、俺は実咲が好きだ」
妹の幸子ちゃんの前にも関わらず、伍代さんは真っすぐ私の目を見て気持ちを口にする。
それを見ていた幸子ちゃんは口に両手を当て、驚いたように目を見開く。
「なんかお邪魔みたいだし、あたし帰るね。実咲ちゃん、これからもよろしくね」
「あ……、はい」
「やだなぁ、実咲ちゃん。敬語なんて使わないでいいよ」
慌ただしく帰る支度を済ませて、にこやかに立ち上がる幸子ちゃん。
「そうそう。お兄ちゃんの車にピアス落ちてなかった?あれ、彼氏からもらった大切なものなの」
「お前、それをわざわざ取りに来たのか?」
「そうだよ。夕方何度も車の中を探してってメッセージ送ったのに、『今忙しいから無理』ばっかりなんだもん。だから、直接取りに来たってわけ」
伍代さんはリビングの奥から持ってきたピアスを幸子ちゃんに差し出した。
それは、以前私が拾ってコンソールに入れたゴールドのループ型のピアスだった。
「あー、よかった!ありがと」
玄関まで見送ると、幸子ちゃんは無邪気な笑顔を浮かべて去っていく。
その場に残された私の手に伍代さんがそっと触れる。
「ちゃんと二人っきりで話がしたい。いい?」
大きくて温かい手のひらの熱に、心臓がトクンッと震える。
彼と目が合い、私はこくりと深く頷いた。
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