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第六章 芽生えた感情
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しおりを挟む黒川さんの説明が一通り終わると、斎藤さんにバトンタッチしてセールスプロモーションの企画も説明する。
「今回、出演予定のインフルエンサーにはSNSでのプロモーションの協力を得られております」
斎藤さんは、SNSでのインフルエンサーのいいね、クリック、シェアを計る指標のエンゲージメント率をボード資料で示した。
また、訪問者がそのサイトを閲覧して離脱するまでのセッションや、訪問者がホームページの目標としているアクションを起こしてくれたコンバージョンも合わせて説明していくと、JJTの宣伝部長がうんうんと頷き、明らかに興味を示した。
「弊社は単純なフォロワー数だけでオファーを出すことはせず、多角的検知により、低コストで大きな効果を得られるインフルエンサーを選定しました」
臆することなくプレゼンを行う斎藤さんはもう立派な営業部の一員だ。そして、作ったボードを出すタイミングなど裏方に徹してくれている冬野くんもまたチームに欠かせない存在だ。
そして、いよいよ私の順番が回ってきた。
「最後になりますが、今現在、動画アプリ等では短いショート動画というものが人気になっています。今の時代は情報過多ですが、私たちの時間には限りがある。だからこそ、CMという短い時間でどれだけ視聴者や購買者の心を掴めるかが重要になってきます」
私は手元の書類には一切目を向けず、真っすぐ前を向き一人一人の目を見つめながら訴える。
「それでは、最後にこちらをご覧ください。」
私たちは全員が一列に並んだ。冬野くんが用意していた音楽を鳴らす。
ポップな曲とともに、今若者の間で流行っている音源に合わせて全力でダンスを踊った。
新CMではキャッチーな曲とダンスを組み込み、ジュージューバーグを宣伝する予定になっていた。
それを目の前で披露することにしたのだ。
顔は満面の笑みでキレキレのダンスを踊る私たちに室内が爆笑に包まれる。
踊り終えると、全員が肩で息をしていた。
「弊社は選りすぐりのスタッフで今までにない企画を作ってまいりました。もし、弊社をご指名いただきました暁には、全力を上げて御社の知名度向上に貢献したいと思っております。本日はお時間頂き、誠にありがとうございました」
伍代さんが頭を下げると、拍手が湧き上がった。
私たちが会議室を後にすると、業界二位の萩沢のスタッフが待機していた。
どうやら会議室の異常な盛り上がりに困惑している様子だ。
「やりきりましたね」
JJTを出ると、伍代さんが全員の顔を見つめてニッと笑った。
それにつられて、私たちもホッとしたように笑顔を浮かべたのだった。
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