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第五章 不穏と波乱
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「確かに自分のアカウントでSNSに書き込みはしましたけど……ただそれだけで……」
「どれ?見せて」
手を差し出すと、黒川さんは諦めたのか素直にスマホを私に手渡す。
綺麗なネイルの施されている指先は小刻みに震えていた。
私と斎藤さんは揃って彼女のスマホ画面を見つめる。
【もえもえ:ミルキー桃ちゃんすご。JJTの宣伝部長の娘も推してるって】
【もえもえ:聖〇小学校で私立じゃん。親金持ち~】
「これはマズいですね……」
斎藤さんが顔をしかめる。
今は個人情報保護法というものがあり個人情報の取り扱いにはどこの企業も慎重になっている。
名前は出していないものの、JJTという企業名と宣伝部長の娘と通っている小学校名まで……。
伏字とはいえ、個人を特定できそうな情報をSNSにアップしてしまっている。
最悪なことに、黒川さんのプロフィールには【大手広告代理店 東光エージェンシー第一営業部勤務】と記されている。彼女がSNSをやっていることは知っていたけど、まさか個人情報の扱いがこんなにも緩いなんて思いもしなかった。
何度も社内会議で個人情報の漏洩や拡散の恐ろしさを学んだというのに何も学習していなかったなんて。
それだけでなく自分の情報だっていつ特定されてもおかしくない。
それどころかむしろ、特定してほしいような書き込みが多くみられた。
自己顕示欲の塊のような彼女に、怒りと呆れが入り混じったような感情が湧き上がってくる。
「白鳥さん……、ごめんなさい……。あたし……どうしよう。何とかしてくださいよぉ……」
目に薄っすら涙を溜めて顔をゆがませる彼女に私は毅然とした態度で言う。
「あなたが泣いたって問題は何も解決しないのよ。さっさと涙を拭いて。ミーティングルームへ行くわよ」
「え!?あたしもですか!?白鳥さん、さっきあたしが正直に話せば手を貸してくれるって言ってたじゃないですかぁ」
「手を貸すとは言ったけど、全部を解決するとは言ってないわ。それに、悪いのは誰?黒川さんでしょ?悪いことをした人が謝るの当然でしょ」
「なっ!そんなのずるいです!あたしを騙したんですか!?」
「騙す?そういう時だけ人に頼ろうとするのはやめなさい。今まであなたの尻拭いを何度してきたと思ってるの?手を貸してあげるだけでも感謝しなさい!」
泣き言をいう黒川さんを無視して、私はバッグの中から財布を取り出し斎藤さんに一万円札を手渡した。
「斎藤さん、すみません。これで何かお詫びの品を買ってきてもらえますか?以前洋菓子を渡したら小学生のお子さんが喜んでくれたみたいです。帰りに渡すので、一階の受付嬢に渡しておいてもらえたら助かります」
「分かりました」
「ほらっ、早くいくよ」
そして、私は嫌がる彼女を引きつれミーティングルームへ向かった
「どれ?見せて」
手を差し出すと、黒川さんは諦めたのか素直にスマホを私に手渡す。
綺麗なネイルの施されている指先は小刻みに震えていた。
私と斎藤さんは揃って彼女のスマホ画面を見つめる。
【もえもえ:ミルキー桃ちゃんすご。JJTの宣伝部長の娘も推してるって】
【もえもえ:聖〇小学校で私立じゃん。親金持ち~】
「これはマズいですね……」
斎藤さんが顔をしかめる。
今は個人情報保護法というものがあり個人情報の取り扱いにはどこの企業も慎重になっている。
名前は出していないものの、JJTという企業名と宣伝部長の娘と通っている小学校名まで……。
伏字とはいえ、個人を特定できそうな情報をSNSにアップしてしまっている。
最悪なことに、黒川さんのプロフィールには【大手広告代理店 東光エージェンシー第一営業部勤務】と記されている。彼女がSNSをやっていることは知っていたけど、まさか個人情報の扱いがこんなにも緩いなんて思いもしなかった。
何度も社内会議で個人情報の漏洩や拡散の恐ろしさを学んだというのに何も学習していなかったなんて。
それだけでなく自分の情報だっていつ特定されてもおかしくない。
それどころかむしろ、特定してほしいような書き込みが多くみられた。
自己顕示欲の塊のような彼女に、怒りと呆れが入り混じったような感情が湧き上がってくる。
「白鳥さん……、ごめんなさい……。あたし……どうしよう。何とかしてくださいよぉ……」
目に薄っすら涙を溜めて顔をゆがませる彼女に私は毅然とした態度で言う。
「あなたが泣いたって問題は何も解決しないのよ。さっさと涙を拭いて。ミーティングルームへ行くわよ」
「え!?あたしもですか!?白鳥さん、さっきあたしが正直に話せば手を貸してくれるって言ってたじゃないですかぁ」
「手を貸すとは言ったけど、全部を解決するとは言ってないわ。それに、悪いのは誰?黒川さんでしょ?悪いことをした人が謝るの当然でしょ」
「なっ!そんなのずるいです!あたしを騙したんですか!?」
「騙す?そういう時だけ人に頼ろうとするのはやめなさい。今まであなたの尻拭いを何度してきたと思ってるの?手を貸してあげるだけでも感謝しなさい!」
泣き言をいう黒川さんを無視して、私はバッグの中から財布を取り出し斎藤さんに一万円札を手渡した。
「斎藤さん、すみません。これで何かお詫びの品を買ってきてもらえますか?以前洋菓子を渡したら小学生のお子さんが喜んでくれたみたいです。帰りに渡すので、一階の受付嬢に渡しておいてもらえたら助かります」
「分かりました」
「ほらっ、早くいくよ」
そして、私は嫌がる彼女を引きつれミーティングルームへ向かった
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