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第四章 元カレと再会!?
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しおりを挟む「いい加減にして。手を離して」
低く押し殺した声で言う。
確かに俊介の言う通りだ。私は異性にモテないし、媚びを売ることもしないし、可愛げだってない。
そんなの自分でもわかってる。
それでも、元カレにそれを指摘されるのはあまりにも屈辱的だった。
「私に相手ぐらいいるわよ!」
負けず嫌いの性格が影響して私はとっさにそう口走っていた。
「ホントかよ?」
「本当よ」
どうしてこんな男と付き合ってしまったんだろう……。
若かった私はサークル内で人気者の彼に告白されて舞い上がってしまったのだ。口の上手い彼は女子からモテたし、その人が自分を好きになってくれたことにわずかな優越感を覚えていた。
当時の私は信じられないほどの大バカ者だった。
今ならば、こんな男とは一分一秒たりとも一緒になどいたくない。
「……ねぇ、本当に痛いの!離して!!」
「じゃあ、飯行くって言えよ。なっ?」
絶対に離してやらないとばかりに俊介がギュっと私の手首を握る手に力を込めたそのときだった。。
「――彼女の手を離してもらえますか?」
声のしたほうに視線を向けると、そこには伍代さんの姿があった。
「……アンタは?」
伍代さんを訝し気な表情で見上げながら、俊介が尋ねる。
「彼女と同じ営業部の伍代です。彼女の嫌がることをしないでもらいたい」
「……ああ、別に嫌がってなんていませんよ。俺と実咲は知り合いですから。まあ、今は元カノですけど」
俊介が言うと、伍代さんは確認を取るように私の顔を見た。
私は「離してよ!」と俊介の手を勢いよく振り払った。
勘のいい彼はすべてを悟ったのか、私と俊介の間に割り込むように体を挟み込んだ。
背の高い伍代さんはまるで私と俊介を隔てる様に立ち塞がる。
「……なっ!俺はまだ実咲に話があるんだよ!そこをどけ!」
「お断りします。それに、彼女はきっとあなたに話なんてない。そうだよね?」
振り返って私に尋ねた伍代さんに私は大きく頷いた。
「ということなので、失礼します」
彼はそう言うと、私の右手をギュッと握った。
「はっ?アンタなんなんだよ!同じ会社なだけで、実咲とは何の関係もないんだろ!?」
すると、俊介はケンカ腰になって伍代さんの腕を掴んだ。
鼻の穴を大きく膨らませて興奮気味に目を吊り上げた俊介にも、彼は一切動じない。
それどころか、伍代さんは酷く冷めた目で俊介を見下ろすと、勢いよく掴まれた手を振り払った。
「触らないでください」
「一方的に話に割り込んで実咲を奪おうとするからだろうが!」
怒鳴る俊介を物ともせず、彼はハッキリとした口調で言った。
「奪いますよ。私は彼女が好きなので、他の男には指一本触れさせたくない。今だって彼女に乱暴なことをしたあなたを殴りたい衝動を必死に堪えているんですから」
「……は!?」
彼の返答に、私だけでなく俊介も驚いて目を見開く。
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