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第四章 元カレと再会!?

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付き合っていた当時、初めてのデートでお洒落をして待ち合わせ場所へ向かうと俊介はうんざりしたように『なんでスカート履いてこないわけ?マジ、萎える』と吐き捨てた。
理不尽な言い草の俊介にもぐっと気持ちを堪えて彼のおすすめのファミレスに入ると、俊介は店内にいる女性に点数を付け始めた。

『実咲は俺の女で美人だし、150点。あの奥の女は30点。右にいるカップルの女は10点。よくあんなブサイクな女と一緒に飯食えるよな。自分のランクが落ちるじゃん?』

店内にいる女性を次々に指さしてへらへらと笑う俊介を私はすぐに諫めた。

『ねぇ、そういうのやめてよ。笑えない。今度また同じこと言ったら、私帰るよ』

そのの言葉に、俊介は分かりやすく苛立ち、貧乏ゆすりを始めた。
挙句の果てに料理を運んできてくれた従業員に難癖をつけて謝罪を要求したりとやりたい放題だった。
思い出しただけでも胃の奥が痙攣しそうになる。
この男と付き合ってしまったのは、私の人生最大の汚点だ。

「黙ってないでなんとか言えよ」

年を重ねても相手をやりこめようとする高圧的な態度は変わらないらしい。

「だから、忙しいって言ってるでしょ?何度頼まれても無理なものは無理なの」
「ハァ!?なんでだよ。俺と飯食いたいって女なら山ほどいるのに、俺のほうから誘ってやってんだぞ?」

執拗な俊介の誘いにうんざりする。
すると、俊介はズボンのポケットに入れていた手を出すと、突然手に持っていた私のバッグの紐をグイっと引っ張った。
その拍子にバッグが手から離れ、中身が地面に散乱する。


「ちょっと!なにするのよ!」
「ははっ、悪い悪い」
「ふざけないで!!」

へらっと笑うと、俊介はしゃがみこんで荷物を拾い集めるとバッグを私に手渡した。
それを受け取ると、今度は私の手首をギュッと掴んで自分のほうへ引き寄せる。
俊介の肩に私の鎖骨の辺りがぶつかって痛みが走る。

「お前さあ、ヒール履くのやめろよ。デカくてキモイって」
「でかくたってあなたには何の関係もないでしょ。いちいち口出しするのはやめて」

ヒールを履いていると、私は俊介よりも身長が高くなる。
身長が170センチの俊介は、デートの時に私がヒールを履くことをひどく嫌がった。
身長に相当なコンプレックスがあるらしい。

「はいはい、分かりましたよ。つーか俺、実咲に未練あるんだよ。お前ほどの美人ってなかなかいないし。しばらく見ないうちにさらに綺麗になってるしさぁ」

顔を近づけてくる彼の口からタバコのような匂いがして顔をしかめる。
さらに、俊介は私の胸元に視線を落していやらしく微笑んだ。

「細身なのに胸もでかいし、スタイルもいいもんな」
「下品なこと言わないで」
「気が強くて扱いずらいのが難点だけど。まあ、今の俺ならお前とうまく付き合っていけると思うけど?」

沸々と湧き上がってくる怒りを必死になって抑える。
さすがにクライアントの会社の前で揉めるのはどうかと必死に理性を保っていたけど、それももう限界だ。
珍しく言いたいことを我慢したせいで目の下の筋肉が引きつりだした。

「……さっきから上から目線であれこれ言ってくるけど、俊介とまたどうこうなろうとかそんな気なんてさらさらないから安心して」
「強がんなよ。お前って容姿はいいけど、男にモテなかったもんな?そういう可愛げのないところが原因だぞ?」

――なによ。だから、私と付き合っている間に他の子と浮気してたの?
私と付き合っている時のことや、男女の営みをテニスサークルの人たちに面白おかしく話したの?

『実咲って、不感症なんだよ。ヤッてても全然反応なくて面白くねぇんだわ』

俊介がテニスサークルの男性メンバーに話しているところを私は偶然目撃してしまった。
話は私の体の特徴にまで及んだ。
その場にいた全員が下品な声を上げて手を叩いて笑っていた。
今すぐその場に乗り込んで文句を言いたいのに、足がすくんでできなかった。

今もあの日の記憶は、私の心に深い傷を残している。
翌日、私は俊介に別れを告げて、テニスサークルを辞めた。
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