47 / 100
第四章 元カレと再会!?
6
しおりを挟む付き合っていた当時、初めてのデートでお洒落をして待ち合わせ場所へ向かうと俊介はうんざりしたように『なんでスカート履いてこないわけ?マジ、萎える』と吐き捨てた。
理不尽な言い草の俊介にもぐっと気持ちを堪えて彼のおすすめのファミレスに入ると、俊介は店内にいる女性に点数を付け始めた。
『実咲は俺の女で美人だし、150点。あの奥の女は30点。右にいるカップルの女は10点。よくあんなブサイクな女と一緒に飯食えるよな。自分のランクが落ちるじゃん?』
店内にいる女性を次々に指さしてへらへらと笑う俊介を私はすぐに諫めた。
『ねぇ、そういうのやめてよ。笑えない。今度また同じこと言ったら、私帰るよ』
そのの言葉に、俊介は分かりやすく苛立ち、貧乏ゆすりを始めた。
挙句の果てに料理を運んできてくれた従業員に難癖をつけて謝罪を要求したりとやりたい放題だった。
思い出しただけでも胃の奥が痙攣しそうになる。
この男と付き合ってしまったのは、私の人生最大の汚点だ。
「黙ってないでなんとか言えよ」
年を重ねても相手をやりこめようとする高圧的な態度は変わらないらしい。
「だから、忙しいって言ってるでしょ?何度頼まれても無理なものは無理なの」
「ハァ!?なんでだよ。俺と飯食いたいって女なら山ほどいるのに、俺のほうから誘ってやってんだぞ?」
執拗な俊介の誘いにうんざりする。
すると、俊介はズボンのポケットに入れていた手を出すと、突然手に持っていた私のバッグの紐をグイっと引っ張った。
その拍子にバッグが手から離れ、中身が地面に散乱する。
「ちょっと!なにするのよ!」
「ははっ、悪い悪い」
「ふざけないで!!」
へらっと笑うと、俊介はしゃがみこんで荷物を拾い集めるとバッグを私に手渡した。
それを受け取ると、今度は私の手首をギュッと掴んで自分のほうへ引き寄せる。
俊介の肩に私の鎖骨の辺りがぶつかって痛みが走る。
「お前さあ、ヒール履くのやめろよ。デカくてキモイって」
「でかくたってあなたには何の関係もないでしょ。いちいち口出しするのはやめて」
ヒールを履いていると、私は俊介よりも身長が高くなる。
身長が170センチの俊介は、デートの時に私がヒールを履くことをひどく嫌がった。
身長に相当なコンプレックスがあるらしい。
「はいはい、分かりましたよ。つーか俺、実咲に未練あるんだよ。お前ほどの美人ってなかなかいないし。しばらく見ないうちにさらに綺麗になってるしさぁ」
顔を近づけてくる彼の口からタバコのような匂いがして顔をしかめる。
さらに、俊介は私の胸元に視線を落していやらしく微笑んだ。
「細身なのに胸もでかいし、スタイルもいいもんな」
「下品なこと言わないで」
「気が強くて扱いずらいのが難点だけど。まあ、今の俺ならお前とうまく付き合っていけると思うけど?」
沸々と湧き上がってくる怒りを必死になって抑える。
さすがにクライアントの会社の前で揉めるのはどうかと必死に理性を保っていたけど、それももう限界だ。
珍しく言いたいことを我慢したせいで目の下の筋肉が引きつりだした。
「……さっきから上から目線であれこれ言ってくるけど、俊介とまたどうこうなろうとかそんな気なんてさらさらないから安心して」
「強がんなよ。お前って容姿はいいけど、男にモテなかったもんな?そういう可愛げのないところが原因だぞ?」
――なによ。だから、私と付き合っている間に他の子と浮気してたの?
私と付き合っている時のことや、男女の営みをテニスサークルの人たちに面白おかしく話したの?
『実咲って、不感症なんだよ。ヤッてても全然反応なくて面白くねぇんだわ』
俊介がテニスサークルの男性メンバーに話しているところを私は偶然目撃してしまった。
話は私の体の特徴にまで及んだ。
その場にいた全員が下品な声を上げて手を叩いて笑っていた。
今すぐその場に乗り込んで文句を言いたいのに、足がすくんでできなかった。
今もあの日の記憶は、私の心に深い傷を残している。
翌日、私は俊介に別れを告げて、テニスサークルを辞めた。
7
お気に入りに追加
412
あなたにおすすめの小説

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる