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第四章 元カレと再会!?
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しおりを挟む相手に信頼してもらうには、自分が心を開かなくてはならない。
その為に、営業部に入ってからの辛い経験も冬野くんにはすべて話した。
少しずつ時間をかけて彼とコミュニケーションを取っていくと、徐々に心を開いてくれるようになった。
まずは、チームのみんなの士気を上げなくては。
「私ね、今回のコンペを利用することにしたの」
「利用、ですか?」
冬野くんだけでなく、全員の意識が私に向く。
「そう。私の夢は、営業部の部長になること。今まで女性で部長になった人はいないから、私が第一号になりたい。このコンペを成功させて実績をアピールするつもり」
「ていうか、それじゃ白鳥さんだけが得するじゃないですかぁ。あたしには何のメリットもないし」
唇をとがらせて不満を口にする黒川さんを真っすぐ見つめる。
「あなただって周りの人間に自慢できるじゃない。こんな大きな案件のチームメンバーに選ばれてコンペにも勝ったんだって」
「それはそうですけど……」
「あなたが第一営業部にいるのはクライアントへの『接待のため』って言ってる人もいたわ。そんなこと言われて腹が立たない?自分は顔が可愛いだけじゃなくて、仕事もできるって思わせることができたら気持ちがいいでしょ?」
「まあ、そりゃそうですけど」
飴と鞭作戦にまんまとハマった黒川さんはまんざらでもない様子を見せる。
「冬野くんだってそう。クリエイティブに戻りたいなら今はここで踏ん張るしかない。営業からクリエイティブに異動になった人も少なからずいるし」
冬野くんは私の言葉を噛みしめる様に頷く。
「斎藤さんもここで良い仕事をして、あのパワハラクソハゲ部長をぎゃふんっと言わせてやりましょう」
「パワハラクソハゲ……ふふっ……、ごめんなさい……」
込み上げてくる笑いを抑え切れなかったのか、斎藤さんは口元を手で覆って肩を震わせた。
「白鳥さんは勝てると思ってるんですか?」
冬野くんの言葉に大きく頷く。
「うん。やるからには絶対に勝つ」
真っすぐ彼の目を見つめると、冬野くんは「白鳥さんを信じます」と協力する姿勢を見せた。
「じゃあ、あたしも頑張ろっかな」
「私も、部長をぎゃふんっと言わせたいです」
やる気になってくれた黒川さんと斎藤さんに微笑む。
「みんなでこのコンペ、絶対に勝ち取りましょう」
全員の気持ちが一つになった手ごたえがあった。
「――お待たせしました。今、クリエイティブの意見を聞いてきたんですが……」
ミーティングルームに入ってくるなり、伍代さんは不思議そうに私たちの顔を見つめた。
「さっきと雰囲気が違いますね。何かありました?」
不在時のやり取りを知らない彼は、不思議そうに首を傾げたのだった。
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