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第四章 元カレと再会!?
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しおりを挟む「ちょっと!なんかその言い方ムカつくんだけど。営業に来たくなかったっていいたいわけ?」
「そうですよ。来たいわけないじゃないですか。俺だってずっとクリエイティブにいたかったんですから」
冬野くんも負けじと言い返す。
「だったら、辞めればいいんじゃない?」
「どうして黒川さんにそんなこと言われないといけないんですか?そもそも、何の仕事もしない黒川さんにお説教されるのは心外です。さっきだって、伍代さんの顔ばっかり見てましたけど、話聞いてました?」
冬野くんの言葉に黒川さんがバンっとテーブルを両手で叩く。
「ハァ?聞いてたし!ていうか、どうして萌花が責められなくちゃいけないの!?」
「大きい声出さないでもらえます?耳障りなんで」
二人が罵り合うのを、斎藤さんが怯えたように見つめている。
チームはバラバラだ。これでは、うまくいくものもいかない。
伍代さんは慌てるでも仲裁に入るわけでもなく平然と二人のやりとりを眺めていた。
そのとき、ミーティングルームの扉がノックされた。
「すみません、伍代さんいますか?」
そこにいたのは、クリエイティブのトップの人間だった。
「萩野谷さん、お疲れ様です」
「お疲れ様です。ちょっといいですか?」
呼び出しを受け、伍代さんがミーティングルームから出ていくと、全員が一斉に溜息を吐いた。
「あ~あ、伍代さんいっちゃったぁ。寂しいなぁ」
そう呟いてSNSのチェックをし始めた黒川さんを冬野くんが呆れたように見つめる。
「何しに会社来てんだよ」
ぼそっと呟いた一言は黒川さんの耳にも届いたようで、彼女は「はぁ!?」と声を荒げた。
「なによ、今の!あたしより年下のくせに生意気なのよ!!」
顔を真っ赤にして怒る黒川さん。それを無視してしらんぷりを決め込む冬野くん。
そんな二人を斎藤さんはハラハラした様子で見つめている。
私は「ちょっと」と二人の会話に割って入った。
「いい加減にして。今は揉めてる場合じゃないでしょ。違う?」
私の言葉に隣の席の斎藤さんだけが「うんうん」と同意するように首を縦に激しく振った。
「不満があるのも分かるわ。私だって最初はそうだったし」
「でも、このコンペを勝ち取ったって何も変わりませんよ。伍代さんの実績になるっていうだけで。今までだってずっとそうだったじゃないですか」
全てを諦めたような目をしている冬野くん。
クリエイティブから営業に異動になってから、彼も色々苦労してきた。
「分かるわ。私も、伍代さんに全て丸投げされて仕事を押し付けられたって思ってた。でも、違う。なんて言ったらいいのか分からないけど、彼についていきたいと思ったの」
「……白鳥さんが上司を信頼するなんて珍しいですね」
冬野くんが営業に来てから、一番目をかけてきたのは私だ。
他の人間は『クリエイティブをクビになった奴』と噂して、彼に仕事を教えようとしなかった。
どうせすぐに辞めるだろうと高をくくっていたようだ。
当時の冬野くんは、人を寄せ付けないようなオーラを醸し出し、あっという間に部内で孤立した。
でも、彼は自分の噂をする人間には「くだらないこと言ってんな」と食ってかかり、嫌味ばかり言う部長には「うるさいんだよ、ハゲ」と言い返した。
裏表がなく言いたいことを言うサッパリした性格の彼を、私は気に入った。
だから、彼に仕事を教えた。口は悪いし、思ったことはすぐ顔に出すけど根は優しい人間だった。
奈々子も言っていた。『冬野くんは不器用だけど、いい子だよ』と。
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※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
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