【完結】一夜限りのはずが、ハイスぺ御曹司に熱烈求愛されて一途な愛を刻み込まれました

第三章 近付く距離

３

「あの、お礼って……？」
「お風呂、沸かしてあるから。とりあえずシャワーでも浴びて、汗を流してすっきりしてきなよ」
「それ、どういう意味です？」

まさかまた私を抱こうとしているんじゃ……？
訝し気に見つめると、彼は私を安心させるようにポンッと頭を優しく叩いた。

「大丈夫。変なことはしないよ」

ほんの少しだけ身構えたものの、彼はタオルや洗面用具を私に手渡すと、さっさとリビングのほうへ消えていった。
確かにお風呂に入らずに眠ってしまったせいで、体のあちこちが気持ち悪い。
彼の意図が掴めず困惑しながらも、教えてもらったバスルームへ向かい、お風呂に浸かった。

脱衣所も浴室も広く、バスタブは両足を伸ばしても余裕があった。
入浴剤を入れてくれたのか浴室内には甘いバラの香りが漂い、ここが彼の家だということも忘れそうなほどリラックスしてしまう。
まるで高級ホテルにお泊りした気分だ。

「はぁぁぁ、極楽ぅぅ」

野太い声がバスルームに響き、慌てて口を覆う。
私ってば、いくらなんでもくつろぎすぎでしょ！

自分を戒めて風呂から上がった私は、脱衣所の鏡に映る自分の姿を凝視した。
太ももにはいくつもの赤い印が浮かび上がっている。
昨晩、彼がここに舌を滑らせて吸い上げたのだ。
そして……。
再び昨晩の熱が蘇りそうになり、慌ててルームウエアに着替える。

普段から化粧品などの類を一式持ち歩いていたお陰でメイクもできた。
一通りの身だしなみを整えてバスルームを出ると、私は長い廊下を歩きリビングへ向かう。

「この家、何部屋あるの……？」

目を白黒させながらリビングの扉を開けると、呆気にとられる。
だだっ広いリビングの床は総代理石で、天井には見たこともない豪華な照明器具が吊るされている。

１００インチ以上ありそうな規格外に大きな薄型テレビの前にはふわふわの淡いベージュ色の絨毯がひかれている。
部屋にあるソファも磨きあげられたテーブルも、見るからに高価そうだった。