26 / 100
第二章 甘すぎる一夜の過ち
3
しおりを挟む
「もちろん、嫌なら遠慮せず言って。無理矢理とか絶対嫌だから」
「選択肢は私にあると?」
「うん。だけど、責任は俺にあるよ。だって白鳥は酔っぱらってるし。そんな白鳥に手を出そうとしてるのは俺だから」
こんな状況なのに、彼は冷静に私に逃げ道をつくってくれているらしい。
……私はまだ酔っぱらっているんだろうか。
もう二十八歳。ワンナイトの経験が一度や二度あったっていいじゃないかと彼に抱かれる方向に思考が舵を取っている。
けれど、頭の隅で同じ職場の上司とそんな関係になってはいけないと警告音が鳴り響く。
「どうする?」
熱っぽい双眸に射貫かれ、耳元で甘美に囁かれて私は陥落した。
この男に抱かれてみたいという欲望が沸き上がってきたのだ。
「じゃあ、試しましょうか」
負けず嫌いの私が挑発的に言うと、彼はふっと笑ってソファから降りると私の体に腕を回して軽々と抱き上げた。
「軽いな。もう少しご飯食べたほうがいいよ」
「えっ、ちょっ……」
「ベッドに行こう。ここじゃゆっくりできないから」
お姫様抱っこなんてされたのは初めてで目を白黒させる。
そんな私なんてお構いなしにずんずんと廊下を進み、奥の寝室の扉を開く。
真っ暗な部屋の中を進み、ゆっくりとベッドに下ろされた。
ベッドサイドの寝台のライトを点けると、枕元が淡い暖色の光で照らし出される。
寝転んだままの私の上にまたがると、彼はネクタイを緩めて腕時計を外した。
恐る恐る彼の表情を盗み見る。
こういうことに慣れているんだろうか。彼は冷静さを一切欠いていない。
「――実咲」
唐突に名前を呼ばれて目を丸くした瞬間、一気に距離を詰められて唇を塞がれた。
やわらかな唇の感触に心臓がトクンッと音を立てた。
ついばむような優しいキスの合間に、髪を撫でつけられる。
それを繰り返すと、唇が離れていく。
もう終わりなのかと彼を見上げると、「可愛い」と囁かれて熱を帯びた頬にキスをする。
その唇が今度は耳朶に触れた。耳殻を舌でなぞられぶるりと全身が震えた。
「選択肢は私にあると?」
「うん。だけど、責任は俺にあるよ。だって白鳥は酔っぱらってるし。そんな白鳥に手を出そうとしてるのは俺だから」
こんな状況なのに、彼は冷静に私に逃げ道をつくってくれているらしい。
……私はまだ酔っぱらっているんだろうか。
もう二十八歳。ワンナイトの経験が一度や二度あったっていいじゃないかと彼に抱かれる方向に思考が舵を取っている。
けれど、頭の隅で同じ職場の上司とそんな関係になってはいけないと警告音が鳴り響く。
「どうする?」
熱っぽい双眸に射貫かれ、耳元で甘美に囁かれて私は陥落した。
この男に抱かれてみたいという欲望が沸き上がってきたのだ。
「じゃあ、試しましょうか」
負けず嫌いの私が挑発的に言うと、彼はふっと笑ってソファから降りると私の体に腕を回して軽々と抱き上げた。
「軽いな。もう少しご飯食べたほうがいいよ」
「えっ、ちょっ……」
「ベッドに行こう。ここじゃゆっくりできないから」
お姫様抱っこなんてされたのは初めてで目を白黒させる。
そんな私なんてお構いなしにずんずんと廊下を進み、奥の寝室の扉を開く。
真っ暗な部屋の中を進み、ゆっくりとベッドに下ろされた。
ベッドサイドの寝台のライトを点けると、枕元が淡い暖色の光で照らし出される。
寝転んだままの私の上にまたがると、彼はネクタイを緩めて腕時計を外した。
恐る恐る彼の表情を盗み見る。
こういうことに慣れているんだろうか。彼は冷静さを一切欠いていない。
「――実咲」
唐突に名前を呼ばれて目を丸くした瞬間、一気に距離を詰められて唇を塞がれた。
やわらかな唇の感触に心臓がトクンッと音を立てた。
ついばむような優しいキスの合間に、髪を撫でつけられる。
それを繰り返すと、唇が離れていく。
もう終わりなのかと彼を見上げると、「可愛い」と囁かれて熱を帯びた頬にキスをする。
その唇が今度は耳朶に触れた。耳殻を舌でなぞられぶるりと全身が震えた。
7
お気に入りに追加
366
あなたにおすすめの小説
セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】
remo
恋愛
橘 あおい、30歳目前。
干からびた生活が長すぎて、化石になりそう。このまま一生1人で生きていくのかな。
と思っていたら、
初めての相手に再会した。
柚木 紘弥。
忘れられない、初めての1度だけの彼。
【完結】ありがとうございました‼
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【完結】【R18】男色疑惑のある公爵様の契約妻となりましたが、気がついたら愛されているんですけれど!?
夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
「俺と結婚してくれたら、衣食住完全補償。なんだったら、キミの実家に支援させてもらうよ」
「え、じゃあ結婚します!」
メラーズ王国に住まう子爵令嬢マーガレットは悩んでいた。
というのも、元々借金まみれだった家の財政状況がさらに悪化し、ついには没落か夜逃げかという二択を迫られていたのだ。
そんな中、父に「頼むからいい男を捕まえてこい!」と送り出された舞踏会にて、マーガレットは王国の二大公爵家の一つオルブルヒ家の当主クローヴィスと出逢う。
彼はマーガレットの話を聞くと、何を思ったのか「俺と契約結婚しない?」と言ってくる。
しかし、マーガレットはためらう。何故ならば……彼には男色家だといううわさがあったのだ。つまり、形だけの結婚になるのは目に見えている。
そう思ったものの、彼が提示してきた条件にマーガレットは飛びついた。
そして、マーガレットはクローヴィスの(契約)妻となった。
男色家疑惑のある自由気ままな公爵様×貧乏性で現金な子爵令嬢。
二人がなんやかんやありながらも両想いになる勘違い話。
◆hotランキング 10位ありがとうございます……!
――
◆掲載先→アルファポリス、ムーンライトノベルズ、エブリスタ
性欲の強すぎるヤクザに捕まった話
古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。
どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。
「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」
「たまには惣菜パンも悪くねぇ」
……嘘でしょ。
2019/11/4 33話+2話で本編完結
2021/1/15 書籍出版されました
2021/1/22 続き頑張ります
半分くらいR18な話なので予告はしません。
強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。
誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。
当然の事ながら、この話はフィクションです。
若妻シリーズ
笹椰かな
恋愛
とある事情により中年男性・飛龍(ひりゅう)の妻となった18歳の愛実(めぐみ)。
気の進まない結婚だったが、優しく接してくれる夫に愛実の気持ちは傾いていく。これはそんな二人の夜(または昼)の営みの話。
乳首責め/クリ責め/潮吹き
※表紙の作成/かんたん表紙メーカー様
※使用画像/SplitShire様
クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった
山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』
色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
【R18】利害一致のお飾り婚だったので初夜をすっぽかしたら大変なことになった
春瀬湖子
恋愛
絵に描いたような美形一家の三女として生まれたリネアだったが、残念ながらちょっと地味。
本人としては何も気にしていないものの、美しすぎる姉弟が目立ちすぎていたせいで地味なリネアにも結婚の申込みが殺到……したと思いきや会えばお断りの嵐。
「もう誰でもいいから貰ってよぉ~!!」
なんてやさぐれていたある日、彼女のもとへ届いたのは幼い頃少しだけ遊んだことのあるロベルトからの結婚申込み!?
本当の私を知っているのに申込むならお飾りの政略結婚だわ! なんて思い込み初夜をすっぽかしたヒロインと、初恋をやっと実らせたつもりでいたのにすっぽかされたヒーローの溺愛がはじまって欲しいラブコメです。
【2023.11.28追記】
その後の二人のちょっとしたSSを番外編として追加しました!
※他サイトにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる