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第二章 甘すぎる一夜の過ち

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「もちろん、嫌なら遠慮せず言って。無理矢理とか絶対嫌だから」
「選択肢は私にあると?」
「うん。だけど、責任は俺にあるよ。だって白鳥は酔っぱらってるし。そんな白鳥に手を出そうとしてるのは俺だから」

こんな状況なのに、彼は冷静に私に逃げ道をつくってくれているらしい。
……私はまだ酔っぱらっているんだろうか。
もう二十八歳。ワンナイトの経験が一度や二度あったっていいじゃないかと彼に抱かれる方向に思考が舵を取っている。
けれど、頭の隅で同じ職場の上司とそんな関係になってはいけないと警告音が鳴り響く。

「どうする?」

熱っぽい双眸に射貫かれ、耳元で甘美に囁かれて私は陥落した。
この男に抱かれてみたいという欲望が沸き上がってきたのだ。

「じゃあ、試しましょうか」

負けず嫌いの私が挑発的に言うと、彼はふっと笑ってソファから降りると私の体に腕を回して軽々と抱き上げた。

「軽いな。もう少しご飯食べたほうがいいよ」
「えっ、ちょっ……」
「ベッドに行こう。ここじゃゆっくりできないから」

お姫様抱っこなんてされたのは初めてで目を白黒させる。
そんな私なんてお構いなしにずんずんと廊下を進み、奥の寝室の扉を開く。
真っ暗な部屋の中を進み、ゆっくりとベッドに下ろされた。
ベッドサイドの寝台のライトを点けると、枕元が淡い暖色の光で照らし出される。

寝転んだままの私の上にまたがると、彼はネクタイを緩めて腕時計を外した。
恐る恐る彼の表情を盗み見る。
こういうことに慣れているんだろうか。彼は冷静さを一切欠いていない。

「――実咲」

唐突に名前を呼ばれて目を丸くした瞬間、一気に距離を詰められて唇を塞がれた。
やわらかな唇の感触に心臓がトクンッと音を立てた。
ついばむような優しいキスの合間に、髪を撫でつけられる。
それを繰り返すと、唇が離れていく。

もう終わりなのかと彼を見上げると、「可愛い」と囁かれて熱を帯びた頬にキスをする。
その唇が今度は耳朶に触れた。耳殻を舌でなぞられぶるりと全身が震えた。

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