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第一章 謎のイケメン御曹司の登場
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「そうなんです。私……ずーっと独身で相手もいないので、毎日寂しいんです。今日も帰ったら家で寂しくお酒を飲むことしかできなくて……」
ほんの少し芝居がかっていたが、上出来だった。
心の声などお首にも出さず、困ったように眉をハの字にして訴えかけるような目を向けると、営業部長が肉に埋もれた小さな目を見開いた。
「それは可哀そうだ。実は今日、俺と宣伝部長で一緒に呑もうって話になっていたんだ。どうせだし一緒に呑むか?」
「いいんですか?じゃあ私たちもご一緒させて頂きます。ね、伍代さん?」
最初から彼を巻き込むことは決めていた。
オリエンではしっかりJJTの求めるビジョンも掴めたし、今晩の会食でさらに情報を聞き出せるチャンスだ。
とにかく私たちには時間がない。ならば、他社より多くの情報を集めるしかない。
とはいえ、私一人で親父二人の面倒をみるなんて、死んでも御免だった。
「ええ。こちらで良さそうな店を予約しておきます」
彼はいたって穏やかな笑顔を浮かべて答えた。
ミーティングルームを出て、エレベーターに揃って乗り込む。
「ああいうこと、よくあるの?」
伍代さんは険しい表情を浮かべて尋ねた。
「ああいうの、ですか?」
「あの発言はコンプライアンス違反だよ」
「さっきのセクハラ発言ですか?あんなの慣れっこですし、会食の機会をゲットできたのでよしとしましょう」
すると、「それは違う」と彼が強い口調で言った。
「あんなことに慣れたらダメだ」
押し殺した声ながらその怒りは相当のようだ。ギリギリと奥歯を噛みしめる彼の意外な姿に、思わずふっと笑みが漏れた。
「ありがとうございます。そんなに怒ってくれるなんて思いませんでした。ああいう場面では女の武器を使えって部長には口酸っぱく言われてきたので」
彼が唖然とする。
「なんだって……?」
「お前は女だし、そこそこ美人なんだからそれを利用しろって、行きたくもない接待に駆り出されたことだって数えきれないほどありますよ」
「篠田部長か?あの人は君にそんなことを……」
信じられないというように顔を顰めて眉間に皺を寄せる伍代さん。
「ええ。それに、そういうのも込みで私は伍代さんに協力すると言ったので」
「俺はこんな協力頼んでない。今日の会食は俺がいるからいいとしても、他の会食で同じような手は使わないでくれ。なにかがあってからでは遅い」
「何もありませんよ。私に手を出そうとする男なんていませんし」
「まさか。魅力がありすぎて男の方が奥手になってるだけだ」
彼はおでこに手を当てて、悩まし気に溜息を吐く。
その姿をまじまじと見つめる。
普段は飄々としていて余裕を失くしている所なんて見たことがないのに、今の彼は違う。
なぜか心底参ったというように狼狽していた。
ほんの少し芝居がかっていたが、上出来だった。
心の声などお首にも出さず、困ったように眉をハの字にして訴えかけるような目を向けると、営業部長が肉に埋もれた小さな目を見開いた。
「それは可哀そうだ。実は今日、俺と宣伝部長で一緒に呑もうって話になっていたんだ。どうせだし一緒に呑むか?」
「いいんですか?じゃあ私たちもご一緒させて頂きます。ね、伍代さん?」
最初から彼を巻き込むことは決めていた。
オリエンではしっかりJJTの求めるビジョンも掴めたし、今晩の会食でさらに情報を聞き出せるチャンスだ。
とにかく私たちには時間がない。ならば、他社より多くの情報を集めるしかない。
とはいえ、私一人で親父二人の面倒をみるなんて、死んでも御免だった。
「ええ。こちらで良さそうな店を予約しておきます」
彼はいたって穏やかな笑顔を浮かべて答えた。
ミーティングルームを出て、エレベーターに揃って乗り込む。
「ああいうこと、よくあるの?」
伍代さんは険しい表情を浮かべて尋ねた。
「ああいうの、ですか?」
「あの発言はコンプライアンス違反だよ」
「さっきのセクハラ発言ですか?あんなの慣れっこですし、会食の機会をゲットできたのでよしとしましょう」
すると、「それは違う」と彼が強い口調で言った。
「あんなことに慣れたらダメだ」
押し殺した声ながらその怒りは相当のようだ。ギリギリと奥歯を噛みしめる彼の意外な姿に、思わずふっと笑みが漏れた。
「ありがとうございます。そんなに怒ってくれるなんて思いませんでした。ああいう場面では女の武器を使えって部長には口酸っぱく言われてきたので」
彼が唖然とする。
「なんだって……?」
「お前は女だし、そこそこ美人なんだからそれを利用しろって、行きたくもない接待に駆り出されたことだって数えきれないほどありますよ」
「篠田部長か?あの人は君にそんなことを……」
信じられないというように顔を顰めて眉間に皺を寄せる伍代さん。
「ええ。それに、そういうのも込みで私は伍代さんに協力すると言ったので」
「俺はこんな協力頼んでない。今日の会食は俺がいるからいいとしても、他の会食で同じような手は使わないでくれ。なにかがあってからでは遅い」
「何もありませんよ。私に手を出そうとする男なんていませんし」
「まさか。魅力がありすぎて男の方が奥手になってるだけだ」
彼はおでこに手を当てて、悩まし気に溜息を吐く。
その姿をまじまじと見つめる。
普段は飄々としていて余裕を失くしている所なんて見たことがないのに、今の彼は違う。
なぜか心底参ったというように狼狽していた。
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