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第一章 謎のイケメン御曹司の登場
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時計の針が午後三時を回った。
一日中パソコン作業に追われていたせいで首も肩もガチガチに凝り固まってしまっている。
コーヒーでも飲んで少し休憩しようとフロアの中央にあるマグネットスペースへ向かう。
マグネットスペースとは、オフィス内で自然と人が集まる場所のことだ。いくつかのテーブル席とカウンター席がある。
ふらりと立ち寄り、普段顔を合わせる機会の少ない人とも気軽に会話を楽しむために設けられたらしい。
ウッド調の床と壁面がさながらカフェを連想させるその場所には、無料のコーヒーなどのドリンクと自由に食べられるお菓子が置かれている。
そこにはすでに先客がいた。
「ホント斎藤おばさんウザい。伍代さんに褒められてニコニコしちゃってさ。バッカみたい」
同期の人間に愚痴っている黒川さん。でも、背後にいる私の存在には全く気付いていない。
そもそもこのマグネットスペースには壁がない。
数メートル後ろでは書類を持って慌ただしく歩いている人やPC作業をしている人が大勢いる。
誰かに話を聞かれていてもおかしくない場所で堂々と悪口を言うなんて、頭の回路はもちろんネジが何本も吹っ飛んでいるとしか思えない。
「パートなんてなんの役にも立たないじゃん?見た目もなんか暗くてダサいしマジ無理な存在なんだけど」
すると、黒川さんの向かいに座っている子が私の存在に気付き、青ざめた。
「ちょっ、萌花、もうやめなって」
「いいよね、柚子は。あたしと違ってゆるーい第三営業部だし。同期の中で第一営業部はあたしだけだし、精鋭揃いだから鼻は高いんだけど、悪女とおばさんと同じフロアで仕事すんのとかホント無理。あ~、第三営業部に行きたいなぁ」
私は彼女の後ろに立ちふさがると、腕を組んで見下ろした。
「ごめんなさいね、同じフロアで仕事してて」
「えっ……」
振り返った黒川さんに微笑むと、彼女は目の下を小刻みに震わせた。
「や、やだなぁ~!白鳥さんってば盗み聞きだなんて」
「あれだけ大きな声でしゃべってれば誰でも聞こえるわ。誰が聞いていてもおかしくないこんな場所でよく人の悪口いえるわね」
「誤解ですよぉ~!悪口なんて言ってませんから~」
黒川さんの前に座っていた子がそそくさとテーブルの上のスマホを持って立ち上がったところで私は言った。
「確か第三営業部のトップって猪瀬さんだったわね。部に戻ったら、黒川さんが第三営業部行きを希望していたって彼に伝えておいて」
私の言葉に目を白黒させたのは黒川さんだった。
「や、やめてくださいよ!あたし第一営業部がいいんですよ!第三なんて大したことないちっちゃなウェブ媒体しか任せてもらえないし……!」
慌てて立ち上がり顔を真っ赤にして抗議する。
「なにそれ……。萌花……あたしたちのことそんな風に思ってたんだ……」
場の空気は最悪だった。
黒川さんの同期は怒りに唇を震わせると、私にだけ頭を下げて立ち去った。
一日中パソコン作業に追われていたせいで首も肩もガチガチに凝り固まってしまっている。
コーヒーでも飲んで少し休憩しようとフロアの中央にあるマグネットスペースへ向かう。
マグネットスペースとは、オフィス内で自然と人が集まる場所のことだ。いくつかのテーブル席とカウンター席がある。
ふらりと立ち寄り、普段顔を合わせる機会の少ない人とも気軽に会話を楽しむために設けられたらしい。
ウッド調の床と壁面がさながらカフェを連想させるその場所には、無料のコーヒーなどのドリンクと自由に食べられるお菓子が置かれている。
そこにはすでに先客がいた。
「ホント斎藤おばさんウザい。伍代さんに褒められてニコニコしちゃってさ。バッカみたい」
同期の人間に愚痴っている黒川さん。でも、背後にいる私の存在には全く気付いていない。
そもそもこのマグネットスペースには壁がない。
数メートル後ろでは書類を持って慌ただしく歩いている人やPC作業をしている人が大勢いる。
誰かに話を聞かれていてもおかしくない場所で堂々と悪口を言うなんて、頭の回路はもちろんネジが何本も吹っ飛んでいるとしか思えない。
「パートなんてなんの役にも立たないじゃん?見た目もなんか暗くてダサいしマジ無理な存在なんだけど」
すると、黒川さんの向かいに座っている子が私の存在に気付き、青ざめた。
「ちょっ、萌花、もうやめなって」
「いいよね、柚子は。あたしと違ってゆるーい第三営業部だし。同期の中で第一営業部はあたしだけだし、精鋭揃いだから鼻は高いんだけど、悪女とおばさんと同じフロアで仕事すんのとかホント無理。あ~、第三営業部に行きたいなぁ」
私は彼女の後ろに立ちふさがると、腕を組んで見下ろした。
「ごめんなさいね、同じフロアで仕事してて」
「えっ……」
振り返った黒川さんに微笑むと、彼女は目の下を小刻みに震わせた。
「や、やだなぁ~!白鳥さんってば盗み聞きだなんて」
「あれだけ大きな声でしゃべってれば誰でも聞こえるわ。誰が聞いていてもおかしくないこんな場所でよく人の悪口いえるわね」
「誤解ですよぉ~!悪口なんて言ってませんから~」
黒川さんの前に座っていた子がそそくさとテーブルの上のスマホを持って立ち上がったところで私は言った。
「確か第三営業部のトップって猪瀬さんだったわね。部に戻ったら、黒川さんが第三営業部行きを希望していたって彼に伝えておいて」
私の言葉に目を白黒させたのは黒川さんだった。
「や、やめてくださいよ!あたし第一営業部がいいんですよ!第三なんて大したことないちっちゃなウェブ媒体しか任せてもらえないし……!」
慌てて立ち上がり顔を真っ赤にして抗議する。
「なにそれ……。萌花……あたしたちのことそんな風に思ってたんだ……」
場の空気は最悪だった。
黒川さんの同期は怒りに唇を震わせると、私にだけ頭を下げて立ち去った。
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