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第一章 謎のイケメン御曹司の登場
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伍代さんが営業部にやってきてから一週間。
信じられないことに、この短期間で仕事の質が格段に上がった。
というのも彼が局長になってから、社員のモチベーションがアップしているのも要因のひとつだろう。
イギリスのお土産だというオシャレで美味しい洋菓子で女性陣を取り込み、部長のパワハラに辟易していた男性陣に次々とフォローを入れ、コミュニケーションを図った。
やる気はあるのに毎回売り上げ最下位の人間がWEBの低コストの案件を取ってきたときにも、『頑張りましたね。これを気にもっと大きな仕事に繋げましょう』と声をかけて労った。
それを見ていた人は、自分も頑張ろうとモチベーションを上げる。
その相乗効果なのか、部内の雰囲気もすこぶる良い。
「どうしようかな……」
自分のデスクで受け持っているクライアントの企画書と睨めっこしていると、彼は私の隣の席の斎藤さんに声をかけた。
「斎藤さん、この間の『旬デリカ』のフリーペーパーすごく良かったです。クライアントも喜んでくれて、書店売りの料理雑誌として売り込んでもいいんじゃないかって提案してみようと思うんですが、どう思いますか?」
「えっ……本当ですか?」
普段、小さな声でボソボソとしゃべる斎藤さんにしては珍しい声色だった。
私はキーボードを打つ手を止めて、思わず隣の席の彼女に目を向けた。
斎藤さんは昨年、営業部にやってきた。
地元の大学を出た後、小さな広告代理店に勤務していたらしい。今は時短パートとして働いている。
四十代半ばの彼女は、幼稚園に通う女の子と男の子二人のママだ。
長い髪を一つに束ねている。白髪が黒と白のコントラストになっているため、「ゴマ塩」と馬鹿に知る人もいる。
小太りで背中を丸めているせいで、年齢よりも老けて見えてしまうからもったいない。
営業部には正社員しかおらず、時短パートは珍しい。
そのためか、重要な案件のクライアントとの交渉や企画に彼女が携わることはなかった。
特に、部長は彼女の存在を疎ましく思っているらしく『斎藤さんって、給料泥棒だよね。椅子に座ってるだけでなんもしないんだから』とネチネチと本人を前にして文句を言った。
そんなことを言うならば斎藤さんに仕事を振ればいいのに、あえて意地悪をして斎藤さんには何もさせない。
彼女が先回りして何かをしようとすると『それはやらないでいい!』と強く言う。
隣の席なのもあり、斎藤さんの状況を私は誰よりもよく知っていた。
伍代さんの言う『旬デリカ』は、元々私の仕事だった。
けれど、クライアントから依頼を受けていた私はその案件をあえて斎藤さんに振ったのだ。
もちろん勝手なことをした私は部長から散々文句を言われた。
けれど、『もしなにかあればその責任は私が負います』と部長を渋々納得させた。
斎藤さんは自分がパートであるということに負い目を感じているのか、積極的に仕事を振って欲しいと頼んでくることはない。
でも、『旬デリカ』の企画案を頼むと目を輝かせて承諾してくれた。
頼んだ仕事はきちんと正確にこなしてくれる。そして、そのクオリティが高いことを私は知っている。
信じられないことに、この短期間で仕事の質が格段に上がった。
というのも彼が局長になってから、社員のモチベーションがアップしているのも要因のひとつだろう。
イギリスのお土産だというオシャレで美味しい洋菓子で女性陣を取り込み、部長のパワハラに辟易していた男性陣に次々とフォローを入れ、コミュニケーションを図った。
やる気はあるのに毎回売り上げ最下位の人間がWEBの低コストの案件を取ってきたときにも、『頑張りましたね。これを気にもっと大きな仕事に繋げましょう』と声をかけて労った。
それを見ていた人は、自分も頑張ろうとモチベーションを上げる。
その相乗効果なのか、部内の雰囲気もすこぶる良い。
「どうしようかな……」
自分のデスクで受け持っているクライアントの企画書と睨めっこしていると、彼は私の隣の席の斎藤さんに声をかけた。
「斎藤さん、この間の『旬デリカ』のフリーペーパーすごく良かったです。クライアントも喜んでくれて、書店売りの料理雑誌として売り込んでもいいんじゃないかって提案してみようと思うんですが、どう思いますか?」
「えっ……本当ですか?」
普段、小さな声でボソボソとしゃべる斎藤さんにしては珍しい声色だった。
私はキーボードを打つ手を止めて、思わず隣の席の彼女に目を向けた。
斎藤さんは昨年、営業部にやってきた。
地元の大学を出た後、小さな広告代理店に勤務していたらしい。今は時短パートとして働いている。
四十代半ばの彼女は、幼稚園に通う女の子と男の子二人のママだ。
長い髪を一つに束ねている。白髪が黒と白のコントラストになっているため、「ゴマ塩」と馬鹿に知る人もいる。
小太りで背中を丸めているせいで、年齢よりも老けて見えてしまうからもったいない。
営業部には正社員しかおらず、時短パートは珍しい。
そのためか、重要な案件のクライアントとの交渉や企画に彼女が携わることはなかった。
特に、部長は彼女の存在を疎ましく思っているらしく『斎藤さんって、給料泥棒だよね。椅子に座ってるだけでなんもしないんだから』とネチネチと本人を前にして文句を言った。
そんなことを言うならば斎藤さんに仕事を振ればいいのに、あえて意地悪をして斎藤さんには何もさせない。
彼女が先回りして何かをしようとすると『それはやらないでいい!』と強く言う。
隣の席なのもあり、斎藤さんの状況を私は誰よりもよく知っていた。
伍代さんの言う『旬デリカ』は、元々私の仕事だった。
けれど、クライアントから依頼を受けていた私はその案件をあえて斎藤さんに振ったのだ。
もちろん勝手なことをした私は部長から散々文句を言われた。
けれど、『もしなにかあればその責任は私が負います』と部長を渋々納得させた。
斎藤さんは自分がパートであるということに負い目を感じているのか、積極的に仕事を振って欲しいと頼んでくることはない。
でも、『旬デリカ』の企画案を頼むと目を輝かせて承諾してくれた。
頼んだ仕事はきちんと正確にこなしてくれる。そして、そのクオリティが高いことを私は知っている。
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