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第一章 謎のイケメン御曹司の登場

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「伍代さん、話ってなんですか?仕事のことでしょうか?」
「仕事の話じゃないって言ったら?」

伍代さんは右手をテーブルに突いて、私の顔を覗き込む。

「キャッ、伍代さんってば大胆!」

奈々子は両頬に手のひらを当ててうっとりとした表情で彼を見つめる。

「だとしたら、お断りします」
「プライベートな会話はしたくないってこと?」
「ええ。私は根に持つタイプの女なので、今朝のことは一生忘れないでしょうね」
「ごめん、あれはわざとじゃないんだ。君に会えるのが楽しみすぎて、エイプリルフールだってことをすっかり忘れてたんだ」

私は大きく息を吸い込んで、怒りと憎しみを勢いよく溜息に込めて吐き出した。

「この際だから、ハッキリ言わせていただきます。私、伍代さんのように人を小馬鹿にする人間がこの世で一番嫌いなんです」

キッパリと伍代さんの目を見て言う。
初日に局長を敵に回すのは得策ではないと分かっていたものの、言わずにはいられなかった。
けれど、彼は動じることなくスッと身を乗り出して私の耳元に唇を寄せた。

「でも、俺はこの世で君が一番好きだよ」

驚きに目を見開く。
耳元に感じる彼の熱い吐息に、心臓がドクンっと大きな音を立てた。

「なっ」

思わず肩をビクッと震わせて身を固くすると、彼はスッと体を離した。

「――そのことについて相談があるんだけど、いい?」

私たちのやり取りを興味津々といった様子で眺めていた周りの席の人々は、皆一様に驚きの表情を浮かべている。
けれど唯一、私の目の前の席に座っていた奈々子だけは反応が違う。

最近乙女ゲームにハマっているという彼女は「なにこのシチュ。SSRじゃん。キュン死する!」と悶絶している。

「……分かりました」

彼の意図は分からない。
けれど、ここで会話を続ければ、またあらぬことを噂されかねない。
トレイを持って立ち上がった私の前後左右から、女性たちの突き刺さるような視線が向けられているのに気付き、私はげんなりとした気持ちで溜息を吐いた。
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