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第一章 謎のイケメン御曹司の登場
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「それを黒川さんに言ってあげればいいのに。あなたが心配だっただけなのよ、って。そしたら、黒川さんが変な噂流したりすることもないんじゃないの?」
「まあ、確かにね。でも、私は部内で悪女だって言われて、嫌われてるから」
肩を竦めると、奈々子が真っすぐ私を見つめる。
「あたしが男だったら、絶対に実咲を好きになるのになぁ」
「そう言ってくれるのは奈々子だけよ。ホント、好き」
「ふふっ、あたしも。両想いじゃん」
奈々子がニヤニヤ笑う。
「それに、実咲って常に冷静沈着で仕事もできて凛としていて落ち着いているし、スタイル抜群でなおかつ美人。最高じゃない」
「お褒めの言葉ありがとう。ただ、人生で一度くらいは可愛いって言われてみたいもんよ」
168cmという女にしては高い身長に好みのヒールを合わせると、私の身長は日本人男性の平均身長を軽く超える。
ハッキリとした目鼻立ちで美人といわれることはあっても可愛いと言われたことは一度もない。
背中まであるストレートの髪を一つに束ね、パーソナル診断で似合うと言われたレッド系の口紅をつけている。
何事にも白黒はっきりさせることを好む性格で、言いたいことを言い続けてきたせいで私はいつからか『悪女』との呼び名がついてしまった。
自分でもサバサバした性格だと自負しているけど、正直に言えば悪女と呼ばれるほど嫌な人間だとは思っていない。
「あっ、そうそう。ちょっと小耳に挟んだんだけど、営業に入った局長って超ハイスペックのイケメンって本当?」
社食とは思えないほどクオリティの高いほうれん草の味噌汁をすすっていると、奈々子が唐突に尋ねた。
危うく味噌汁を吹きそうになり、慌ててお椀から口を離す。
「な、なによ急に」
「もー、汚いなぁ。ほらっ、これ使って」
「ありがとう」
ポケットティッシュを手渡され、慌てて口元を拭う。
「どんなに大きな会社から誘われても絶対に首を振らなかったらしいのに、どうしてわざわざうちに来たんだろうね」
「知らない。興味ないし」
彼のことを考えると、胃の奥がシクシクと痛んで叫びだしてしまいそうになる。
大勢の人の前で恥をかかされたのだ。
自分でもよくあの場で引っぱたくことなく我慢したと褒めてあげたいぐらいだ。
「興味ぐらい持ちなさいよ。もう28歳なんだから。アンタほどのスペックの子に彼氏がいないなんて信じられない。あ~、もったいない」
「いいのよ。今の私は仕事が彼氏みたいなものだから。それに、結婚したくても相手がいないんじゃ話にならないわ」
「やだやだ、社畜に成り下がってるわ、この子」
大げさに嘆きながらお弁当をバッグにしまい込む奈々子。
なんだかんだ言いながらも、私のことをいつも心配してくれている。
「ごちそうさまでした」
食事を終えて箸を置き、パチンっと両手を合わせたとき、周りにいた人間がざわつき始めた。
「まあ、確かにね。でも、私は部内で悪女だって言われて、嫌われてるから」
肩を竦めると、奈々子が真っすぐ私を見つめる。
「あたしが男だったら、絶対に実咲を好きになるのになぁ」
「そう言ってくれるのは奈々子だけよ。ホント、好き」
「ふふっ、あたしも。両想いじゃん」
奈々子がニヤニヤ笑う。
「それに、実咲って常に冷静沈着で仕事もできて凛としていて落ち着いているし、スタイル抜群でなおかつ美人。最高じゃない」
「お褒めの言葉ありがとう。ただ、人生で一度くらいは可愛いって言われてみたいもんよ」
168cmという女にしては高い身長に好みのヒールを合わせると、私の身長は日本人男性の平均身長を軽く超える。
ハッキリとした目鼻立ちで美人といわれることはあっても可愛いと言われたことは一度もない。
背中まであるストレートの髪を一つに束ね、パーソナル診断で似合うと言われたレッド系の口紅をつけている。
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自分でもサバサバした性格だと自負しているけど、正直に言えば悪女と呼ばれるほど嫌な人間だとは思っていない。
「あっ、そうそう。ちょっと小耳に挟んだんだけど、営業に入った局長って超ハイスペックのイケメンって本当?」
社食とは思えないほどクオリティの高いほうれん草の味噌汁をすすっていると、奈々子が唐突に尋ねた。
危うく味噌汁を吹きそうになり、慌ててお椀から口を離す。
「な、なによ急に」
「もー、汚いなぁ。ほらっ、これ使って」
「ありがとう」
ポケットティッシュを手渡され、慌てて口元を拭う。
「どんなに大きな会社から誘われても絶対に首を振らなかったらしいのに、どうしてわざわざうちに来たんだろうね」
「知らない。興味ないし」
彼のことを考えると、胃の奥がシクシクと痛んで叫びだしてしまいそうになる。
大勢の人の前で恥をかかされたのだ。
自分でもよくあの場で引っぱたくことなく我慢したと褒めてあげたいぐらいだ。
「興味ぐらい持ちなさいよ。もう28歳なんだから。アンタほどのスペックの子に彼氏がいないなんて信じられない。あ~、もったいない」
「いいのよ。今の私は仕事が彼氏みたいなものだから。それに、結婚したくても相手がいないんじゃ話にならないわ」
「やだやだ、社畜に成り下がってるわ、この子」
大げさに嘆きながらお弁当をバッグにしまい込む奈々子。
なんだかんだ言いながらも、私のことをいつも心配してくれている。
「ごちそうさまでした」
食事を終えて箸を置き、パチンっと両手を合わせたとき、周りにいた人間がざわつき始めた。
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