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第一章 謎のイケメン御曹司の登場
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しおりを挟む少しウエーブがかったセンターパートの黒髪は綺麗に整えられている。
涼し気な目元にきれいに通った鼻筋。形の良い薄い唇にシャープな輪郭。
スラリとした体形も相まって、男の色気を感じる。
なんという品の良さだ。一目見ただけで、彼が洗練された男だと分かる。
「初めまして。今日から営業部の局長に就任した伍代智哉です。よろしくお願いします」
凛とした口調で挨拶した彼は盛大な拍手で迎え入れられる。
そのとき、彼の視線はなにかを探すようにフロアの人々の間を彷徨った。
ふいに目が合った。
瞬間、彼はわずかに目を見開いた。
射抜くような強い視線を浴びせられ私はそれに対抗するように彼を見つめ返す。
……どうしてだろう。
不思議なことに既視感がある。どこかで会ったような気がする。
テレビで見る芸能人に似ている人でもいるんだろうか。それとも……。
パッと彼に似ている芸能人は思い浮かばないし、私の勘違いかもしれない。
「すみませーん!ひとついいですか?伍代さんって元々は海外の超大手代理店で働いていたって噂で聞いたんですが、本当ですか?それと、独身ですか?彼女は?」
矢継ぎ早に質問を飛ばす黒川さんは、既に彼をロックオンしたようだ。
「元々はイギリスの広告代理店で働いていました。結婚はしていません。これ以上の質問はプライベートなことなのでお答えできません」
柔らかい口調ながら、伍代さんはハッキリと黒川さんの質問を拒絶した。
その軽いあしらいぶりから、彼が女性に言い寄られているところを容易に想像できた。
「えー……、じゃあ、どうしてうちの会社に来たのか、その理由は聞いてもいいですかぁ?」
伍代の「それは……」という言葉に、全員の意識が向く。
彼は海外の大学を卒業後、イギリスの大手広告代理店に勤務して成績を伸ばした。
若くして積み上げた経験と実績を買われ数多の企業が彼へアプローチをかけたという。
それは日本だけにとどまらなかったという噂を耳にした。
元々どこかの大企業の御曹司だと聞いた。そんな人がどうして……。
すると突然、伍代さんは私のいる方へ目を向けた。
さっきからなぜ私のほうばかり見るんだろう。
訝しく思いながら顔を顰めると、彼は唐突にツカツカと私の隣に歩み寄った。
ポカンッとした表情を浮かべる私や他の社員たちを横目に、伍代さんは満足そうに言う。
「彼女と一緒にいるために、日本に……、この会社で働くことにしました」
「……は?」
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その私が見上げてしまうほど長身の彼は唐突に私の肩を抱き、自分の方へ引き寄せた。
細身だと思っていたのに、鍛えているのかその体躯は意外にもガッシリしている。
フロア内に女性たちのキャーッという悲鳴にも似た黄色い声が響く。
男性職員は彼のあまりに唐突な行動に目の下を引きつらせている。
扱いずらい部長だけでなく、突拍子もないことをする局長まで現れたことに皆一様に戸惑いを隠せない様子だ。
「それなので、男性の皆さん、彼女に手は出さないようにお願いしますね」
にっこりと微笑む顔すら悔しいほど様になる彼の腕を、私は顔色一つ変えずにさっと振り払う。
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