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参の巻 奉仕でござる!
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しおりを挟む「千堂クン?‥」
「‥ユリは城になんて行かせないよ‥」
自分の髪をとかしながら耳にかける動作を繰り返すミツキをユリノはボゥッと見つめ返す
言ってる意味がホントに解らない──
城!!?‥あたし‥‥‥昔、千堂クンと会ったことがあるの!?
必死で何かを考え込むユリノをミツキは優しく抱きしめる
『ねーねー♪ユリ、
ミッチャンのお嫁サンになる!
ユリはミッチャンのものね♪ね!』
『‥‥//‥ホントにっ?
ユリチャン、ボクのこと好き?』
『うん、だいすき!!』
幼いユリノはミツキに満面の笑みを浮かべて答えた
『‥‥ユリチャン‥‥//
じゃあ‥誓いのキスだね‥』
『うん!』
幼い二人はフフ‥と笑いながら見つめ合い可愛いらしい誓いのキスを交わす
『じゃあ、ミッチャンはユリが
おっきくなったらお迎えに来てね!!』
『‥うん‥//
お迎え行くよ‥絶対に…』
夕陽を小さな背中に浴びて幼い二人はもみじのような手をしっかり繋ぎながら家路を歩く
幼い二人はこの日初めて出会い将来の約束を交した
・
あれは父親の豹牙に連れられ山を降りた日のことだった──
『山おりてどこ行くの?』
幼いミツキは父親に尋ねる
『姫がね‥
元気かどうか様子を見に行くんだ‥』
『姫?』
『あぁ、‥魅月…』
『ん?』
『今日のことは誰にも言っちゃっ駄目だよ‥』
『ヒミツ?』
『そぅ‥
秘密だ…
長老や城主様に知れたら大変なことになる‥
わかったね…。』
『‥わかった!』
幼いミツキは父親の言いつけを守るしっかりした子供だった‥
先祖代々、伊賀の者は城主に使え、甲賀の者はその子息子女に使える‥
ミツキの父、豹牙はユリノの母、芙蓉の使いとして幼なじみのように幼い頃から一緒に過ごしてきたのだ‥
そして豹牙もまた、美しい姫、芙蓉に想いを寄せていた‥
ただ、姫と忍びの使い‥
その身分はあまりにも違い過ぎた。
いずれ芙蓉は城主が見定めた男に嫁ぎ決められた人生を歩む──
豹牙はひたすら側で芙蓉を見守るしかなかった‥
ところが‥
なんの因果か登山中、道に迷いこみ華鳥家の敷地に足を踏み入れた浪人中の風間‥ユリノの父と巡り会ってしまった。
・
美しい姫、芙蓉に風間が心を奪われるのは解るが‥
何故だか芙蓉も風間に心を奪われ二人は恋に堕ちてしまった──
平三郎に二人の仲を認めて貰うよう風間は必死に頼みこんだが‥
『我が華鳥家の姫に見合う金品を用意せい!!!』
平三郎の出した条件は厳しく平凡な貧乏浪人生の風間にはとても無理な話し‥
370万石(国家予算なみ)の富を持つお家の姫に見合う金品など、風間が用意出来るはずもない。
風間は泣く泣く諦め山を降りた…
が…
そんな平三郎の猛反対にメラメラと愛の炎を燃やした芙蓉は使いの豹牙に手伝わせ駆け落ちを決意した
豹牙は我が愛する人の思いを叶える為に姫の脱出つを手伝ったのだ‥
深夜に姫の荷物を風間の
6畳間のアパートに運び出し姫を手引きする‥
豹牙は自分の愛する人の幸せを願った
厳しいお家のしがらみから自由になってほしいと‥
城主への‥一族への裏切り行為と解っていて豹牙は行動に出たのだ‥
豹牙は姫が風間と家庭を持った後もちょこちょこと芙蓉の様子を見に来ていた‥
そして、自分の息子よりひとつ下の娘が出来ていたことを知りこの日、ミツキを連れて芙蓉を訪ねたのだった
・
子供達の顔を合わせると父の血を引いたミツキはあっけなくユリノに一目惚れした
当時4歳のユリノと5歳のミツキ‥
目の悪くなり始めでまだ、眼鏡がなくあちこちによくぶつかるユリノの手を引きミツキは公園に向かった‥
ユリノは優しく手を引いてくれるミツキに、にっこり笑いお嫁サン宣言する‥
ミツキはこの時の笑顔を‥
この時の誓いを胸に焼き付けた…
「‥‥ユリ
城になんて絶対に帰さない‥
ユリは俺のものなんだからっ…」
俺はユリを迎えにきた‥
あの日よりも成長し綺麗になったユリを──
城になんか帰したら‥
俺の手に届かなくなってしまう‥
この日をずっと待ち望んでたのに‥
このままユリの存在が知られなければいい──
そう願っていたのに‥
たまたま、勃発してしまったお家騒動‥
でもミツキはこの命令に更々従う気はない‥
ミツキもまた‥
父親の豹牙と同じく城主と一族を裏切ることを覚悟していた。
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