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☆*:.。. oおまけo .。.:*☆

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「あら、お父ちゃん!
ねぇ、苗の花嫁さんすごく可愛いわよね」

「ズズッ…あ、あたりめぇだっ!
なんてったって俺に似てんだからなっ
ドレス着たってべっぴんに決まってらぁ!!」

「……💧」



娘の花嫁姿…

これを目にして涙を浮かべぬ父親が何処に居ようか?傍に行って声を掛けたくてもそれさえもが難しい。

嫁ぐ娘の後ろ姿を見てるだけで胸がいっぱいなのだから…

目頭に涙を溜めてムキになる満作の鼻は鼻水をすすり過ぎたせいで真っ赤に染まっていた。


「苗?準備できたか?」


「あ!兄さん💧」

動けない苗は目線だけを晴樹に向ける。そんな苗に晴樹は目を見開いた。

「──!っ


・・・こ、けし💧?」


「…っ!!💧」


「冗談だよっ

……なんか重そうだな💧」


「転んだら絶対一人じゃ起き上がれないだょ」


花嫁姿の苗を見て晴樹は一瞬、息を飲む。そして苗を怒らしていた💧

「兄ちゃんやっぱカッケーな!」

三つ子達が声を揃え足の先から頭まで晴樹を眺める💧

すっきりと整った額を出し、美形を晒した晴樹は紺色の袴姿がとても様になっていた。

「……兄さんはなんでも似合っていいだね…」

「…//…💧」

口を尖らせ苗は言う



「きっと赤いフンドシに白いタイツを着ても似合うだょ…」

「…なんだそれはっ…」

苗は密かに仕返しをしていた💧


「うわぁ…なえちん

すごい重そう💧」

「…💧」


新婦の控室を覗くなり由美はそう告げる💧

「でも…おめでとう。

結城先輩も…//」

晴樹の袴姿を見て由美は顔を微かに赤くする


…先輩ってやっぱりかっこいい…//💧


下心はどうやっても隠せなかった💧


「みんなもう来てるの?」

「うん。夏目クンがちょっと泣きじゃくってて大変だけど💧」

…泣きじゃくって💧?
だったら欠席すりゃあいいのに💧
って…まさか何かしでかす気じゃ…


夏目の様子を由美から聞いて晴樹は一抹の不安がよぎる。そんな晴樹の耳に苗を呼ぶ奴の声が聞こえてきた

「苗!!

───っ…」

ドアを開き名前を叫んだ夏目の目に花婿姿の晴樹が映った


…くそ…っ

よくも俺の苗を……っ…


そんな思いで夏目は晴樹をキッと睨むとずかずかと苗の傍に歩み寄る

「苗!!」

「あ、大ちゃん💧

今日は来てくれてありがっ…」

「礼なんか言うなよ!」

「…へ💧?」


ムキになって叫ぶ夏目を周りはヒヤヒヤしながら見ている💧




夏目は花嫁姿の苗を見つめ微かに涙を滲ませる


…苗っ…

うぅっ…やっぱめちゃめちゃ可愛いっ…雪ん子みたいだ…

くっっ……



夏目は拳を握り締め涙を堪える

「苗…っ 俺、全然待てるから!!」

「はぃ💧?」


夏目の口からでた言葉に苗と同様、周りは疑問符を浮かべている


「苗!!…っ

バツイチなんて俺全然気にしなっ…ぶっ…」


興奮して言ってはならない言葉を放った夏目の口を克也は慌てて塞ぐ。そして夏目は部屋からズルズルと引きずられて行った💧


…バツイチ・・・

「そうだょね…

今は結婚が永久就職なんて時代じゃないし…
苗だっていつ無職になるか…」


不吉な言葉を残された控室…

苗はボソボソと呟く💧


「苗…

そろそろ行くぞ💧」

マリッジブルーの苗に晴樹は声を掛けた。赤い絨毯が敷かれた場所で入場の準備を整えた晴樹は、未だにうつ向いてブツブツと呟く苗を見つめている。

真っ白に塗られた水化粧の肌。小さな唇に紅いべにをさした苗は日本人形そのものだった…



結婚で白を着るには古来からの意味がある。


『私をあなた色に染めて下さい…』

無垢な白を着て嫁ぎ、そして色物を着るのにはそんな意味が含まれているのだ。

晴樹は苗のつやつやと彩られた紅い唇を見つめ、腰をかがめた…

「苗…」

耳元で優しく囁く

「さっきのは冗談だからな…」

「冗談?」

晴樹に言われ苗は顔を上げる。

「…今日の苗、

すごく可愛いよ…

こけしじゃなくて京人形みたいだから…」

「……//」

微笑みながら見つめる晴樹の優しい顔に苗はほんのりと頬を赤らめた。

照れてはにかむ苗の手を握り晴樹は前を向く。入場曲に合わせて会場の扉がゆっくりと開き二人を迎える歓声が聞こえてくる。

晴樹は握った手にきゅっと力を込めてもう一度苗に囁いた…



「苗、

…愛してる。


ずっと一緒にいような…」


……///


真っ直ぐ見つめてくる晴樹に苗はコクンと頷き返す。

苗の不安を吹き飛ばし、晴樹は苗より前を歩き始める。
長い歓声にもてはやされ、会場で先に晴樹は待つ。

苗はその晴樹の元へ一歩…また一歩…ゆっくりとした足取りで歩いて行く




赤いヴァージンロードの上を涙を浮かべる満作と一緒に歩き、繋がれた親子の手は新しい家族となる旦那様へと引き継がれた。


親の手を離れた娘…


大事な宝を守る役目はたった今、晴樹に託される。


晴樹は義父から託された苗の手をしっかりと握り締めていた。

結ばれた絆がほどけないように…

互いに繋いだ手に力を込める。

二人で並んで歩くヴァージンロード──

これからも晴樹の苦労は絶えないけれど、苗が傍にいてくれるならそれさえもきっと楽しいだろうと晴樹は思う。

二人で全てを分かち合い、そして笑って居られたら…


そう考えただけで晴樹の胸は弾んでいるのだから………








*~*~お し ま い~*~*

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