上 下
204 / 255
18章 恋の行方

1

しおりを挟む

◇◇◇


「…はい、それが…お昼過ぎに帰ってきたまま部屋に閉じ隠りっきりで💧‥」


時計の針が夕方を指す頃‥村井の携帯に一本の電話が入る。

『何?素行不良の次はヒッキーか!?
何度、携帯に連絡しても出やせんっ!今日、大事な話があるから一緒に食事にとリディにも伝えてあるのに!!』


電話の主は晴樹のパパさんのようだった


「そう言われましても‥💧何だか様子が…。
呼びかけても返事もなくて‥」

『ぬぁ〰にぃ〰!!
やっちまったか!?』

「は💧?」

『ゴホっ‥//
いや、なんでもない‥💧』

お笑いのネタをやりたかったらしいのだが村井の反応の悪さに恥ずかしさが込みあげたようだ💧

『と‥//‥とにかく!💧
部屋の合鍵でもなんでもあるだろう!寝とるかもしれんから、早急に準備させてこっちに向かわせてくれ。
頼んだからな。』

「はい💧直ぐに支度を‥」

村井に確認を取りパパさんは電話を切った

切れた携帯を見つめ村井はあることを思い出す。

“三人息子の中で誰が似てるかって言ったら晴樹が一番濃い血を継いでるなっ、フハハっ”

会長の茂樹とその息子智晴と三人で会食した時に茂樹が言った言葉‥




“ああ、晴樹の短気さは親をも超える。
あいつの辞書に我慢なんて字は載っとらんだろうっ、ははは!”


・・・どう考えても晴樹さんが一番、我慢強いと思えるんですが💧…。


この時の二人の意見に村井は胸の中でそう、返していた…


晴樹さんもお二人に振り回されて大変だ💧…

そんな事を思いながら智晴からの伝言を伝える為、村井は合鍵を手にし晴樹の部屋へ向かった。



「‥‥ん‥」

「‥樹さん?
‥‥‥晴樹さん?」

ドアのノックと村井の声に晴樹は虚ろな声を漏らす‥

冬も近づいたせいか肌寒さから身を守るようにシーツにくるまり、いつの間にか眠っていたようだった。

遠くでカチャ‥とドアの開く音が聞こえる…

「晴樹さん?」

部屋に入ってきた村井が、肩を揺すり声をかける。
晴樹は陽が沈み暗くなった窓の外をボヤける視界で眺め晴樹は口を開く

「今、何時?…」

「六時回ってますよ‥
社長からの伝言で今日、皆で一緒に食事をと…。
何か大事なお話があるそうです。
急ぎで準備してください。」

‥大事な話?
「・・・わかったよ。直ぐ支度するから‥」



ため息をつきながらベッドから身を起こす晴樹を見届け村井は部屋を出た。

晴樹は暗い部屋から外を眺め瞳を閉じる‥

そして肩で深く息をした‥

瞼が少し重い‥

のらりとした動きで洗面所に向かい顔を洗う。

そして鏡の中の自分を見つめた‥

‥惨めなツラしてんな…


鏡の中の自分を見てそう思う。笑い飛ばしたくても出来ない弱りきった表情‥

充血した瞳は中途半端で眠りについたせいか、愁いを残したままだった──






「おお、やっと来たか!
まぁ座りなさい。」


待ち合わせの場所にようやく現れた晴樹達を席に促し智晴は早速本題に話を移す。

「実はな‥
会長とリチャードとも話を進めてたんだが、晴樹‥」

「‥?」

晴樹は智晴の意味深な語りに出てきた料理から顔を上げた。

「今度、新しくクライムファミリーとわが社の共同会社をニューヨークに新設することになってな‥」

「へぇ、それは新しい試みだな。とうとう海外に向けて本格始動か?」


晴樹は再び料理に手をつけ他人事のように応える



「ああ、‥

そこでだ。役員会議を開いた結果‥

お前をそこの代表に‥」

「──……な‥んで‥‥俺!?冗談だろ!??」

「な‥訳なかろう💧
わざわざ会議開いてなんで冗談なんかせにゃならん!」

──‥そりゃそうだけど…

「予定はいつ?」

海外進出。支社はいくつもあるが別会社としての本格始動。なんとなくそんな動きがあるのは知っていた‥

この日の為にクライム家と友好を保っていたことも‥

ただ、まさかそこの代表に自分を抜擢してくるとまでは──

社会経験、経営実践なら兄貴達の方が十分経験豊富。

自分も会社は持っていれど半分遊び。小遣い稼ぎができれば‥そんな安易な考えて起こした気楽な会社‥

人を使った経験もない‥

なのになんで──?


「お前が卒業したらその足で向かってくれ。」

「‥は!?💧」

‥なにっ!?


「ちょ、親父待てよ!!」

「いや待たんっ!」

慌てる晴樹に智晴は笑顔で言い切る💧

「それから、今度から外では社長と呼びなさい。」

「──…な…💧」


晴樹は絶句していた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く

とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。 まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。 しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。 なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう! そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。 しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。 すると彼に 「こんな遺書じゃダメだね」 「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」 と思いっきりダメ出しをされてしまった。 それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。 「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」 これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。 そんなお話。

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

浮気夫に平手打ち

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。聖騎士エイデンが邪竜を斃して伯爵に叙爵されて一年、妻であるカチュアはエイデンの浪費と浮気に苦しめられていた。邪竜を斃すまでの激しい戦いを婚約者として支えてきた。だけど、臨月の身でエイデンの世話をしようと実家から家に戻ったカチュアが目にしたのは、伯爵夫人を浮気する夫の姿だった。

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

処理中です...