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16章 すれ違い

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「ねえ陸、
苗はテレビ見ないの?」


毎週、この時間にある苗の大好きなお笑い番組のオープニングの歌を聞きながら、夕食の後片付けをするオカンが陸達に尋ねる


「うん。体の調子が悪いんだって!」


‥体の調子?

・・・・あら‥あの娘がこのテレビ視ないなんてそんな悪そうには‥



陸の説明を受け、オカンが首を傾げていると玄関で電話が鳴り出し、空が重い腰を上げて電話を取りに行く。


「はい。もしもし、田中です。」


『あ、結城で‥』

「お!‥兄ちゃんか!」


名乗った瞬間、イキイキと尋ね返す空に晴樹は驚きながら用件を口にした。

『あ、ああ💧

ごめんな、夕食遅くなって‥もう食ったのか?

ちょっと苗と代わってほしいんだけど‥苗は?』


苗を見送ったあの後、晴樹達も食事を済ませ家に帰りそして、今日の苗の様子が気にかかった晴樹は苗の携帯に電話を掛けたのだが、案の定‥苗は携帯に出なかった。そのために自宅の電話に掛け直したところだったのだ‥


「姉ちゃん疲れたっつって帰ってきてすぐ二階に行っちゃったぞ。たぶん寝てると思う‥」


『──寝た?』


晴樹は折り返し尋ねた。




「うん。好きなテレビの時間になっても視にこないからたぶん‥」


『飯は?
‥食べなかったのか?』


晴樹は店でほとんど食べなかった苗を心配して空に尋ね返した

「食べてないよ。だって兄ちゃん達と食べたんじゃないのか?」

『‥‥‥食べたけど、ほとんど手をつけてなかったから家でゆっくり食えって苗の分も余分に持たせたんだよ‥』

‥食べてない?そんなに調子悪かったのか‥‥


電話口で晴樹は疑問に思う。

『そうか‥わかった。

今日、ちょっと一緒に居た時も調子悪そうだったから電話してみたんだけど‥
じゃあ後で苗の様子見て兄ちゃんに電話くれるか?』

晴樹に頼まれ空は返事を返すと電話を切った‥
そして、オカンに告げる。

「なに?晴樹クンから?持ち帰りのお礼ちゃんと言った?」

「あ💧お礼忘れた‥」

「んもう、バカね!」

「いいよ後で電話するから。それより母ちゃん‥」


空はオカンに怒られながら電話の内容を告げ、身重のオカンの代わりに自分達の部屋へ苗の様子を見に行った‥



「母ちゃん!!
姉ちゃんがっ…」

「──‥!?」


そして空が慌てて二階から駆け下りてくる!




「──…久しぶりに出たみたいね‥」


オカンは熱く赤い顔で荒い呼吸を繰り返す苗の様子を見て額に手を当てながらそう呟いた‥

「空。とりあえず救急車呼んで‥」


「わかった‥!」


一緒に苗の様子を陸達と覗き込みながらオカンは空にお願いする‥

肝心のオトンが酒を飲んで寝てしまっていた為に救急車を呼ぶしかなかったのだ‥

「姉ちゃん大丈夫か?」

陸達が心配しながらオカンに聞いてくる


「大丈夫よ、風邪じゃないから点滴ですぐ治ると思うわよ、

‥でも、ほんと久しぶりに出たわね?なんでかしら‥」


オカンは陸達にそう言い聞かせながら冷たいタオルを苗の首筋に当てた。


久しぶりに出た苗のこの症状‥

そう‥陸達が産まれる前はよく発病していた…

突発性の高熱発症‥

周りには疲れた時に、よく発病すると言っていたが実は発病する理由があったのだ‥


「急患はどちらですか!!」

救急車が家の前に止まり、ドヤドヤと靴を履いたまま救急隊の人達が二階に乗り込んでくる。


今にも破水しそうな妊婦のオカンとベッドに寝ている苗を見比べながら救急隊の人はそう聞いてきていた💧



オカンは救急隊の人に簡単に苗の持病の説明をすると、救急車に空と二人で付き添いかかりつけの総合病院へ向かった。


そして、病院に着きベッドに横になり、点滴を打つ苗の傍にカンは付き添う。そのオカンの代わりに空は苗の携帯で家に電話を入れた。

‥あ、結城の兄ちゃんにも電話しなきゃ!


苗の様子を気に掛け、電話をしてきた晴樹との約束を思い出し、空は家に電話を掛けたあと再び携帯で晴樹に電話をかける‥














‥学校から帰る時はそんなに体調悪くは見えなかったのに‥、やっぱり引っ張り回し過ぎたか?…


晴樹は自分の部屋のソファに腰掛けテレビを見ながら苗の今日の様子を思い出していた。

ふぅ、とため息をつきながら力なく歩き椅子に腰掛けた苗の姿がなんとなく脳裏に焼き付いていて頭から離れない‥

そんなことを思い出していると、部屋のドアをノックする音が‥


‥また来たか💧


晴樹はそう思いながら、ノックの主を部屋に招き入れた。


「ねえ晴樹!

これはどう?似合うかしら」

「‥‥ああ‥

なんでも似合うからそろそろいい加減にしてくれ💧」

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