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15章 苗の異変
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しおりを挟むそう、昨日リディに引っ張り回され疲れ果てた晴樹はリディが何を言っても、
「はいはい、わかったよ」この返事だけを繰り返していたのだ‥
“今日はこの辺でいいわ、今回見て回れなかったところはまた明日にしましょ。もちろん晴樹は明日も付き合ってくれるわよね?”
“はいはい、わかったよ”
‥てな具合いに、昨日家に帰る途中で決定された約束事だった‥
‥そう言われてみればそんな気が‥する💧
晴樹は次第に思い出し、青ざめていった
しまったとばかりに額に手を置き大きくため息を溢し口を開く
「リディ‥
ごめん!今日はちょっと無理。今からツレと出掛けるからさ‥
明日、気が済むまで付き合ってやるから‥」
『ダメよ約束でしょ。』
「約束だけど、記憶になかったんだからしょうがないだろ?」
『誰と出掛けるの?』
「誰とって、お前の知らない人だよ💧‥//」
『女ね‥』
「‥💧‥//」
『どっちの約束が先?』
「‥‥‥
お前との約束‥💧」
『じゃあ答えは決まりね!街まで村井さんに送ってもらうから晴樹は直接向かって』
「ちょっと待てって!」
リディの即決の判断に晴樹は慌てて止めに入る
・
「今日はお前の約束が先だったけど、昨日はこっちの約束断ってお前を優先したんだよ!!
頼むから今日くらいは俺に譲ってくれよ!!」
‥時間がない!
もう、苗と居られる時間は少ししかっ‥
そんな焦る晴樹にリディはトーンの下がった声で言い聞かせるように話しかけた
『―――‥晴樹。
こんなこと‥ビジネスの世界では許されないことよ‥』
―――!‥
「‥‥わかってるよ。」
リディは痛いところをついてくる‥
『でも、いいわ。
ダディには内緒にしてあげる‥そのかわり‥』
「‥‥💧」
‥そのかわり、何だよ?
今度は何を言うつもりだ💧
『アタシも一緒に行くから!
晴樹が悪いのよ?頑張ってエスコートしてねっ。もちろんアタシ優先で!
駅に着いたら電話するからじゃあねぇ』
プツ――
「──…」
切れた携帯からは不通信の音が静かに聞こえてくる‥
「兄さん?
電話終わった?💧結構長かっただね?」
‥‥💧‥
携帯を耳に当て立ちすくんだままの晴樹の肩を苗が叩く‥
袋詰めはとっくに完了していたようだった💧
「苗…」
「ん?‥」
晴樹は苗に呼びかけた。
・
「もう一人‥
増えてもいいか?」
「‥‥?
映画?‥いいだょべつに。」
苗は返事を返しながら車のトランクに荷物を詰めていく
「ごめんな‥。」
なんで謝るのか理解できないまま苗は晴樹に笑顔を向けている
‥二人っきりでって思ったのに‥‥
晴樹は肩を落としながら車を運転する‥
‥なんでこうも‥上手くいかないんだ?
米国からきた金髪の小悪魔に振り回され晴樹はまた、深いため息をついた
‥リディは絶対に邪魔をするに決まってる‥
晴樹は不安を抱えながら交差点の信号を見つめていた‥
ただ、‥この青い瞳の少女のお陰でとうとう何かが動き出す――
隙間に石を埋め込まれ、回転が止まったままの歯車がこの青い瞳の小悪魔のお陰でやっと‥動き始めることに晴樹はまだ、気づいていなかった…
・
「晴樹!」
先に駅に着いていたリディは遠くから晴樹の車を見つけ、笑顔で駆け寄ってくる。
「うわぁ…モデルさんみたいだね!!」
遠目でもわかるリディの美貌に苗は興奮していた
そして、苗の乗っている助手席のドアの前でリディは立ちどまったまま動かない‥
「あれ?兄さん、この娘なんで車乗らないの?」
「ごめん‥苗‥
悪いけど後ろに乗ってくれるか?こいつたぶん助手席じゃないと乗らないから‥ごめんな」
「‥‥‥💧
あ‥そ‥わかった💧」
ため息をつきながら車を降りる晴樹にそう言われ、苗は後部席に移る。そして苗の移動した助手席にリディが座ると晴樹は助手席のドアを外から閉めて自分も運転席に座った‥
レディーファーストの国、米国では車の開閉も主に男性が行う‥
特にお嬢様育ちのリディにとっては当たり前のことだった。
その晴樹の様子を苗は黙って見届けている。そして晴樹は苗をリディに紹介した。
「ミス、ナエ・タナカ‥
リディより、二つ年上。」
晴樹に紹介され苗は緊張しながら手を差し出し握手を求めた
・
「あ、マイネームイズっ‥」
苗の必死な自己紹介を無視してリディは目を見開き晴樹に聞き返す
「16!?
うそ、日本人てやっぱり発育が遅いのね‥」
‥ムムっ💧
今、日本語喋っただかっ!?
リディの言葉に苗は、笑顔を一瞬にして崩していた💧
「‥💧苗、この娘は今、結城グループで共同ビジネスをしてる
クライム・カンパニー。
‥てグループの社長のお嬢さんでリディ・クライム。
ファミリーで経営してるから結城グループと主体は同じだな!
日本語は達者だから普通に話していいぜ💧」
「ふーん💧‥」
カタカナが多すぎて苗にはよく理解ができなかったようだ‥
簡単に紹介を済ませると晴樹はハンドルに手をかけ口を開く
「んじゃ、映画に行‥」
「ねえ晴樹!
六本木ヒルズに行きましょ。アタシ見たいお店があるの!」
映画行きの号令をかけようとした晴樹を遮り、リディは当然のように自分の案をごり押しする
「‥俺達、映画観るつもりなんだけど‥‥💧」
「映画は後で見ればいいでしょ。
誰が優先か・し・ら?」
「・・・💧
‥はあ‥わかったよ‥。」
‥え💧?
あれ‥映画は後!?
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