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12章 学園祭

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夏休みも明け、二学期が始まり九月半ばになっていた‥
クラスでは来月に行われる学園祭に向けての準備で皆、大忙しだ。


「なえちんは、準備進んでるの?」

「うん、ぼちぼちっす!」

出店の客寄せ担当になった苗は何か秘策があるらしく個人で淡々と準備を進めていた‥


クラスのみんなで大道具の準備をしながら色付けして行く。
N校舎は男手がないために力仕事も女子で分担しながら少しずつとりかかっていた。

「大ちゃんところは射的屋だって‥」

「射的屋?」

「うん‥メット被った上に番号書いた旗つけてパチンコで射つらしいよ。男子が的役で女の子達は司会と周りで声援贈るだけなんだって」


「‥‥体張ってるね💧」

‥克也クンもするのかな?


由美と克也はあの日から付き合い始めていた‥


「結城先輩のクラスは何するの?」

「わかんない‥
帰りに何回、聞いても絶対に教えてくれないんだよ💧」

「へぇー‥余計に気になるね」

「うん‥」


二学期に入ってから、夏目は部活と学園祭の準備に追われ遊ぶ暇がない‥
そのためメールは頻繁にやり取りしていた。
そして、晴樹は前のように苗をいつも学校帰り送っている。


「あ!兄さん、ごみん。
待たせちゃった?」


駐車場で今日も苗を送る為に晴樹は先に来て待つ‥

ヌーの群れ(お嬢軍団)達は学園祭の準備に追われているようで、ここ最近晴樹は平穏な日々を送っていた‥


‥これで苗と上手くいけばいうこと無しなんだけどな‥‥💧


そう思いながら苗がシートベルトをしたのを確認して晴樹は車を出す。



「ねぇ兄さん!!

兄さんとこは準備はかどってる?」


‥またかよ💧


そう‥苗は車に乗る度にこの話題から入る‥


「ところで兄さん、何するって言ったっけ?」


「──💧‥」


いかにも、一度教えてもらった!‥そんな問いかけ方から入る‥‥

下手な誘導尋問に晴樹は呆れていた‥


「なんべん聞いても無駄!!絶対言わないっつってんだろ!?」

「なんでさ?いいじゃん教えてくれたって!!
どうせ、当日にはわかることなんだからさっ」


「当日も無理です!!!

会員制にするからお前は教室に入れないぜ!?」


「──!!‥嘘ぉ、
それじゃお客さんを選ぶってことじゃん!!いいのかね?たかが学生の身分で客を選ぶ商売の仕方をして!?」

「──💧‥‥」


苗に責められながらも晴樹は力一杯反論する。

「いいんだよ!!
どうせ世間に出たら学ぶことだ!
客を選ぶからこそ成り立つ商売だってあるんだよっ…」


思いきりやけくそだ‥

ただ、学園祭ごときで会員制もくそもない。
晴樹は自分が何をするのか絶対に苗に知られたくないだけだった。


「いいもん!!
ワトソン君に聞くから!」

「ワトソン!?💧‥誰だよそいつ‥」


初めて聞く呼び名に晴樹は戸惑っている 

そう、“ワトソン君”とは、苗が直哉につけたあだ名だった‥

常に晴樹と行動を共にしているため、助手みたいだと思った苗はホームズの助手ワトソン君から名前を取っていた。

初めてあった頃は晴樹を兄さんと呼び、直哉を“もう一人の兄さん”と呼んで居たために苗なりに、区別しやすくつけたあだ名だった。


‥ワトソン君‥‥
誰だそいつ?口止しておかなきゃなんねぇじゃん‥面倒くせーな💧


晴樹は秘密漏洩を阻止するための策を考え込んだ。


そして苗がしつこく聞くには訳があったのだ‥


それは、夏休み明けてすぐのことだった──




~♪チャララーン チャッチャチャチャラ‥


怪しい音色に乗ってメールが受信される‥

そうテーマソングは

‥‥‥“必殺お仕事人”

送信者はもちろん
あの人だった。



‥あ、姐さんからだ!




〔プロジェクトを成功させよ!〕

*ごきげんよう‥
戦闘態勢は万全かしら?
さっそくだけど次の任務を与えるわ‥

ある筋の情報によると今度の学園祭‥ターゲットがとても萌え萌えするらしいとのこと―――。


是非ともその萌え画像を収集するべく、貴方に任務の遂行を命じるわ‥

今度の任務‥‥機会を逃したら二度と手に入れることは出来ない‥それほど貴重な萌えだから失敗は許されないの‥‥‥

おわかりかしら?

失敗したら自爆も示唆ない構えよ‥

では、成功を祈るわ‥‥













‥ゴクッ💧

自‥爆‥。

大変っ!!早く準備に取り掛からなきゃっ!



コードNo.001

ネーム N‥


彼女はさっそく準備にとりかかった──

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