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1章 夏休みの予定

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「‥兄さんどしたの?」


「──苗‥
お前、助手席に移れよ……これじゃなんか変だろ?」


由美を降ろし後部座席に座ったままの苗に晴樹は言った。

「そぅ?変かな?」



べつに変って程ではないがとりあえず苗は晴樹に言われるまま助手席に移動した‥


そして、ソワソワしながら語り出す‥

「ねぇ兄さん!」

「‥ん?」

「潮干狩りも出来ちゃうかな?」


「‥潮干狩りしたいのか!?

‥‥まぁ、考えるといてやるょ…」



そう、苗は海か山に行くからには何かの収穫がないと納得出来ないタチだった‥


ジジ、ババに育てられ‥田舎道を歩くだけでも、(ふきのとう)や(つくし)を

‥山を歩けば山菜などの収穫をしながら過ごしてきている‥


なので、ただ、遊ぶだけでは苗の心は満たされることはないのだ‥

晴樹の返事に苗はニコニコしながら前を向いた。


―バタン!

「兄さんありがと!!」

「あぁ、さっきの話しみんなにも伝えておけよ!
じゃな!」


◇◇◇


「じゃあ、悪いけど明日早いから俺もう帰る‥」


「ぇえ?
もう少しいいじゃん!?
まだ、7時なったばっかだよ」

「合宿の準備があるし、明日からシゴかれるから今日はやっぱり帰るよ」

‥この女なんかうざい…


アキはカラオケしてる間ずっと夏目にベタベタ絡んでいた‥周りを見ればいつの間にか、それぞれカップルができ上がっている‥‥
夏目が帰るとアキは一人浮いてしまう為、必死で夏目にすがっていた‥



「じゃあ、アタシも帰る!夏目クン送ってってよ!」


‥なんだコイツ?──


当然のように言って退けるアキに呆れながらも、この場で一人にするのは可哀想だと思い夏目は結局送ってあげることにした。 



――ブォン─キキーーッ



「ここでいい?」

「うんっ」


家のそばまで送りバイクから降りたアキは意味ありげに夏目を見つめた‥

何を期待しているのかはだいたいわかる…


夏目はバイクに乗ったままメットを外すとアキは夏目の首に腕を絡めた‥‥



背中には今まで密着していたアキの胸の感触がしっかりと残っている‥

重ねた唇から絡めた舌をゆっくりと放すとアキは夏目をうっとりとした表情で見つめていた…



「やっぱり夏目クンてキスが上手‥‥

ねぇ、合宿済んだら今度は二人でどっか行こうよ‥」



「‥‥‥‥


いいよ……帰ってきたら連絡するから…じゃ」



夏目はアキに別れを告げてバイクを走らせた‥



「ただいま‥」

「あらやだ、何?その辛気臭い顔は?」

「‥…っ…」

母親はおかえり‥の変わりにそんな言葉で夏目を出迎えた。

そして、部屋に行く夏目にもう一度声をかける‥


「口紅ついたままよ!
オカマみたいだから早く拭きなさいっ
明日から合宿だってのに何やってんだかったく…」


‥うるせー‥//



夏目は洗面の前に来ると鏡を覗き口を拭く‥



『辛気臭い』‥‥‥か‥


確かにな‥


原因は自分でもわかってる──



好きな娘に、自分で別れを告げて自分で勝手に落ち込んでるだけ‥




苗‥‥



お前は俺と別れてもなんてことないんだよな…

まぁ、たった2日間の恋人だったんだけど‥‥‥





苗──…っ…俺はッ



すごく辛いッ‥


早くイイ男になんなきゃな



そしたら、どんな奴のものでも取り返してやるからッ

絶対にッ!──

夏目は鏡に映った自分の目をじっと睨み据え、握った拳に力を込めていた……。
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