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1章 きっかけ

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「それよりさぁ‥由美のタイプを探さなきゃっ
聞いて中ちゃん!由美ったらさぁ
優しくて、洗練されてて
んで、イカメンのモデルみたいなの見つけて来いだってさ!

どうやって探せっつーのっそんな男!?
ホント、現実を見ないんだから困っちゃうよ」


中島の為にパスタを取ってきた晴樹に苗は簡単に礼を言うと、再び回りの男子の物色を始める

…──おぃおぃ、苗が一番現実見てないってっ
由美のタイプに恐ろしくぴったりハマる人が目の前にいるっつーの!


‥‥でも‥ライバル増えると困るから由美には内緒にしとこっ



中島は今後の策を練りながらちょっと気にかかったことを苗に聞いた…


「ねぇ苗‥‥‥
ちょっと、聞いてもいい?」


「ん?」


「あんたのタイプってどんな?……」


「‥‥‥‥ ルパン‥」

「‥‥‥‥わかった

あんたのタイプ見つけたら紹介してあげる」


「マジっすかっ…ならやっぱりダイエットしなきゃ!」


苗はそう心に決め席を立ち上がると鼻歌を歌いだした…

√♪ダーイエットは明日からぁ

√…ダーイエットは明日からぁ




そして、二杯目のパスタを取りに行った…



…苗ったら‥

まぁ、苗の事は置いといて…

中島は陽気な苗を見送ると、コホッと小さく咳をして喉の調子を整える。


「あ、あの、晴樹さん…」


「ん?…」

急に話しかけてきた中島に晴樹はパスタをつつきながら顔を上げた‥

「なに?…」

「あの …
が、合併のことで…聞きたいことが…」

あ?んなんか、緊張しちゃう///彼女いるか聞きたいのにっ!


「合併の何が聞きたいんだ?」


「ぅぁ、あのっ…え~っと‥」


“──…すいません!
ちょっと、それはできかねますっ…ほんとに申し訳ないんですがっ…”





中島が必死で質問のネタを考えていると背後でしきりに人の詫びる声がする


見ると困り顔で苗に頭をさげるウェイターがいた


晴樹もそちらの方に目を捕られている…


「ごめん…ちょっといい…?」


晴樹は中島に詫びながら席を立つと苗達の方へと歩いていった。


「…どうした?」


「あ‥
実は…御持ち帰りをされたい…と…」


「‥持ち帰り!?
‥料理を?‥‥‥」


揉めてる理由をウェイターから聞き、晴樹は戸惑いながら苗を見る‥


二人のやり取りを見つめていた苗の手にはついさっき、買ってきたばかりであろう、プラスチックのパック容器10枚入りが握られていた──


  
… 確信犯か‥‥
最初から持ち帰るつもりで来てやがるな──


「…ダメ?‥
だってどう見ても残りそうだし…
もったいないじゃん、せっかくこんな美味しいのに!!」


苗は当然のように晴樹に堂々と語る


「・・・・
わかった、少し待ってて…

ちょっと悪いけど、松下さんを呼んでくれる?」


晴樹がそう頼むと、ウェイターが一人の男性を呼んできた…
そして、晴樹はその男性に交渉する‥‥‥


「ごめん、松下さん……実は料理をテイクアウトしたいって子が居て…いい?  俺が責任取るからさ」

「わかりました。
晴樹さんがおっしゃるならいいですよ。ただし今日中に食べて頂ければ‥ですが」


どうやら、松下さんと言う人物はここの総支配人のようだ

「わかった、
悪いね。無理言って」


交渉が済み晴樹は苗に言った


「絶対に今日中に食べきるんなら持ち帰りしてもいいよ」


「やった、ほんと!?

食べる食べるっ!
大丈夫、残しておいてっつってもウチは残らないから!」


苗はそういうと喜々としながら料理をパックに詰め始めた。



「あ、ごめんちょいと兄さん!
これにそこのオードブル詰めてもらえる?」

― カサッ‥


「……‥」


苗は、隣にいた晴樹にパック容器を手渡した──
そして晴樹も苗に次から次に指示される料理を無言でパック詰めしていく‥



…ちょっ、やだぁ?
苗ったらっ晴樹さんになんて事させてんのよ?っ‥//‥



二人の様子に中島が慌てた。


そして、瞬く間にパック10コに詰めきると、それを見て晴樹が苗に再度確認を取る


「ほんとーにっ‥今日中に食べきる?コレ」


「うん‥足りないくらい」

「はっ?」


晴樹の心配をよそに苗は、“しまった!!” そんな顔をしている

そして呟く…

「チッ‥あともう一つパック容器買って置けばよかった」



「‥‥コレだけあっても足りない!?」


「うん、‥ウチ…10人家族だし…食べ盛りの弟が3人いるから…」


「…10人っ‥‥なるほど‥
わかった、ちょっと待ってて‥」


晴樹は近くにいたウェイターに何かを持ってこさせた


「汁気のないやつだったらコレで大丈夫だろ?」


そう言った晴樹の手にはアルミホイルとラップが握られている‥

結構、面倒見のいい晴樹だった‥


  
パック詰め作業も終わり、二人は席に戻って来る。そして、晴樹は中島に話しかけた


「中断させてごめん!
で‥合併の何が聞きたいの?」


「あ‥」
…やばい!何質問するか考えてなかった!


「…聞きたい事があったんだろ?」


「何?兄さん合併について詳しいの?」


… 兄さんって‥‥

「ごめん
君にはまだ自己紹介してないね‥
結城 晴樹だよ。
合併したらよろしく」


晴樹は改めて苗に自己紹介した‥
そして、苗は思いつめたように晴樹の名を呟く‥


「…結城──?…結、城……結…っ…城っ!?」

「そ。……これからよろしくな」


「何、兄さん結城の人間なのっ?」


「ああ、何か聞きたい事ある?合併について…」


「・・・はいっ質問!」


結城の人間と聞いて苗は直ぐに質問した。


「どうぞ…」


「え~とですね‥合併したあかつきには…学費はどうなるんでしょうか!?…
たぶんですね‥そちらの学費と我が校の学費は雲泥の差があると思うのですが!?」


「はぃ、お答えします!
学費はいままで通りの予定です!」


苗の質問に晴樹は、はっきりと答えた。

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