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10章 無敵伝説
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しおりを挟むチョロチョロ…カポ―ンッ――
庭先でチョロチョロと岩清水の流れる涼しげな音と“ししおどし”が鳴り響く中…
晴樹と辰治は互いに向きあい緊張感に包まれていた…
「お久しぶりです…辰治さん…」
「おぉ…」
「では、辰治さん。二年前の続きを…」
「おお…」
晴樹は辰治に頭を下げる。
「総代、始めますが準備はよろしいでしょうか?」
「おぉ‥」
「では、前回の続きから……後手、晴樹さん」
――パチッ――
は!!ッ―――…っ
辰治は思わず息を飲んだ。
「ぅぬぬぬっ…またしてもわしの負けかあ!!」
辰治は叫ぶなり、将棋板をひっくり返した!!!
「33戦33敗…総代、晴樹さんの圧勝です…」
「…っじゃかましぃ!! 圧勝ゆーな!! このっボンクラがあ!!」
「…す、すいやせんっ」
辰治の剣幕に若い衆は怯えていた。
そう、晴樹と辰治‥
この二人はお互いの勝負に決着をつけるべく2年越しの再会を果たしたのだ。
その勝負とは日本人にもっとも馴染みのある精神勝負の王道‥‥‥将棋…。
辰治は晴樹が海外行きの飛行機に乗るギリギリまでこの勝負を申し込んでいたのだ‥
……………………………………………
『晴樹ィ〰! わしが勝つまでこの勝負は絶対に終らせんからな!!』
‥って血眼で晴樹の乗った飛行機に叫んでたぜ!?
――――――*貴志 (談)
2年前に時間ギリギリまで勝負していた為に、ちょうど晴樹の番でタイムリミットとなっていた…
そのため辰治は2年前のあの日打ったままの形で将棋盤を保管していたのだ。
そして今回の勝負は晴樹の一打ちで決まってしまった…
「じゃあ、…辰治さん…今回はこれで…」
「いやあ待て晴樹。わしが勝つまでだ!」
「え…っ…」
「…っいーかげんにしろよ叔父貴!! 晴樹は俺に用があんだからな!? 勝負は一月二回までだ!!
晴樹もそれ以上付き合う必要ねえぞ!!
簡単に負けてるくせになぁに言ってやがんだ!?
悔しかったら腕上げろよ!! この2年ずっと将棋の本読んでたのはなんだ!?
まさか、漢字が読めなかったとかゆーんじゃねぇよな!? ああ!?」
「ぅ…」
「さすがだ…跡目を期待されてるだけあるな‥」
「ああ…綺麗な顔して
容赦ない苦言だ…」
勝負を見守っていた若衆らがボソボソと語っている
「貴志…何もそこまで」
貴志に責められ小さくなってる辰治を晴樹は庇っていた。
……………………………………………
「悪かったな、手間ぁ取らせて」
「いや、途中からの勝負で助かったよ。早く決まったしな…」
「そこ座れよ。んじゃ、作戦でも練るか?」
晴樹は貴志の部屋に案内され、ソファを勧められた。
「作戦っつっても練るほどでもないんだけどな…たぶん…」
「そか? んじゃ、暴れるだけか?」
「……場、合によっちゃな…まあ、俺らも辞めて4年経つ。お前も全然顔出してないだろ? メンバーにどんな奴らがいるかも解んねぇし…
俺らが出て素直にゆうこと聞く奴らならいいけどな」
そう、晴樹達のチーム
《デス・ナイツ》
革ジャンに死神のマークが型押しされたスタイルが格好イイと注目を浴び、その中のトップ二人は最高にイイ男だと囃子立てられ、晴樹達はひがんだ他のグループから頻繁に喧嘩を売られていた。
最初は少人数だったはずがそれが理由で勢力増大してしまったのだ。
それもそのはず。晴樹達は顔もイイ上に腕っぷしも強い。
そして一人は経済界のドンの孫…
もう一人は強大勢力を誇る極道の後継ぎ。
後ろ楯もすごい二人に憧れ、平和な学生生活を抜け出してわざわざ悪ぶるガキもいたほどだった…
……………………………………………
目立ちたいが為だけに、
デス・ナイツのメンバーになりたい奴らは腐る程いた‥
「中途半端な奴らが増えたってことだろ?要は」
「あぁ、たぶんな…
名前が売れるだけ売れたら喧嘩売ってくるのもいねぇし…たぶん、手に追えないってのはチャラチャラした奴らばっかだろ?」
「んじゃ、簡単じゃねぇか。そいつらシバきゃいいんだよ!」
「正気かよ……何人いると思ってんだよ? 身が持たねぇっつーの!」
「ははっおバカさんだな、晴樹クンは。俺らもうおじさんじゃん?
他のチームの奴らに手ぇ出させりゃいいだろ?」
「‥‥なるほどね、確かに中途半端にこの環境にいる奴らならビビって自分からチーム抜けるだろうしな…よし、今から良二達を呼び出して話しするか!?」
話しがまとまると晴樹達は良二に連絡を取った‥
パカッ
ピッ‥ピッ‥‥
「あ、良二、お前今から出て来れるか?……あ、何?‥‥彼女ぉ!?」
「ちょっと携帯貸せっ」
顔色の変わる晴樹から貴志は携帯を奪いドスをきかす
「おいゴラッ!
こっちはテメェの尻拭いしてやろってんだっ…女のピ〰なんか舐めてねぇで早く来いっつったら来い!! わかったな!? …返事は!?」
「…っはぃ!!」
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