127 / 312
第三章 恋愛編
3
しおりを挟む「へぇ、‥あんたやっぱり手際がいいねぇ?
それなら、すぐに嫁さんに行けるよ!」
「‥//‥ありがとう」
エバはアルの腕前に感心しながら話した
「あんたのおっ母さんは早死にしちまったけど‥ちゃ~んと娘を立派に教育したんだね……
感謝しなよ!」
エバの言葉にアルは嬉しそうに微笑み頷く
… こんなに可愛いのに苦労ばっかり背負い込んじまって‥‥‥
エバは一生懸命パイ生地を飾り付けるアルを見つめていた。
こしらえたパイを石釜でじっくりと焼き上げて取り出すと、何とも言えないパイ生地の香ばしい香りとラズベリーの甘酸っぱさが絶妙なハーモニーを奏でる。
「ん~‥美味しそうっ。上手くできたみたい!」
アルは胸いっぱいにパイの香りを吸い込んだ!
そして、エバにお礼を言うと包んだパイを手にしてアルは帰りを急ぐ‥
家に着くと早速料理に取り掛かった。
‥今日は時間もあるから
やっぱり煮込みシチューにしよう♪
アルはボルシチを作った。その他にシーフードサラダや蒸し鶏の和え物など…
カラフルな彩りの料理が瞬く間に出来上がる
・
「おっ!なんだか、今日はご馳走だな‥
誰がくるんだ?」
夜勤前の準備をしていたザドルが料理を見て言った‥
「あ、ザドルも食べる時間あるでしょ?
すぐ準備するから食べて行ってよ!!」
アルはザドルの食事を手早く食卓に並べていく
「旨そうだなぁ!
‥‥で?…誰が来るんだ?」
ザドルはアルを見て再度聞いた💧
「ロイドだよ‥💧」
「ほぉ‥ロイドが来るってなると、こんなに豪勢になんのか」
「//…っ…」
「これからしょっちゅう来てもらうかっ!?ガハハっ」
ザドルはアルを茶化すように一人で語る。
食事を済ませ、仕事に行くザドルを見送って、アルは次の食卓の用意を始めていると丁度ユリアも二階から下りてきて、二人で準備に取り掛かった。
ボルシチの入った鍋に火を入れてコトコトと煮込んでいると、外で馬のいな鳴きが聞こえてくる。
… あ、来たかな?
そう思うと同時にティムとマークのただいま!の声がドアの開く音と共に響いた‥
そして、馬の手綱を柵にくくりつけたロイドが子供達に急かされながら入ってくる
「いらっしゃい!」
アルは満面の笑みでロイドを迎えた…
・
「…!っ……」
久しぶりに見るアルの笑顔にロイドは息を飲む。
途端にさっきまで静かだった鼓動が急に高鳴り始めた。
「よ、…よぅ…っ
元気そうだな‥‥‥」
ぎこちない挨拶を返し、目を反らして席につくロイドにアルは何気に気を使ってしまう。
‥やっぱり‥謝るの難しいかな……
そう落ち込むアルの顔をロイドはほとんど見ることがなかった‥
それでも、と場の雰囲気が悪くならないようにアルは自然を装いしきりにロイドに話しかけていく
「今日は、シチュー作ったの!
口に合うか解らないけど‥‥」
アルはそう言いながら料理を皿に盛り、ロイドの前にどんどん並べる‥
そして、みんなで席に着き食事を始めた。
だが、なぜだか‥みんな無言だった──
ロイドの緊張した空気にみんなが飲まれ始めている💧
‥どうしようっ💧なんとかこの雰囲気を変えなきゃ…
アルは必死に話題を探してロイドに話しかけた
「あ、ロイドっ!
ティムが今、乗馬習ってんだって?
どんな感じかな!?」
「‥え…/// あ、あぁ‥💧
上手いよ…覚えが早いから教えるのも楽だし‥‥」
・
「へぇ、そうなんだ?
ねぇ‥ロイドはいくつから馬に乗ってるの?」
「7才の頃から‥。」
「ふ、ふ~ん……」
… は、話が続けられないっ…
話掛けても答えて終るだけのロイドはシチューの皿を見つめたまま、アルの方を見ることがない‥‥
その様子を子供達も固唾を飲んで見守っている‥
「ねぇ‥‥ロイド‥
シチューおいしぃ?」
「あぁ‥旨いよ‥//💧」
「そぅ?‥‥よかった。
人はね‥
美味しいものを食べる時って絶対に顔にでるんだって!」
「……っ!!‥💧」
アルの言葉に、ロイドは一瞬体がびくつく
そして、アルは追い討ちをかけた‥
「‥‥見たいな…
ロイドがどんな顔して食べてるのか‥‥‥」
しきりにロイドの顔を覗き込もうとするアルにシチューを食べるロイドの手がとまった‥💧
「‥‥‥💧」
「ねぇ‥ロイド…
後でデザートもあるから‥それ持って裏の公園に付き合ってくれる?
ちょっと話があるの‥」
「わかった‥💧」
どんなに覗き込んでも自分を見ることのないロイドに、アルは早めに切り出した‥
… なんか‥この調子じゃ話してもダメかもな💧
トコトン嫌われてそう‥💧
・
だが、それも仕方がなかった…
ロイドはしきりに自分を気にかけて優しい口調で話しかけるアルに胸が疼き、とても目線を合わせられない…
アルはロイドに約束だけを取り付けて、後は子供達を交えながら世間話しを始めた。
ロイドは子供達の問いかけには顔を上げて自然に話しをしている
それを見かねてティムがコソッとロイドに発破をかけた
「兄ちゃん!大丈夫かよ!?
アルがあんなに一生懸命話しかけてるのに、もっと優しくしてもいいじゃんかっ」
「…んなこと、わかってるっ!!
久しぶりだから、なんか緊張するんだよ!…///」
「なんだ💧‥緊張してんのか?オイラ意地悪してるのかと思ったぞ?
‥たぶん、アルもそう思ってるぞ‥‥‥💧
だから、嫌われてるって誤解されるんだっ!」
「‥っ‥//💧」
ティムにたしなめられながら、ロイドは食べ終わった食器を洗うアルの背中を見つめて溜め息をつく
正直、胸はずっとうずいたままだ…
‥15才のアルが一生懸命気を使って自分に話しかけてくれるのに、大人の俺は返す言葉がみつけられずに愛想のない返事を返すことが精一杯だ…
ティムの言う通り‥
これじゃ‥嫌われてるって誤解されてもしょうがない‥‥‥
0
お気に入りに追加
730
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
モンスタースレイヤー王者の道第1章(四神編)
ゆうネロ
ファンタジー
主人公のヒロトは、当時悪いモンスターや人間を捕まえたり倒したりするスレイヤーになる夢の目標を持っていた昔両親をモンスターで亡くなり悲しんだがそれでもスレイヤーになる覚悟は消えず、仲間のハク、ネロ、天月の4人でチームとしてスレイヤーになり、物語でヒロト達は成長をしていき、四神達の試練を受け強くなり、この世界に一時的に平和を勝ち取るが新たな闇もあるなか、ヒロト達はこの先の未来で最強のスレイヤーになるのもそう遠くはない...
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる