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しおりを挟む独り暮しの部屋で恋人が手料理作ってるってこんなにときめくものなのか──
なんだか落ち込んでいながらも俺の胸が妙に色めく。
置いてあった買い物袋を見つめ、晶さんに目をやると、わけもなく気持ちが高ぶった。
「奥さん、今から何を作るんですか?」
なにげに頬を染めて後ろから晶さんの腰に手を回し抱き締める。
可笑しいな…さっきまで俺、苛ついてて怒ってた筈なのに……
そう思いながらも疼く想いが抑えられない。
新婚ゴッコがやめられず、俺は晶さんに抱き着いたまま料理する手元を眺めてうなじに口づけた。
逢ったら色々責めちゃうかもと思って我慢してたのに──
こんな不意打ちでウチにいて料理する姿なんか見せられたら…
もうどうでもよくなってくる。。。
晶さんに先手を打たれたかも知れない──
ってことはこれって俺のご機嫌とりなんだろうか?……
もしかして、俺を怒らせちゃったから、晶さんなりに気を使ったんだろうか…
雑な扱いしか受けてこなかったぶん、俺の為に何かをしてくれることが異様に嬉しい。
だからついつい俺は調子に乗ってしまうわけで…。
「こんなことに誤魔化されないからね……」
「………」
なんて晶さんを責めるフリをしてみる。
晶さんは俺の言葉に少し緊張を走らせたようだった。
・
責められるのは多少覚悟したのだろうか──
「ねえ、晶さん……」
「……」
「俺に悪いことした──って思ってる?」
「………」
「何も思ってない?…」
煮立っていたホイルを被せた鍋からは甘辛い醤油の香りが微かに漂っている。
中味は多分、魚の煮付けだ──
背中から抱き締める腕を緩めることなく尋ねる俺に、晶さんは鍋の火を止めて口にした。
「思ってるよ…また約束破っちゃったって……」
「───…」
あまりにも素直に認めた晶さんに俺の方が驚いていた。
背中を向けたまま、申し訳無さげに小さな声で呟く晶さんに胸が疼く。
簡単に許したらダメだって思うんだけど、もうすっかり許してしまってる俺がいるわけで……
「ほんとに悪いって思ってるなら証拠見せてよ…」
俺はまだ怒ってるように言いながら晶さんを自分の方に向けていた。
「証拠って…」
戸惑う晶さんを見つめ、エプロンの裾から手を潜り込ませて晶さんの胸をまさぐる。
「ちょ…夏希ちゃっ…先にご飯っ」
「それはあとっ! 証拠が先っ!」
俺は押しきって晶さんのセーターから袖を抜きエプロンの下から脱ぎ去る。
「……ちょ…っ」
裸にエプロン……
二人一緒に住んだら必ずやるつもりでいた俺の夢。
「俺に悪いことしたって思うならこの格好で俺にご奉仕して償って…」
「………」
「…いいよね別に」
強気で押しながら、戸惑う晶さんの唇を塞いでねっとり犯す。
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