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そして、
楽な上に稼げる…

求人募集でそんなキャッチコピーがあったなら──

まっさきに疑うべきだったとあたしは後悔していた……。

「ワンピースじゃダメですか……」

なんてダメ元覚悟で聞いてみる。

「ん~アダルトをイメージしてるからね……」

「頼むから…引き受けてから降りるなんてやめてくれよ」

顎に手を沿えて唸る楠木さんの横で社長の椅子に腰掛けた健兄が付け足した。

今回の塗るタイプのストッキング。暖かくなれば素肌見せが主流になってくる為に、女性の足元は生足にミュールがお洒落の定番だ──

冬よりも売り上げの下がるこの業界。化粧品会社とのコラボで塗るタイプの足元コスメをブランド化して売り込むらしい。

ボディクリームとかデコルテケア商品が数多く出回る中、やっぱりTV宣伝が持つ力は侮れない。

商品は少しお高め。

ヤング向けではなく、アダルトを狙ったラグジュアリー(高級)感を出すために、前回の大人なストッキングのCMがかなり好評だったとかで、要はあれに並ぶくらいのセクシーさが欲しいと要求されていた…。


“詳しくは受けてくれてからの話になるけど…”

「………」

詳しく先に聞いておくべきだったかも…

でも楠木さんのことだ。たぶん撮影でビキニを着るなんてことは、絶対に言わず口説いてきたと思うわけで……

砂浜ってのに一瞬引っ掛かったのにな~…

そう舌を打ちながら、あたしは本日撮影するスタジオに連れて来られていた……。

「ビキニか…」

渡された白いビキニを眺め、呟くあたしを衣装さんが笑う。

前回、ストッキングの時にもお世話になった人だ。素人だってことを知ってる分、ちょっと気の毒そうな笑みを返してくる。

ここにいる皆がビキニなら平気なんだけど…

一人だけってのがどうも気になる。

「上はシャツを羽織ってもいいって許可出たわよ」

「えっ!? うそ、ほんとにっ!?」

乗り気のしない表情の顔を綻ばせるあたしに衣装さんはコットン地の柔らかそうなブラウスシャツを手にしながら頷いた。

あらやだ、シャツ一枚身に纏う生地が増えただけであたしってなんて単純かしら。。。

なんて思いながらチャカチャカと着替えだす。

マリオはもう別室で仕度に入っていたらしくまだ顔を合わせては居ない。

足だけ撮られるあたしと違い、マリオは全身が映るわけで、メイクから髪型から…時間が掛かって当たり前だと思った。

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