2 / 7
謝罪と拒絶
しおりを挟む イオリが思った以上に機織りという仕事に造詣があると知ったグラバーは熱心に工場見学をさせてくれた。
初期の機織り機が見たい。
イオリの願いを叶える為に機織り達の小屋を出て、敷地の奥に向かう事になった。
案内された広場では年老いたエルフの男女が若い職人に手解きをしているところだった。
「カロス、ダイダ、お邪魔しますよ。」
気兼ねなく入っていくグラバーに2人の老エルフは何事かと顔を上げた。
「こちらのイオリ様は、ハニエル様とフェンバイン様もお認めになられた、大切なお客様です。
是非、イオリ様に初期の織り機を見せて頂きたいのです。」
2人は人族のイオリの周りにエルフのナギと獣人のラックとコーラルが纏わりついているのを見て、微笑んだ。
「イオリ様、こちらは長年、職人を勤め上げられた御2人です。
今は、若い職人を育てる事に尽力してくださっているんですよ。」
突然やってきた人族の若者にも2人は挨拶をすると手招きしてくれた。
「皆が騒いでた人族だね。
若い人。
機織りに興味があるのかい?」
グラバーを引き連れて近くの小屋に入っていったダイダを見送るとカロスは嬉しそうにイオリに椅子をすすめた。
「子供の頃、祖母が使っていました。」
「おや、それじゃ祖師様と故郷が同じなのかい?」
「祖師様?」
カロスは楽しそうに頷いた。
「機織り機をルーシュピケにもたらした、かつての恩人の事さ。」
「もしかして、その方は十蔵という名ではないですか?」
「ふむ・・・。
確かに、そんな名の響きだった気がするが・・・よく考えれば、ずっと祖師様としか呼んだ事がなかったな。
そうだ、獣人のとこに医者がいるんだが、その夫が詳しいぞ。」
「キキ医師の旦那さんのグリーズさん?」
確かに、歴史学者とキキ医師が言っていたのをイオリは思い出した。
「そう、その男だ。
学者というらしい。
もし、直接の話を聞きたければハニエルの爺様だな。
あの人はワシらよりも500年は年寄りだからね。
歴史の生き字引だよ。」
国の成り立ちから知っているハニエル老が十蔵を直接知っている可能性があると聞いて、イオリは胸を高鳴らせた。
「お前さんも祖師様の事を知っていなさるのか?」
カロスの問いかけにイオリは、どう答えればいいのか迷った。
「俺、アースガイルから来たんですよ。
十蔵さんはアースガイルを建国した初代アースガイル王であるマテオ様の親友なんです。
それで、折に触れて聞く名前なんですよ。」
「ほう、なんと なんとな。
それは初めて聞いたな。
学者の男が喜びそうな話だ。」
「カカカっ」と笑うカロスの後ろからダイダが戻ってきた。
「人の子。
これが、初期の織り機だよ。
祖師様が己の手で作られた希少な物だから、大切に扱っておくれ。」
ダイダが差し出すソレは、イオリが知っている機織り機よりも小さく抱えられる程しかない。
しかし、それ以上に重く感じるのは時を重ねてきた先人の置き土産だったからかもしれない。
初期の機織り機が見たい。
イオリの願いを叶える為に機織り達の小屋を出て、敷地の奥に向かう事になった。
案内された広場では年老いたエルフの男女が若い職人に手解きをしているところだった。
「カロス、ダイダ、お邪魔しますよ。」
気兼ねなく入っていくグラバーに2人の老エルフは何事かと顔を上げた。
「こちらのイオリ様は、ハニエル様とフェンバイン様もお認めになられた、大切なお客様です。
是非、イオリ様に初期の織り機を見せて頂きたいのです。」
2人は人族のイオリの周りにエルフのナギと獣人のラックとコーラルが纏わりついているのを見て、微笑んだ。
「イオリ様、こちらは長年、職人を勤め上げられた御2人です。
今は、若い職人を育てる事に尽力してくださっているんですよ。」
突然やってきた人族の若者にも2人は挨拶をすると手招きしてくれた。
「皆が騒いでた人族だね。
若い人。
機織りに興味があるのかい?」
グラバーを引き連れて近くの小屋に入っていったダイダを見送るとカロスは嬉しそうにイオリに椅子をすすめた。
「子供の頃、祖母が使っていました。」
「おや、それじゃ祖師様と故郷が同じなのかい?」
「祖師様?」
カロスは楽しそうに頷いた。
「機織り機をルーシュピケにもたらした、かつての恩人の事さ。」
「もしかして、その方は十蔵という名ではないですか?」
「ふむ・・・。
確かに、そんな名の響きだった気がするが・・・よく考えれば、ずっと祖師様としか呼んだ事がなかったな。
そうだ、獣人のとこに医者がいるんだが、その夫が詳しいぞ。」
「キキ医師の旦那さんのグリーズさん?」
確かに、歴史学者とキキ医師が言っていたのをイオリは思い出した。
「そう、その男だ。
学者というらしい。
もし、直接の話を聞きたければハニエルの爺様だな。
あの人はワシらよりも500年は年寄りだからね。
歴史の生き字引だよ。」
国の成り立ちから知っているハニエル老が十蔵を直接知っている可能性があると聞いて、イオリは胸を高鳴らせた。
「お前さんも祖師様の事を知っていなさるのか?」
カロスの問いかけにイオリは、どう答えればいいのか迷った。
「俺、アースガイルから来たんですよ。
十蔵さんはアースガイルを建国した初代アースガイル王であるマテオ様の親友なんです。
それで、折に触れて聞く名前なんですよ。」
「ほう、なんと なんとな。
それは初めて聞いたな。
学者の男が喜びそうな話だ。」
「カカカっ」と笑うカロスの後ろからダイダが戻ってきた。
「人の子。
これが、初期の織り機だよ。
祖師様が己の手で作られた希少な物だから、大切に扱っておくれ。」
ダイダが差し出すソレは、イオリが知っている機織り機よりも小さく抱えられる程しかない。
しかし、それ以上に重く感じるのは時を重ねてきた先人の置き土産だったからかもしれない。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説




つまりは相思相愛
nano ひにゃ
BL
ご主人様にイかないように命令された僕はおもちゃの刺激にただ耐えるばかり。
限界まで耐えさせられた後、抱かれるのだが、それもまたしつこく、僕はもう僕でいられない。
とことん甘やかしたいご主人様は目的達成のために僕を追い詰めるだけの短い話です。
最初からR表現です、ご注意ください。


王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

交錯する群像劇
妖狐🦊🐯
BL
今宵もどこかのお屋敷では人と人による駆け引きが行われている
無垢と無知の織りなす非情な企み
女同士の見えない主従関係
男同士の禁断の関係
解決してはまた現れて
伸びすぎたそれぞれの糸はやがて複雑に絡み合い
引き合っては千切れ、時には強く結ばれた関係となる
そんな数々のキャラクターから織りなす群像劇を
とくとご覧あれ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる