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第三話 駄犬×高慢

ご褒美

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「勇ましいのは、口先だけか?こちらの口先は、くぱくぱ喘いで、よだれを垂らしまくっているだけじゃないか」
「ぅっ、あっ、ん、」
 握り締めたりんの陰茎の喘ぐ先端口先を、翡翠ひすいは親指の先で、ぐりっとえぐる。
「ぁ、っふ」
 ここで射精してしまわないほどには耐えられるようになった、翡翠に鍛えられたおかげで。しかし、射精をしなくても、臨は背筋を駆け上り、脳天に抜けてゆく快感に、背を反らして、びくびく、全身を震わせてしまう。
 それがのちの時代に「ドライ」と呼ばれるものであることを、臨は知るよしもない。

 迎えの馬車で家に帰り着いて、馬車を走らせていたβの御者ぎょしゃでさえ下卑げびた目で見てしまうほど、翡翠は発情していた。
 部屋の障子しょうじを閉め、臨が行灯あんどんけているうちに、翡翠は着物も袴もふんどしも何もかも脱いでしまった。臨が布団を敷くのさえ待てなかった。じたばた、逃げ回る臨を追い回し、着物も袴も褌も何もかも引き剥がした。臨は何とか口覆いマスクだけは必死に着けた。
 脱ぎ散らかした着物や袴の上で、臨は翡翠にいじくり回されている。――今日こそは、自分が翡翠をトロトロにできる!と思ったのは、むなしい幻だった。

「ふふ。勇ましいじゃないか」
 笑って翡翠は、臨が射精をこらえた陰茎を、ねっとりと撫で下ろした。
「っぐ」
 それでも臨は耐えて、翡翠が手放てばなしても、勃起したままだった。
「ごほうびをやろう」
 飼い犬を褒めるように言って翡翠は、臨に背中を向けた。

「ええっ?!」
 思わず臨は声を上げてしまう。耐えたのに、ごほうびが「放置」なんて、

 翡翠は四つん這いに大きく脚を開き、菊門アナルを臨に向かってさらした。
 菊門の花弁襞(ひだ)ひらいてはつぼみ、つぼんではひらいて、あふれる蜜をしたたらせている。
 滴る先には、双珠陰嚢
 まじまじと見つめてしまっている自分に気付いて、臨は顔をそむけた。

「だっ、だめだっ!挿入は、だめだ!」
「挿入させてやるわけがないだろう。またはさんでやるだけだ」
「股に挟む……」
 臨は翡翠に投げ付けられた絵巻物の、色鮮やかな大和絵やまとえと、流麗な仮名文字かなもじを思い出す。――「すまた」

 ふうっと、臨はため息をついて、翡翠に言った。
「こんなこと…帝にしたら、だめだよ、翡翠……」
「するわけないだろう。お前だけだ。さっさとしろ」

 ふっと、臨は笑った。
「そうか。俺だけか……」
 臨は、翡翠の白い背中に覆いかぶさり、細い腰を両腕で抱き締めて、脚と脚の間に自分の陰茎をれ、ぐいっと双珠陰嚢を押し上げた。

「ああんっ」
 抑えることもなく翡翠は声を放ち、ぎゅっと細いももと腿で、臨の勃起した陰茎を締め付ける。臨はこらえた。

「さっさとけよ、ぁんっ、」
 臨を罵ろうとした翡翠の声は、嬌声きょうせいに変わった。臨は硬くて熱い陰茎で、翡翠の腿と腿の間を貫き、双珠を押し上げ、先端で翡翠の勃起した陰茎の裏筋を撫で上げる。臨が腰を振り、翡翠に打ち付ける音が高らかに響く。

 閉め切った障子しょうじに映るひとつになった影と、絶えまなく翡翠が上げ続ける声と、決してつなぐことの許されない体と体がきしみ合う濡れた音は、交合セックスしているようだった。
 翡翠の結った長い黒髪は細い肩から流れ落ちて、熱に紅く染まったうなじは露わに、臨の目の先にあった。瞳を閉じて臨は、翡翠を突き上げ、口覆いマスクの中、唇を噛んで射精した。

「ぃぁあっ、ぁふ、ぅんっ」
 翡翠は声を上げて、腿と腿の間で射精する臨の陰茎を絞り上げ、いっしょに射精した。


 二日後、翡翠と臨が学校に行くと、あの英語教師が書いた辞表が回し読みされていた。怯えて震える手で書かれた英語の解読は、特級クラスの学生たちのひまつぶしにはなった。
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