17 / 34
第3章 花火の夜
#命令
しおりを挟む
天頂から高く長く白く地上まで枝垂れる花火。
オクトが顔を上げると、ディセは肩にもたれかかり、浅い呼吸を繰り返している。短い銀髪を撫で、ディセの耳にささやく。
「Come」
命令をくれたオクトの唇に、唇をディセは重ねた。びっくりしすぎてオクトは顔を退き、がこっ!と、バルコニーの柵に後頭部を、思いっきりぶつけた。
「痛!――ディセ、『おいで』って、いきなし来すぎだろっ。んぐゅっ」
オクトはディセに両肩を掴まれ、バルコニーの柵に押し当てられて、唇を押し当てられ、受け止めきれずに、ずるずる、横倒しになる。
「Come」って命令で、抱き締め合おうと思っただけなのにっ!!
ディセはオクトの体に体を重ね、キスを続ける。オクトは何をどうしたらいいのかわからず、閉じていた口を
「ふ、はっ、」
息が苦しくして、開くと、
「んぐ、ぁ、」
ディセの熱い舌が入って来る。
「Come」って、口の中まで来ちゃうのかよっ?!
「ん、は、…ぅ、っ、」
「ぁふ、ぅ、ん、ぅ、」
ぬちゅぬちゅ、舌と舌が絡まる濡れた音と、繋ぎ合うオクトの唇とディセの唇の隙間から漏れる吐息と声が混ざり合う。
オクトが命令をくれたことがディセはうれしくて、命令をくれた唇に、かじりついてしまった。
「嫌なんだよ!!」
ひどい言葉で拒絶された時には、心臓が止まってしまいそうだった。でも、今、オクトに受け入れてもらえた安心感に、ディセは心も、体も満たされていた。
「支配」は、自分を奪われることでも、自分を差し出すことでも、自分を失くすことでもない。Subの心と体が全部、Domに満たされることだった。
ディセは、オクトに聞いた。
「オクトも、気持ちいい?」
溶ろけた舌は回らない。
「うん。気持ちいい」
ちゃんとオクトには伝わった。オクトは自分の体の上のディセを抱き締める。
「暴力」じゃなく、この両腕の中に包み込んで、ディセを支配しているという実感に、オクトは満足していた。
突然、真っ白な光に照らされて、オクトとディセは見上げた。中空から幾筋も隙間なく白い光が降り注ぐ。
よろよろと、お互い支え合いながら、オクトとディセは立ち上がり、花火を見上げる。
降り注ぐ白い光は、やがて一筋、一筋と消えてゆき、暗くなる。
指と指を絡めて、二人は手をつないでいた。
王都の空を覆い尽くして、最後の花火が開く。赤・橙・黄・緑・青・藍・紫、次々に色を変えながら、幾重にも花弁を重ねる。
「俺、ディセのDomになりたい」
最後の花火が闇に消えると、オクトはディセの横顔に言った。
今さらディセは、オクトが「嫌なんだよ!!」と拒絶したのに、命令させて、キスをして、押し倒して、深い長いキスをしてしまった自分が恥ずかしくなった。
「少し、考える」
横顔を見せたまま、それしか言えなかった。
「Look」
Domの命令に、Subは逆らえず、オクトをディセは見つめる。
「こんな時に命令なんて、ずるい…」
「『何でもいいから、命令して』って言っただろ?ディセ」
オクトがディセの唇に唇を押し当てる。少し唇から外れている不器用なキスに、ディセは笑ってしまった。
オクトが顔を上げると、ディセは肩にもたれかかり、浅い呼吸を繰り返している。短い銀髪を撫で、ディセの耳にささやく。
「Come」
命令をくれたオクトの唇に、唇をディセは重ねた。びっくりしすぎてオクトは顔を退き、がこっ!と、バルコニーの柵に後頭部を、思いっきりぶつけた。
「痛!――ディセ、『おいで』って、いきなし来すぎだろっ。んぐゅっ」
オクトはディセに両肩を掴まれ、バルコニーの柵に押し当てられて、唇を押し当てられ、受け止めきれずに、ずるずる、横倒しになる。
「Come」って命令で、抱き締め合おうと思っただけなのにっ!!
ディセはオクトの体に体を重ね、キスを続ける。オクトは何をどうしたらいいのかわからず、閉じていた口を
「ふ、はっ、」
息が苦しくして、開くと、
「んぐ、ぁ、」
ディセの熱い舌が入って来る。
「Come」って、口の中まで来ちゃうのかよっ?!
「ん、は、…ぅ、っ、」
「ぁふ、ぅ、ん、ぅ、」
ぬちゅぬちゅ、舌と舌が絡まる濡れた音と、繋ぎ合うオクトの唇とディセの唇の隙間から漏れる吐息と声が混ざり合う。
オクトが命令をくれたことがディセはうれしくて、命令をくれた唇に、かじりついてしまった。
「嫌なんだよ!!」
ひどい言葉で拒絶された時には、心臓が止まってしまいそうだった。でも、今、オクトに受け入れてもらえた安心感に、ディセは心も、体も満たされていた。
「支配」は、自分を奪われることでも、自分を差し出すことでも、自分を失くすことでもない。Subの心と体が全部、Domに満たされることだった。
ディセは、オクトに聞いた。
「オクトも、気持ちいい?」
溶ろけた舌は回らない。
「うん。気持ちいい」
ちゃんとオクトには伝わった。オクトは自分の体の上のディセを抱き締める。
「暴力」じゃなく、この両腕の中に包み込んで、ディセを支配しているという実感に、オクトは満足していた。
突然、真っ白な光に照らされて、オクトとディセは見上げた。中空から幾筋も隙間なく白い光が降り注ぐ。
よろよろと、お互い支え合いながら、オクトとディセは立ち上がり、花火を見上げる。
降り注ぐ白い光は、やがて一筋、一筋と消えてゆき、暗くなる。
指と指を絡めて、二人は手をつないでいた。
王都の空を覆い尽くして、最後の花火が開く。赤・橙・黄・緑・青・藍・紫、次々に色を変えながら、幾重にも花弁を重ねる。
「俺、ディセのDomになりたい」
最後の花火が闇に消えると、オクトはディセの横顔に言った。
今さらディセは、オクトが「嫌なんだよ!!」と拒絶したのに、命令させて、キスをして、押し倒して、深い長いキスをしてしまった自分が恥ずかしくなった。
「少し、考える」
横顔を見せたまま、それしか言えなかった。
「Look」
Domの命令に、Subは逆らえず、オクトをディセは見つめる。
「こんな時に命令なんて、ずるい…」
「『何でもいいから、命令して』って言っただろ?ディセ」
オクトがディセの唇に唇を押し当てる。少し唇から外れている不器用なキスに、ディセは笑ってしまった。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】試練の塔最上階で待ち構えるの飽きたので下階に降りたら騎士見習いに惚れちゃいました
むらびっと
BL
塔のラスボスであるイミルは毎日自堕落な生活を送ることに飽き飽きしていた。暇つぶしに下階に降りてみるとそこには騎士見習いがいた。騎士見習いのナーシンに取り入るために奮闘するバトルコメディ。
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
illustration by meadow(@into_ml79)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる